第7話『誕生日の夜は甘い夜』
お風呂から出た俺達は、リビングにいる真衣さんにお風呂が空いたことを伝えて、愛実の部屋に戻った。
海老名さんがプレゼントしてくれた入浴剤がとても良かったので、部屋に戻ってすぐに、愛実と俺はその旨のメッセージを送った。すると、
『良かったわ。あたしも気に入っているから、2人がそう言ってくれて嬉しい』
と、海老名さんがすぐに返信してくれた。
その後はドライヤーで髪を乾かしたり、一緒にあおい直伝のマッサージをしたり、愛実はスキンケアもしたりした。愛実と一緒にこのマッサージをやるのは2回目だけど、結構しっかりとした内容だと改めて思う。
愛実は毎日入浴後にこれらのことをちゃんとやっているから、肌や体、髪をとても綺麗に保てているのだと思った。
「よし。これでスキンケアも終わり」
「お疲れ様。……これから何をしようか?」
「一つ、リョウ君にしてほしいことがあるんだけど……いい?」
「もちろんさ」
「ありがとう。肩のマッサージをしてほしくて。ストレッチをしているときに、いつもよりもちょっと痛みを強く感じて。違和感もあって。だから、リョウ君にマッサージしてほしいなって」
「了解だ。じゃあ、マッサージをするよ」
「ありがとう!」
愛実は可愛い笑顔でお礼を言った。
俺はクッションに座っている愛実の後ろに膝立ちをして、両手を肩の上に乗せる。寝間着越しだけど。湯船に長く浸かっていたし、ストレッチを一緒にやったばかりなのもあり、愛実の温もりがはっきりと感じられる。
「じゃあ、始めるぞ」
「お願いしますっ」
俺はいつもの力加減で愛実の肩をマッサージし始める。
これまでにたくさんマッサージしてきたのもあり、愛実の肩にちょっと凝りがあるのがすぐに分かった。
「普段頼んでくるときほどじゃないけど、凝りがあるな。ストレッチ中に痛みとか違和感があったのも納得だ」
「やっぱり凝っていたんだね」
「ああ。週末だし、今日はパーティーの準備や後片付けをしたからその疲れが肩に溜まったのかもしれないな。準備では料理を特に頑張っていたし」
「そうかもしれないね。……お風呂が凄く気持ち良かった理由の一つは肩凝りだったのかも」
「ははっ、そうかもな。俺も……片付けをしてちょっと疲れがあったから、お湯の温もりが体に沁みたし」
「そうだったんだね」
ふふっ、と愛実は顔をこちらに向きながら笑った。可愛いな。
「これまでにリョウ君からマッサージをたくさんしてもらったけど、今日が一番気持ちいいかも。誕生日だし、リョウ君と恋人だし、今はリョウ君とお泊まり中だからかな」
「そうかもしれないな。ただ、今日もマッサージで愛実を気持ち良くさせることができて嬉しいよ」
「うんっ。来年以降も、誕生日にはリョウ君にマッサージしてもらおうかな?」
「いいぞ。何歳になっても愛実の肩をマッサージするよ。そのためにも長生きしないとな」
「ふふっ、リョウ君ったら。まだ17歳なのに長生きって。言っていることがおじいちゃんみたい」
「ははっ、確かに」
考えてみると、長生きって言葉を言うのは、父さんや母さんの実家に帰省したときなどに祖父母に対して言うくらいだし。自分自身に長生きって言葉を言うと、気持ち的に老けた感じがする。
「……じいちゃんばあちゃんになっても、愛実と一緒にいたいからな」
「リョウ君……」
愛実はそう言うと、体全体を俺の方に振り向いてくる。とっても嬉しそうな笑顔で俺を見つめてきて。
「嬉しい。私も同じ気持ちだよ」
甘い声色でそう言い、愛実は俺にキスしてきた。じいちゃんばあちゃんになっても一緒にいようっていうねっていう約束のキスかな。
数秒ほどして、愛実は唇を離すとニコッと笑いかけて、再び前を向いた。
それからは、今日のパーティーのことを中心に話しをしながら、愛実の肩のマッサージをしていった。
「さあ、愛実。マッサージした感じでは凝りが取れたと思うけど……どうかな」
「どれどれ……」
俺が両手を離すと、愛実はゆっくりと肩を回していく。さあ、どうかな。
「うんっ。スッキリしたよ」
愛実はゆっくりとこちらに振り返る。スッキリしたのもあってか、愛実の顔にはいつもの可愛い笑みが浮かんでいて。
「ありがとう、リョウ君」
「いえいえ」
愛実の肩をスッキリさせることができて良かった。
「マッサージが終わったし……次は何をしようか。愛実の誕生日だから、愛実のしたいことをしたいな」
「ありがとう。……リョウ君としたいこと、あるんだ」
「おっ、なんだ?」
俺がそう問いかけると、愛実は頬を中心に顔を赤く染め、
「リョウ君と……えっちしたいです」
俺を見つめながらそう言ってきた。えっちしたい、という言葉にドキッとさせられ、体が段々と熱くなっていく。顔も熱いから、愛実のように顔が赤くなっているんだろうな。
「お泊まり中にえっちしたいって思ってて。ただ、リョウ君と一緒にお風呂に入って、マッサージしてもらったら、えっちしたい気持ちが膨らんできて。どうかな?」
えっちしたい理由を話したからか、愛実の顔の赤みが強くなっていって。それが可愛くて、ドキドキが強くなっていく。
