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10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ  作者: 桜庭かなめ
最終章

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第20話『いつもの時間がお家デートに-後編-』

「よしっ、私もこれで化学の課題終わった!」

「お疲れ様、愛実」


 何度か休憩したり、愛実の家で愛実と真衣(まい)さんに作ってもらった昼食を食べたりして、午後3時半過ぎに愛実も化学の課題を終わらせることができた。

 ちなみに、俺は愛実の30分ほど前に終わって、読みかけのラノベを読みながら愛実の分からないところを教えていた。


「リョウ君が教えてくれたおかげで、今日中に化学の課題を終わらせられました。本当にありがとう」

「いえいえ。俺もいい勉強になったよ。こちらこそありがとう」

「いえいえっ」


 愛実はニッコリと笑いながらそう言う。苦手意識のある化学の課題を片付けられたからか、愛実は結構嬉しそうだ。

 愛実と一緒に一つの科目の課題に集中し、その日のうちに終わらせる。それは去年までと変わらないことだ。ただ、愛実に告白されて、この時間がお家デートだと言われたのもあり、いつもの時間が特別に感じられた。


「ねえ、リョウ君。膝枕してあげようか?」

「へっ?」


 予想もしていないことを言われたので、間の抜けた声が出てしまった。だからか、愛実は「ふふっ」と声に出して笑う。


「化学の課題を全部やったし、何度も私が分からない問題の解説をしてくれたから疲れているんじゃないかなと思って。教えてくれたお礼といいますか」

「……まあ、課題をやったから疲れがないと言ったら嘘になるかな」

「だよね。あるよね。あとは……昨日、お昼ご飯の後にあおいちゃんがリョウ君に膝枕しているのを見て、私も膝枕したいなって」

「なるほどな」


 もしかしたら、それが膝枕をしたい一番の理由かもしれない。

 膝枕のことを話したからか、愛実の頬がほんのりと赤くなっていて。それが可愛くて。


「分かった。じゃあ、お願いしようかな」

「うんっ!」


 愛実はとても嬉しそうに返事した。そんな愛実も可愛らしい。

 愛実からの提案で、ベッドの上で膝枕してもらうことになった。床の上よりも気持ち良く感じられていいかもしれない。

 愛実は俺のベッドに座って、太もものあたりをポンポンと優しく叩く。


「リョウ君、どうぞ」

「失礼します」


 ベッドの上に乗り、頭を愛実の太ももの上に乗せて仰向けの状態になる。

 ワンピース越しだけど、愛実の太ももの柔らかさと優しい温もりが後頭部に伝わって気持ちがいい。ベッドの上だから顔より下の部分も気持ち良くて。呼吸をする度に愛実の甘い匂いが香ってくるのでかなり快適だ。

 見上げると、ワンピースに包まれた愛実の胸がかなりの存在感を示していて。これがFカップの胸か。俺の顔に影ができるほどだ。

 愛実は少し前屈みになって、俺のことを見てくる。


「どうかな? 私の膝枕は」

「……凄く気持ちいいです」

「そう言ってもらえて良かった」


 愛実はそう言うと、持ち前の優しい笑顔を見せてくれる。その笑顔もあり、ドキッとする気持ちもあるけど、癒しや安らぎの気持ちの方が強い。


「愛実はどうだ? 脚に俺の頭を乗せて。重かったり、痛かったりしないか?」

「全然平気。リョウ君の温もりや重みが感じられて心地いいよ」


 依然として優しい笑顔のまま愛実はそう言ってくれる。だから、気遣いではなく、本心から言ってくれているのだと分かって。

 それから程なくして、俺の脳天あたりに優しい感触と温もりが感じられるように。きっと、愛実が俺の頭を優しく撫でてくれているのだろう。凄く気持ちいい。


「リョウ君に膝枕できて嬉しい。幸せだよ」

「そうか。……膝枕が気持ちいいし、ベッドの上だからちょっと眠くなってきた。ごめん」

「いいんだよ。むしろ、眠くなるほどに気持ち良くなってくれて嬉しいな。リョウ君さえ良ければ寝ていいんだよ?」

「じゃあ……ちょっと昼寝しようかな。15分から30分くらい」

「分かった。じゃあ、そこにあるスマホを取ってくれる?」

「ああ」


 俺は腕を伸ばして、ローテーブルに置かれている愛実のスマホを掴む。それを愛実に渡した。スマホさえあれば、俺が寝ている間も退屈せずに過ごせそうか。


「じゃあ、昼寝するよ」

「うんっ、おやすみ、リョウ君」

「おやすみ」


 愛実の優しい笑顔に癒やされながら、俺はゆっくりと目を瞑っていく。

 俺が目を瞑ると、定期的に胸のあたりに何かが当たる感覚に。きっと、愛実がそのあたりを優しく叩いてくれているだろう。

 化学の課題をした疲れがあるからだろうか。それとも、愛実の柔らかさや優しい温もり、甘い匂いが心地いいからだろうか。段々と眠気に襲われてくる。ふわふわとした感覚に包まれながら眠りに落ちていった。






