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10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ  作者: 桜庭かなめ
最終章

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第22話『2人きりでは初めて』

 7月29日、金曜日。

 今日も朝から晴れており、最高気温は34度と予想されている。梅雨が明けてからは、夕暮れの時間帯に少し雨が降った日が1日あったくらいで、基本的には晴天が続いている。梅雨の間に溜めていたサンパワーをこの時期に一気に放出しているかのようだ。


「今日もかなり暑いですね」

「ああ。まさに夏本番って感じの天気だよな」

「ですねぇ。こんなに暑い中、屋外でバイトをする愛実ちゃんは大変だと思います」

「そうだな。テントの中だから、日陰にはいられるだろうけど……それでも大変だろうな」


 午後1時半過ぎ。

 俺はあおいと一緒に調津駅に向かって歩いている。これから、愛実がバイトしているコンサートの物販へ足を運ぶためだ。

 今日から3日間、人気女性アイドルグループ・ニジイロキラリのコンサートが、都心にある国立武道館で開催される。会場のすぐ側ではコンサートグッズの販売ブースが設けられる。愛実はそのブースで販売スタッフのバイトをするのだ。夏休み前に部活の友達と一緒に応募し、3日全て採用された。

 あおいが調津に戻ってきてから、愛実がバイトするのは今回が初めて。それもあって、一昨日、3人で夏休みの課題をする中で愛実のバイトを知ったときにあおいは、


『愛実ちゃんがバイトをしているところを見てみたいです! できれば接客もされたいです!』


 と言ったのだ。なので、3日間のうち、あおいも俺も予定が空いている今日にコンサートグッズの物販に行くことにしたのだ。俺達はコンサートチケットを持っていないけど、物販でのグッズ購入はチケットがなくても大丈夫である。

 ちなみに、愛実はあおいと俺が物販会場に行くことを知っている。俺達が来るのを楽しみにして、今日のバイトを頑張るとのこと。


「私達が行って、愛実ちゃんに少しでも元気になってもらえると嬉しいですね。私も特に初バイトのとき、愛実ちゃんと涼我君と樹理先生が来て元気をもらえましたし」

「きっと元気になるさ。これまで、俺が来て元気もらったって言っていたこともあったし」

「そうですかっ」


 去年の夏休みも、今日のような暑い日に愛実は屋外でコンサート物販のバイトをしていた。そこに俺が行くと、愛実はとても嬉しそうな笑顔になっていたのを思い出す。

 俺もサリーズでバイトしていて、愛実やあおい、道本、佐藤先生など親しい人達がお店に来てくれると元気になる。それはバイトを始めて1年以上経った今でも変わらない。

 それにしても……駅に向かって歩いているから、家を出発した直後よりも暑いな。ただ、それでもあおいはご機嫌な様子。明るい笑みを浮かべていて可愛い。


「どうしましたか? 私の顔をじっと見て」

「炎天下の中を歩いていても、あおいは上機嫌だと思って」

「これから愛実ちゃんのいるところへ行きますからね! それに、涼我君と2人きりでお出かけですからデートでもありますし」

「……確かに、デートとも言えるか」

「デートですっ。あと、今日は夏休みの課題をしたり、アニメを観たりと午前中から涼我君と一緒にいますから」


 あおいは俺のことを見ながらニッコリと笑う。手を繋いでいるのもあって、あおいがとても可愛らしく見える。

 今日は互いに予定が空いていたので、午前中はあおいの家で一緒に古典の夏休みの課題をやったり、昨日の深夜に録画したアニメを観たりとお家デートをしたのだ。古典の課題もある程度終わらせられたし、アニメも結構面白かったからあおいはここまで上機嫌なのだろう。


「あの帽子を被った黒髪の子、可愛いな」

「でも、金髪の男と手を繋いでいるぜ。彼氏か?」

「そうじゃねえの? 羨ましいぜ」


 近くにいる男性達のそんな話し声が聞こえてきた。黒髪女子に金髪男子という特徴からして、俺達のことを話しているのだろう。それに、今のあおいは青いキャップを被っているし。あおいのご機嫌な笑顔や、ジーンズパンツにノースリーブのVネックシャツというシンプルな服装に惹かれたのかも。


「ふふっ、涼我君が彼氏ですかぁ。そう見えちゃいますかぁ……」


 男性達に見られたことに不快感を示すどころか、むしろ嬉しそうだ。その証拠にニヤニヤしているし。好きな人が彼氏だと思われたら嬉しくなるのも当然か。

 上機嫌なあおいと話していたので、あっという間に調津駅に到着した。

 今は夏休みなのもあってか、金曜日の昼過ぎの今でも、改札周辺には俺達のような学生の姿がちらほらと見られる。待ち合わせしていたのか、互いに近づいて喜ぶグループの姿もあって。