これまで、付き合い始めてからお泊まりをしたときは、必ず夜に肌を重ねている。そのとき、愛実はとても幸せそうで。だから、今回のお泊まりも愛実は肌を重ねたいと考えたのだろう。もしかしたら、先週末にお泊まりを誘ったときから考えていたかもしれない。
「いいぞ。えっちしよう、愛実。俺も……お泊まり中にしたいと思っていたから」
「ありがとう、リョウ君!」
愛実は赤くなった顔に嬉しそうな笑みを浮かべる。それもまた可愛くて。
「今夜もいっぱいえっちしようね。17歳になった私を味わってください」
「……ああ、分かった」
そう言い、俺は愛実をそっと抱きしめて、愛実にキスをした。
それからは、主に愛実のベッドの中で、愛実と肌を重ねた。
これまでに何回か愛実と肌を重ねてきたけど、今日の愛実もとても素敵で。ただ、17歳になったのもあって、今まで以上に大人っぽさや艶っぽさを感じられて。入浴剤のおかげもあってか、肌もいつも以上にスベスベで、ミルクやハーブの香りも香ってきて。それらのことに興奮させられる。
愛実も時にはリードしたり、積極的に動いたりすることもあって。普段は大人しいから、このギャップがたまらない。
肌を重ねている間、お互いに「好き」だとか「気持ちいい」などと言った言葉をたくさん言って、唇を中心にたくさんキスしていった。
「今夜も気持ち良かったね」
「ああ。凄く気持ち良かった。17歳になった愛実は、今まで以上に大人っぽくて良かったよ」
「ありがとう。嬉しいっ」
たくさん肌を重ねた後、俺と愛実は一糸纏わぬ姿でベッドに横になっている。愛実が俺の右腕を抱きしめているので、愛実の体の柔らかさや強い温もりを感じられて気持ちがいい。
「もう今は0時を過ぎているけど、17歳の誕生日にリョウ君とえっちできて幸せだよ。昔からずっと好きだから、リョウ君とイチャイチャする誕生日を過ごせたらなって想像することもあって」
「そうだったのか。愛実が幸せだと思える誕生日にできて嬉しいよ」
「うんっ。ありがとう」
愛実はニッコリと笑いながらお礼を言ってくれる。そのことがとても嬉しくて、胸がとても温かくなる。
「えっちしたのも、リョウ君からもらった誕生日プレゼントだと思ってるよ。むしろ、リョウ君が誕生日プレゼントにも思えるくらいだよ。付き合い始めたのは3週間くらい前だけど」
「ははっ、そっか」
10年前、俺と出会った直後の頃から、愛実はずっと俺に好意を抱き続けて。今年の夏休みに俺に告白して、3週間ほど前に付き合い始めた。そして、付き合い始めてから初めての誕生日を迎えられたから、俺が誕生日プレゼントだと言う気持ちも分かる。
あとは……俺の誕生日のとき、あおいが「私をプレゼントしたいです」と言ったのをきっかけで俺に告白したことも、愛実は俺がプレゼントだと思った理由の一つかもしれない。
「これからもずっと、愛実のものでいさせてくれよ」
「もちろんだよ。ただし、私をずっとリョウ君のものでいさせてね」
「もちろんさ。ありがとう、愛実」
「こちらこそありがとう」
そうお礼を伝え合うと、お互いに顔をゆっくりと近づけて……キスをする。
肌を重ねる中でたくさんキスしてきたけど、愛実とのキスは何度してもいいなって思える。お互いにずっと自分は相手のものだと伝えたのもあり、キスしていると愛実が愛おしい気持ちが膨らんでいって。
少しして、愛実の方から唇を離す。すると、目の前には幸せそうな笑顔で俺を見つめる愛実がいて。
「今日はお家デートして、パーティーして、お泊まりして。今年の誕生日は今までで一番楽しくて幸せな誕生日になりました。リョウ君、ありがとう」
「いえいえ。俺も今年の愛実の誕生日は一番楽しく過ごせたよ」
「良かった。来年以降もいいと思える誕生日をリョウ君と一緒に過ごしたいな。もちろん、リョウ君の誕生日も」
「そうだな。10ヶ月後だけど、18歳の誕生日が楽しみになってきた」
「ふふっ。素敵な誕生日にするからね」
「ありがとう」
俺がそう言うと、愛実は可愛い笑顔を向けてくれる。
俺の誕生日は7月9日だから、18歳の誕生日を迎える頃は……受験勉強を頑張っているんだろうな。ただ、誕生日は気分転換も兼ねて、愛実と一緒にいる時間や誕生日パーティーを楽しむことだろう。そうなるように、愛実のことを大切にして交際していかないと。
愛実は「ふああっ」と可愛らしいあくびをする。
「いっぱい運動をしたから眠くなってきたよ」
「そうか。今日はパーティーの準備や後片付けもしたからな。愛実とベッドに入っているのも気持ちいいし、俺も眠くなってきた」
「じゃあ、今日はそろそろ寝ようか」
「ああ。おやすみ、愛実」
「おやすみなさい、リョウ君」
愛実は俺におやすみのキスをしてきた。
数秒ほどして唇を離すと、愛実はベッドライトの明かりを消す。俺の右腕を抱きしめる力を強くし、頭を俺の右肩に乗せてきて。ゆっくりと目を瞑った。あくびをするほどなので、さっそく眠り始めたのかもしれない。
俺はゆっくりと目を瞑る。
程良く疲れがあったり、愛実の温もりや匂いや柔らかさを感じられたり、ベッドの中の温かさが心地良かったりするのもあって、すぐに眠りに落ちた。
盛りだくさんだった愛実の17歳の誕生日は、静かに幕を下ろした。