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19 疑惑の襲撃②

 ジダンの拳がハリソンの顎に命中し、ハリソンはのけぞった。が、その直後。ハリソンの光の刃がジダンをとらえた。痛み。ジダンはハリソンの手で傷を受けたのだ。


「神よ、この私を導き給え。この者に天罰を与えたまえ」


 そう言って光の刃を手放す。


 ――誘われているな。今突っ込めば俺は負ける。


 あえて動かない。ハリソンは光に包まれ、彼の背から翼が生える。神々しい。だが、地下世界の銃インであるジダンには眩しすぎる。そして、次の瞬間ハリソンから金色の衝撃はが放たれた。

 ジダンは衝撃波を展開していなかったイデアで防いだ。


 ――やはりか! あの隙をつかなくてよかった!


 全身に伝わるのはビリビリとした感覚。防いでいなければやられていたのはジダンの方だ。


 衝撃波が収まったその時にジダンが動く。ここで決める。地下室に展開したイデアをすべて解除し、全身――特に拳にエネルギーを集める。


「私を殺すのですか――」


 ジダンが拳を叩き込む瞬間、ハリソンは言った。それが彼の命乞いかどうかは本人しかわからないだろう。だが、ジダンは各実印ハリソンの頭蓋を砕いた。


「哀れだな、聖職者。色々と気になることはあったが、それとこれとは話が別だ」


 倒れ逝くハリソンを前にしてジダンは言った。




 斧とメイスがぶつかり合う。破壊された壁の前で戦うのはヴェロニカとダフネ。2人はまず能力を発動させずに攻撃を繰り出した。とは言っても、ヴェロニカのイデアの(ビジョン)は確かに見えている。


 ――能力はわからず、相手も様子見か。この勝負、先に能力を知られた方が負けだったりする? もしかして私と似た能力?


 攻撃をはじくとき、ダフネの能力を考察する。とはいっても、発動したと思しき手ごたえをヴェロニカは感じていない。


「……そちらさんもまだ発動しないんだ。鬱陶しい」


 斧を振り上げるダフネ。イデアの形が見えずとも、先に能力を発動させたのは彼女だった。斧を振るった瞬間、砂ぼこりが舞い上がる。明らかにその動きだけによるものではない。振り下ろした瞬間、ヴェロニカは躱そうとした――が。

 動けない。脚に何かが絡みついたかのように重い。その正体は一目見ればわかった。砂鉄だ。砂鉄はしっかりと何かの形をつくり、ヴェロニカの脚を地面から拘束している。


「こうして斧で叩き割れば人ってだいたい死ぬし」


 移動できないヴェロニカに斧を振り下ろす。対するヴェロニカはメイスで受け止めた。ここでヴェロニカが能力を発動させる。


 ――ある意味初見殺しなんだよね、私の能力。正面からじゃなければ確実に殺せる。


 ヴェロニカの脚を拘束していた砂鉄の形が失われた。直後、ヴェロニカは斧を振り払い、メイスでダフネの胴体を狙う。するとダフネは攻撃を躱す。どうやら見切られたらしい。


「ああ……面倒臭い。だからさっさと片を付ける」


 と、ダフネ。能力を一度破られれば今度はあらゆる方向の砂鉄を集めるまで。莫大な量の砂鉄はダフネそっくりの形を成し。


()()()()()()()。私の手にかかればこんなゴミ、すぐに掃除できるから」


 2人のダフネがヴェロニカを挟む。対するヴェロニカは全身と得物を覆うようにしてイデアを再展開し。


「ゴミがすぐに掃除できるとか言ったよね。その言葉、あんたにそのまま返すよ」


 と言って攻撃を受け止める。後ろからの攻撃にも反応して躱す。躱して、受け止める。受け止めて、粉砕する。分身のようになった砂鉄はその形を失った。ひとまずは2対1ではなくなった。


「やってくれる……」


 ダフネが砂鉄から何かを再構築しようとしたそのとき。ダフネの身体に何発かの銃弾が命中する。攻撃したのはヒルダだった。


「ヒルダ……! なんで来た!?」


 困惑するヴェロニカとよろめくダフネをよそに引き金を引くヒルダ。だが、ダフネは銃弾を受けながらも砂鉄で盾を形作る。


「中まで入ってきたから! でもこっちに逃げてきたら壁が壊されてたんだよ?」


 ヒルダは言う。


「まあいいや、一緒にやるよ。こいつ、大して強くないみたいだから」


 ヴェロニカがそう言うと、ヒルダは頷いた。


「増援と思えばクロル家の出涸らし。くだらないよ」


 再び砂鉄がダフネの姿を形作る。砂鉄の方はヒルダに、本体はヴェロニカに。そんな中、ヒルダは近付かれる前にダフネ本体に銃弾を放った。


「今だよ!」


 とヒルダ。砂鉄のダフネの攻撃を受け流してガトリングの銃身で攻撃を受け止めた。


「わかってる!」


 フルスイング。振りの遅いダフネの攻撃をいなし、ヴェロニカのメイスはダフネの頭を砕いた。


「やった……ここから来る敵は他にはいないけど」


 ヴェロニカは辺りを見回した。目に見える範囲に敵はいない。だが、その気配はまだ敷地内に残っている。


「……あと2人」


 ヴェロニカは呟いた。




 裏門でも戦いは繰り広げられている。今。エミーリアがアポロに拳を叩き込んだ。


 ――手ごたえはあるが折れた……ダメージを受けた形跡もないな。さてはそういう能力か。


 エミーリアは少し戦っただけでアポロの能力をそれとなく察した。


「分が悪いねえ。ごり押しを封じてくるなんて」


 エミーリアは聞こえないように小声で言った。そして今度はアポロの攻撃を受け止めて。


「だがね、その能力で正面きって戦うのはちと間違っていないかい?」


 その言葉を耳にしてアポロはほんの少し表情を変える。


「そんなお前にはまだ俺への有効打がないが」


 と、アポロ。鉄パイプを振りぬき、それをエミーリアが左手で防ぐ。こちらも大したダメージではない。


「思いのほか頑丈だな。お前は誰だ?」


 アポロは言った。するとエミーリアは距離を取り。


「ダンピールと吸血鬼の間、とでも言っておくかねえ。どうやってこうなったかは言わん」


「なるほど、お前のようなのが味方だとさぞ心強いことだろうな」


 と言ったアポロ。エミーリアの攻撃を警戒して安易には近付かない。が、今度はエミーリアが一瞬でアポロに肉薄。力任せにアポロを抑えつけた。


「殺すことはできなくても無力化はできる。攻撃は通じなくともあんたはここで抵抗できるほど器用じゃない。そうだろう?」


 エミーリアが言うと、アポロは悔しそうな表情を浮かべた。実際にそうだった(器用ではなかった)ようだ。



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