「んっ……」


 とても気持ちのいい気分の中で、ゆっくり目を覚ますと……寝る前と比べて視界が真っ暗に感じる。あと、顔が温かくて、愛実の甘い匂いも濃く香ってくる。

 あと、寝る前は後頭部に愛実の太ももの柔らかさを感じていたけど、今は側頭部や頬に柔らかさを感じる。脇腹や脚にベッドの柔らかさを感じるし。……まさか。

 顔を後ろに少し動かすと……愛実の着ているワンピースが見えた。やっぱり、俺は寝ている間に寝返りを打って、愛実のお腹に顔を埋めてしまったらしい。ワンピースに汚れが付いていないようで一安心。


「あっ、起きたみたいだね」


 愛実の声が聞こえたので仰向けの状態になると、優しい笑顔で見下ろす愛実の姿があった。


「おはよう、リョウ君」

「おはよう、愛実。何分くらい寝てた?」

「30分弱だね。どう? 少しは眠気が取れた?」

「おかげさまで。よく眠れたから、眠気や課題の疲れは取れたよ。ただ……寝ている間に愛実の方に寝返りを打っていたみたいだな。お腹に顔を埋めていたみたいだし。もし嫌だったならごめん」

「ううん、いいんだよ。寝返りを打って、私のお腹に顔を埋めてきたときはちょっとビックリしたけど。でも、結構可愛くて。お腹が温かくなって、リョウ君の寝息がかかるのが気持ち良くて。むしろ、膝枕したご褒美をもらえた気分だよ」


 と、愛実はいつもの可愛らしい笑顔でそう言ってくれる。ただ、その笑顔は頬を中心に赤らんでいて。服越しとはいえ、お腹に顔を埋められていたのでちょっと恥ずかしい気持ちがあったのかもしれない。


「それに、リョウ君の寝顔を見たり、スマホで撮ったりしたから、リョウ君が寝ている間も楽しく過ごせたよ」

「それなら良かった。愛実の膝枕のおかげでよく眠れたよ。あとはお腹効果もあるかな?」

「寝始めてから10分で寝返りを打ったからね」

「そうだったのか。じゃあ、お腹効果も結構ありそうだな」

「ふふっ。リョウ君がよく眠れるなら、私はいつでもリョウ君に膝枕するからね。だ、抱き枕になってもいいからね!」


 顔を赤くしながら愛実はそう言ってくれる。

 抱き枕か。温かくて、柔らかくて、いい匂いがするから抱き心地が良さそうだ。俺は熟睡できるかもしれないけど、愛実はどうなっちゃうのか。今の様子からして、愛実はドギマギして体がもたないかもしれないな。


「と、とりあえず……お気持ちだけ受け取っておくよ」

「う、うんっ」


 愛実は笑顔で頷いてくれた。今の返答で良かったようだ。

 ゆっくりと上半身を起こすと、寝る前よりも体が軽くなっている。愛実のおかげで、いい昼寝ができたのだと実感する。


「さてと。化学の課題は終わったし……これから何をしようか。愛実、何かしたいことはある?」

「そうだね……リョウ君の部屋にいるし、アニメを観たいかな。今日は課題の休憩中にアニメを観なかったから」

「そうだな。じゃあ、アニメを観るか」

「うんっ」


 その後、俺達は昨日の夜に録画したラブコメアニメの最新話を一緒に観ることに。その際、愛実とはクッションに隣同士に座って。ここまではこれまで通りなのだが、


「ま、愛実?」


 俺に体を寄り添わせて、右肩に頭をそっと乗せてきたのだ。こういう体勢でアニメを観るのは初めてだ。


「今まで以上にリョウ君に寄り添って観たいから。それに、あおいちゃんはリョウ君に告白してから、こういう体勢でアニメを観ているときもあるし。昨日の海水浴の行き帰りでの車でも、リョウ君に寄り添っていたからいいなぁ……って」

「なるほど。愛実がこの体勢がいいなら、俺はかまわないよ」

「ありがとう」


 えへへっ、と愛実は俺のことを見ながら、声に出して笑う。それがとても可愛いし、至近距離なのもあって結構キュンとなって。

 それから2時間以上、愛実と一緒にアニメを観続けた。互いに好きなアニメを観ているから、愛実とキャラやストーリーのことを語り合いながら。それがとても楽しくて。アニメを観ている間、愛実はずっと俺に寄り添い続けていた。

 愛実は温厚で控え目な性格だけど、俺に好きだと告白したことがきっかけになり、積極的な言動になり始めている。そんな愛実も魅力的だと分かる今日のお家デートだった。




 また、夜になって海老名さんから、


『愛実からも告白されたそうね。愛実のこともよく考えてくれると嬉しいわ』


 というメッセージが届いた。昨日の夜、愛実とあおいと海老名さんのグループトークで話したときに、愛実から話されたらしい。それを受けて、愛実の中学時代からの親友として、俺に一言言いたかったのだろう。

 あおいが告白された直後も、海老名さんは今のようなことを俺に言っていたな。とても友達想いの強い子だと思いつつ『分かった』と返信を送るのであった。

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