 俺達は改札を通って、都心方面へ行く列車が到着するホームへと向かう。

 ホームにも、学生らしき人を中心に人の姿がある。

 少しでも座れる確率を上げるために、先頭車両に乗れる場所まで向かった。4月にみんなで遊園地に行ったときは、この作戦のおかげで、あおいと愛実と海老名さんは席に座ることができた。今回も座れるといいな。


「国立武道館の最寄り駅は……確か、八段下(はちだんした)駅でしたっけ」

「そうだよ。地下鉄の駅だけど、清王線と直通しているんだ。だから、次に来る地下鉄直通の快速電車で行くよ」

「分かりました。乗り換えなしで行けるのはいいですね」

「そうだな。駅によっては乗り換えるのに迷いそうだし。それに、高校も徒歩通学だから、電車に乗ることはあんまりないからなぁ。一度乗れば、目的の駅まで行けるのは個人的に有り難い」

「ふふっ、そうですか。涼我君の言うこと分かりますね。高校は電車通学でしたけど、イベントに行くために普段は乗らない路線に乗ったり、知らない駅で乗り換えたりするのはちょっと不安になりますから。あと、博多駅とか京都駅とか、とても大きな駅で乗り換えをするときは結構歩いて大変でしたし」

「そうか。中学の修学旅行で、新幹線で京都駅まで行ったけど、あそこはデカかったなぁ」


 迷子になったり、はぐれてしまったりした友達がいたし。


「本当に立派な駅ですよね。そういえば、京都は修学旅行の定番スポットですから、京都駅の方へ遊びに行くと、知らない学校の制服を着た学生をたびたび見ました」

「そうだったんだ」


 調津に住んでいる俺よりも、かなり多くの学校数の制服を生で見ているんだろうな。

 中学の修学旅行では新幹線に乗るために京都駅に行ったし、自由行動のときには愛実や海老名さん、道本達と一緒に京都駅の近くにある寺院や和菓子屋に行ったな。もしかしたら、そのときはあおいがすぐ近くにいたのかもしれない。

 あおいと電車絡みの話をしていると、地下鉄直通の快速列車が到着した。

 扉が開くと、何人もののお客さんが降りていく。調津駅の周りは大きなショッピングセンターや映画館などがあるし、神奈川県の方へ向かう路線にも乗り換えができるからな。

 お客さんが降車し終わり、あおいと俺は乗車する。車内はエアコンが掛かっており、涼しくて快適な空気が全身を包み込む。

 車内を見ると……先頭車両だったり、降車するお客さんが何人もいたりするからか、空いている座席はいくつもあった。俺達は一番近い3席連続で空いている席に隣同士に座った。


「座れて良かったです」

「そうだな。暑い中歩いたから、座れて嬉しいよ」

「快適ですよね。先頭車両に乗って正解でしたね」

「ああ。作戦成功だな」

「ですねっ」


 と、あおいはニコッと笑ってそう言った。

 それから程なくして、俺達の乗る電車は調津駅を発車する。

 俺達の座っている席からは、扉の上にある液晶ディスプレイが見える。そのディスプレイには次に停車する駅やこの先停車する駅、今から停車駅まで何分かかるかが表示されている。それによると、


「調津から八段下までは35分で到着するってさ」

「そうですか。涼しい中座っていますから、ちょうどいい時間ですね」

「快適だもんなぁ」

「それに……涼我君と2人きりで電車に乗るのは初めてですから。そのくらいの時間乗っている方がいいなって」


 あおいは依然として笑顔を浮かべているけど、頬を中心に赤みが帯びるように。

 あおいと2人きりで電車に乗るのはこれが初めて……なのか? これまでのことを思い返してみると、


「……確かに、昔は電車に乗るときは親が一緒だったし、再会してからも愛実や海老名さん達と一緒に遊園地へ行ったときくらいか」

「ええ。ですから、涼我君と一緒に電車に乗るのが楽しみで」


 えへへっ、とあおいは声に出して笑う。頬が赤いのもあってかなり可愛らしく思える。

 もしかしたら、俺と2人きりで初めて電車に乗ることができるのも、駅へ向かっていたときに上機嫌だった理由の一つなのかもしれない。

 あおいは左手を俺の右手にそっと重ねて、俺に軽く寄り掛かってくる。


「駅に着くまで、こうしていてもいいですか?」


 普段よりも甘い声で、あおいはそう問いかけてくる。あおいの温もりや柔らかさ、甘い匂いも感じるからドキッとして。


「いいよ」

「ありがとうございますっ」


 あおいは嬉しそうな笑顔でお礼を言った。

 それからは、愛実のバイトについてや午前中にあおいの家で観たアニメのことなどを話しながら、あおいとの電車の中の時間を過ごしていく。その間、あおいは俺から離れることはなくて。だから、常にあおいから優しい温もりを感じて。ただ、車内が涼しいのもあり、あおいの温もりが心地良かった。

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