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6 仇敵の影

 面倒なやつが来た、味方とはいえこいつの世話にはなりたくなかった、とリンジーは唇を噛み締めた。


「よう、リンジー。そいつらは何だ?」


 その声とともに暗闇の中から男がぬっと現れた。暗くても彼がジダンと同じくらい大柄であること、肩くらいまでの癖のある髪だということはわかる。


「オリヴィアの」

「まあいいや。立場的にも俺に従えよ、リンジー。いくら自由な行動が許されても俺の許す範囲で、だ」


 と、男は言った。


「わかってるっての。なんで手を出すの」


 リンジーは言う。


「あー、面白そうだから? 戦うことって面白いだろ。命を放り出していつ死ぬかも分からねえ競争に参加する。たまらねえな……」


「そこまでは聞いてない。あんたが出てきたなら相応の目的があるんでしょうが、クラウディオ」


「ま、そうだな。ちょいと事情が違うが――死んでくれ、晃真。昴には悪いがこれ以上放置はできん」


挿絵(By みてみん)


 クラウディオと呼ばれた男はすぐさま周囲に赤いナイフらしきものを展開。晃真に向かって放った。


「危ない!」


 晃真に赤いナイフが命中する直前。ジダンがそう言うと晃真は消えた。現れたのはちょうどナイフが当たらない位置。

 ターゲットを見失ったナイフはただ地面だけを抉る。そして――ナイフが命中した場所は地面がドロドロにとけ、ジダンが塗っていたであろう色も消えていた。


「まだだ。今度こそ、死ね」


 晃真の逃げ場を無くすように展開されたナイフ。今度こそ終わりだ。晃真が確信したときだ。

 ジダンがクラウディオに突進。手元が狂ったのかナイフはあらぬ方向へ飛ばされる。もちろん晃真には当たらない。


 願ってもないチャンスだ。晃真はクラウディオが攻撃に移る前にイデアを――熱の塊を展開。クラウディオに向かって放つのだった。


「あァ、俺と似た能力……下位互換ってわけか」


 クラウディオは言った。晃真はもう一度熱の塊を放つが――


「やめとけ。お前じゃ俺に勝てねえ」


 その声と同時に赤い刃が晃真の左足に吸い寄せられた。晃真が避けようとしてももう遅い。ジダンが移動させようにも、不発。そうして動揺したジダンの方にも赤い刃は飛んできた。

 攻撃が当たるたびに晃真とジダンは表情を歪める。晃真の左足はもう原型を留めていなかった。ジダンだって重傷だ。体の半分くらいに傷を負っている。が、ジダンはまだ倒れない。イデアの展開をやめたと思えば赤い刃の間を縫ってクラウディオの懐に潜り込んだ。


殴り合い(ステゴロ)だ! 俺はもう細工なんざしないからよ!」


 と言って拳を叩き込んだ。クラウディオのガードは間に合わない。やられるがままに攻撃を受けてのけぞった――ように見えた。


「その手には乗らねえな。せっかく強い武器がある、捨てられるわけねーんだよなぁ!」


 ふらりと倒れながらクラウディオは赤い刃を放った。ジダンがイデアの展開をやめたのは仇となった。赤い刃はジダンの肌を抉り、さらに焼いてゆく。


「ジダン!」


「いくらなんでもやりすぎじゃ……」


 と、リンジーと晃真が言ってもクラウディオは攻撃の手を止めなかった。


 晃真が片足だけで立とうとしたとき。クラウディオは一歩たりとも動かずに右足を潰した。晃真が地面に崩れ落ちれば彼の前まで来て首根っこを掴む。


「だいぶしぶといな。ドーピングでもしてんのか?」


 クラウディオは晃真をからかっているかのように尋ねた。


「さあな……うちの医者次第だ」


 と、晃真。

 まだ諦めてなどいない。左手に熱の塊を展開し、これで一矢報いようとしたが――


「そうかよ。相当腕の立つ医者と見たぜ」


 クラウディオはそう言って晃真を地面に叩きつけた。さらに蹴りを入れ、赤い刃を叩き込み――

 これだけやれば死ぬというくらいまで晃真を痛め付けた。


「おい、いくぜ。晃真をやったって伝えねえとな」


 と、クラウディオ。


「……あんた、本当に容赦ないね。人の心ないでしょ」


「無いな。お前がなんで恋人だからって晃真を殺したくねえのかもわからん」


 クラウディオが言うとリンジーは黙りこんだ。


「いくぞ。ロムと麗華が待ってるぞ」


「……それもそうだね」


 2人がその場を去るとき、リンジーは晃真に目をやった。

 痛ましい。両足が焼き潰され、上半身もひどい傷を受けている。ジダンだって足を焼き潰されたわけではないが意識を失う程度の傷を負っていた。


「で、オリヴィアを抜いてあと4人か。モーゼスのヤツをヤったからどんなのかと思えば拍子抜けだ」


 クラウディオは言った。


「あんたが強いんだから当然でしょ。あんたんとこのボスも怖がってるらしいって聞いたけど?」


「お、そうか? そいつは知らなかった。ボスは好きにやれって言うからよ、そういう考えかとばかり」


「全く。気づいていないんだかとぼけてるんだか」


 と歩きながら話す2人。

 夜とはいえ、今この付近を歩く人はいないに等しかった。麻薬の売人も闇医者もどこか別のところにでもいるのだろう。


「はは……ご自慢の勘で当ててみろよ。ったく、あの銀髪筋肉野郎に殴られて痛え痛え。ドクターに治療してほしいくらいだぜ」


 冗談混じりでクラウディオは言った。



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