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星に願いを。  作者: 十六夜 無月
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もう、恋なんてしない。するもんか。

ムツキです。読み切りの2話完結なのですが、どうしても書きたくて、浮気しました。笑

初の恋愛モノと言うことで、ちゃんと伝えられているか心配なのですか、最後まで読んでいただければ幸いです。それでは、お楽しみください。

いつもと変わらない仕事場。

いつもと変わらない仲間。

いつもと変わらないルーチンに。

いつもと変わらない、日常。


でも、今だけは違ったんだ。


目の前には、満点の星空が輝いていた。

その刹那の輝きは、まるで人の一生のように思えた。


いつもと違う、非日常が。





ここにはあった。








その日はやけに忙しく、多忙を極めていた。

いつもより多い仕事量に、正直うんざりしていた。

入社して、もうそこそこ経つ俺は、社会という荒波に揉まれ、良い具合に擦れていた。


必然、精神的にストレスも溜まる。


大体そんなときは、仲間内で飲みに行って、騒いで。

気晴らしをして、荒んだ心のオアシスにして。

でも、なんか晴れなくて。

むしろ腫れぼったくなって。

主に胃とか。

瞼も。

心もかな。


飲んですっきりって訳には、どうやらいかないようだ。

性分なんだろう。

そんな毎日を過ごしていた。

そんな今日、突然通知を知らせる着信が鳴った。

忙しいときになんだよと、半ば面倒臭がる様にアプリを開くと、良く集まる仲間内からのメッセージだった。


「元気か?仕事忙しい?」


馬鹿。毎度言ってんだろうが。

今日も残業コースだわ。

内心でそう悪態をつきつつ。


「残業コースだよ。どうした?」


そう返すと、すぐに返信が来た。


「明後日の夜、星見に行こうぜ!」


はい?

お前の頭の中なんかに興味ないわ。

意味が解らず、思わず悪態と突っ込みが一緒に出てしまった。

とりあえず、聞き返してしまう。


「意味がわからん。」


「いいから!前からお前が気になってた人も呼んでるからさ!」


あいつ、なんて事してくれてんの!?

意味もなく焦る。

とりあえず、日時と待ち合わせ場所を聞いたけども。

明後日か...。

正直、気乗りはしなかった。

気になってた人。

多分、あのこだよな。

名前通りに、優しいこ。

背は大きくもなく小さくもなくて、長目の茶髪で。人が話すと、そのくりっとした目で、ちゃんと相手を見て聞いてくれる。

前に聞いたときは、彼氏がいるって聞いて。

玉砕する前から、玉砕してて。

見てくれも、良いわけじゃぁ無い俺は、あー、もう此のままかもなぁと、やさぐれて、そのままだったんだ。

それまでは、普通に話して、ご飯も食べたりしてた。

今となっては、それ以来連絡もしてない。彼氏がいるのに、邪魔だろと思って。



なんなんだよ。



今更。



どんな顔して会えば良いんだよ、馬鹿。阿呆。オタンコナス。

仕事のせいか、今日は悪態ばかりだな。さっさと片付けて、帰って推しの動画でもみよう。

今は癒されたい。


この時は、どうでも良くて、正直全然考えてなかった。


次の日の朝がくるまでは。





ピピピピピピ...


電子音の目覚ましでいつも通り起床した俺は、昨日帰りに買っておいたおにぎりを口に咥えつつ、スマホをいじっていた。

すると、ある人から通知が来ていたことに驚く。


「え?なんで?」


昨日考えてしまっていた、例のあのこ。

名前の通り優しいこ。

その人から、メッセージが届いていたのだ。


「久し振り...だね。聞いたよ。誘われたんでしょ?私もなんどけど、来るよね?」


気まずさ純粋に100%。

どう答えよう。


「行くよ。仕事終わりだけど、多分間に合うから。」


通知が来たのは、昨日の夜中。流石に朝の忙しいときに直ぐは返ってこないだろう。

そう思い、おにぎりの続きを食べ始める。すると、直ぐにメッセージを受信したお知らせが。


え?早くない?ピッチャー返しだよ??その早さ!


危うくおにぎりを落としかけ、しかし体勢を立て直した俺は、新着メッセージを見る。


「良かったぁ。明日、楽しみだね!」


あれだ。最近周りで流行ってんだな。頭お花畑ではなく、頭お星様だらけというやつが。

どうやら俺も流行り病にかかりそうだ。


良かったで、楽しみだねと来たもんだ。普通の男子なら堕ちてるとこだ。危ない危ない。

と言いつつ、そうだね。俺も楽しみにしてるよ。と返してしまう辺り、もう重症なのかもしれない。

既に悪態もどこにいこうか迷っているところだ。


それから、いつも通りに電車に揺られ、いつもの時間に出社した俺は、変わらず仕事に追われ、どうでも良い事で上司にどやされ、ならおたく様が代わりにやればよろしいのではないですか?と心の中で悪態をつき、あっという間にお昼になった。

朝、コンビニで買ったサンドイッチとコーヒーを片手に、スマホを弄くると、やはりメッセージが届いていた。

昨日のやつからだが。

何メッセージごときに一喜一憂してんの、俺。


「明日の事だけどさ。お前の好きだったこ、別れたんだって。それもあって、明日誘ったんだよ。なんか、元気付けたいなぁってさ。」


何?イイ人なの?お前。そんなんじゃなかっただろうがよ!

もう癖になっている悪態を着きつつ、返信する。


「良いことだと思うぞ。なんなら慰めてやれよ。」


どうやら、向こうも休み時間のようで、返信はすぐに帰ってきた。


「何言ってんだよ!お前がやらずに誰がやるんだよ!おバカチン!あー、当日ワタクシ共は途中ですすすっと居なくなる予定なんで。悪しからず!」


おい、ふざけんな!何セッティングしてんだよ!バカチン!

少しイラついた俺は、既読スルーを決めて、暫しサンドイッチに舌鼓を打つことにした。

しかし、程なくして、着信を告げるメロディが流れる。


「はい、マコト。」


「お前、マコトじゃねぇだろ!古いんだよ!なんで既読スルーな訳!?」


いつもの調子の良い声で騒ぎ立てる親友に、悪態をつく。


「あ?今俺はベストプレイスにて憩いの時間を満喫中なの。解る?」


「はいはい、んで、続きなんだけどさ。」


どうでも良いのね、俺の憩いの時間は。


「話した通りなんだわ。お前、仲凄く良かったしさ。だから、今だと思うんだよ。押しまくってみようぜ?な?」


微かに苛立ちを覚えた俺は、正直に話すことにした。


「あのさ、今更俺に何しろってんだよ。もう過ぎたことだろ。あの時で俺の想いは終わってんだよ。」


そう、もう終わってんだよ。そんな気持ちは。

言葉にはならなかった気持ちが、燻って、しかし出せずにいた。

こんなの、どうしようもないだろ。


しかし、俺の考えを聞いていた筈のこいつは、それでもと食い下がる。


「良いのかよ。それで。お前は満足なのかよ。満足じゃないから、そんな気持ちになってんじゃないのかよ。」


馬鹿。痛てぇよ。その言葉が。

心に刺さりまくってんだよ。さっきから。


「とりあえず、明日来いよ。皆待ってるからな。」


そういうと、唯一無二の親友からの電話は切れた。

もう話し相手の居ないスマホを眺めて、呟いてしまう。


「なんで、今更なんだよ。」


そこから、どうしたわけか仕事が捗らず、予定より大幅に残業してしまった俺は、へとへとになりながら退社した。もう11時を過ぎている。家につく頃には推しの配信始まってんじゃねぇかと、苛立ちを隠せなかった。一掃、今日は諦めるかと思っていた矢先、メッセージのお知らせが鳴る。

気になってスマホを弄ると、あの人からのメッセージだった。


「お疲れ様ぁ!あのさ、今ってダイジョブ?」


今は電車に乗ってるから、降りたタイミングで掛けても良いか、と 返信をする。

勿論!と返ってきた。

前の時のやり取りをつい思い出し、なんとも言えない気持ちに悶絶しかかる。

端から見たら気持ち悪いことこの上ないんだろうな。

そうこうしているうちに、電車は最寄り駅に到着。

改札を潜ると、直ぐ電話をかけた。


「あー、もしもし?」


「はい、マコトぉ」


ぷっ。

思わず吹き出してしまった。

正直、何を話せば良いのか解らず、なんと声を掛ければ良いのかすら戸惑っていた。が、そんなの杞憂だった。

いつの間にか、二人で電話越しに笑い合っていた。


「あはは、なにそれ。古。」


「だって、良く言ってたじゃん?私だって、古いと思ってるんだよ?」


内心ほっとした自分がいた。

良かった。変わってない。あの頃のままだ、と。

優しくて、ユーモアがあって。

こうして、とりとめの無い話をしている時間が堪らなく楽しくて。

ほっとする。


暫く話し込んでいると、話題は明日のことに。


「ねぇ、覚えてる?前にさ、話してくれたこと。」


忘れるわけがない。この流れでいうと、流れ星の話だ。気持ちを伝えようとしたときに話したことだ。


「流れ星の話?」


すると、彼女はうん、と小さく返し、こう続けた。


「あのね、私、願い事叶わなかったの。」


自然と、息を飲んでしまった。多分聞こえてたと思う。電話越しにゴクリとか、気持ち悪っ!

気を取り直して、続きを促した。


「願い事?」


「うん。別に、流れ星に願いをかけてたわけでもなかったんだけどね。そうなればいいなぁって。でも、かなわなかったんだぁ。だから、明日はね。」


一拍置いて、彼女は言った。


「ちゃんと、流れ星に願いを込めるの。叶えて!神様ぁーって!」


またも吹き出してしまった。


「ぷはっ。それ、神頼みになってるよ。」


えーっとか、ホントだー!とか、電話越しに聞こえた。

本当に、楽しい人だな。


「その願い、俺も一緒に込めるよ。明日。」


すると、嬉しそうに。


「うん!じゃぁ、一緒にお願いしよう?」


電話越しの声だが、彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。


そこで。

ああ、そうか。

気付いてしまった。

俺の気持ちに。

俺はまだ。



彼女が好きだったんだ、と。









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