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5 再会

 ランスが姿を消した翌日の夕方。晃真とジダンはマルクト支部を出た。

 臓器売買勢力の拠点はマルクト区でも東側にある。東の端の魔境とも言われる場所だ。


「そんな場所になぜ……」


 晃真は呟いた。


「さあな。いや、あくまでも噂の域だ。そうじゃなければおれたちは無駄な苦労をしたということになるぞ」


 と、ジダンは言った。


「もし噂が本当じゃなければその帰りに、襲ってきたあの勢力のところに殴り込んでやる。連中を殺してランスを連れ戻すんだ」


「それもいいな」


 晃真とジダンは会話を交わしながら東を目指す。

 同じマルクト区でも少しずつ景色は変わる。治安がいい場所、そうでない場所。どこの勢力が影響しているか。それだけで雰囲気が違う。


 鮮血の夜明団の勢力範囲を出るとそれはすぐにわかった。目に見えて飢えているような人が増えたのだ。


「あんたたちもよくやってるんだな」


 晃真は町の様子を見ると言った。


「ああ。ゆくゆくはマルクト区全体がそうなるようにするつもりだ」


 ジダンは答えた。


 どれだけ歩いた頃だろか。

 2人は東側――臓器売買勢力の勢力圏内にたどり着いた。すでに日は沈んでおり、あたりにはぽつりぽつりと粗末な照明がある。


 その照明に背後から照らされ、1人の男が歩いてきた。ただ者ではない雰囲気に晃真とジダンは身構える。


「また会ったな。ストーカーか?」


 その男――ルートビアは言った。


「ストーカーはあんただろう。残念だな、今オリヴィアはいない、オリヴィアを狙うなら俺が相手になる」


 晃真はイデアを展開した。


「なるほど、噂は本当らしい。反鮮血の夜明団の連中もここにいたということか」


 ジダンもイデアを展開し、戦闘に突入する。

 ルートビアはいつものように晃真を封じ込めようとした。が、晃真はその動作を見切っていた――


「封じるつもりか。その手には乗らん」


 箱に閉じ込められることなく、晃真は熱の塊を放つ。そんなときだ、敵の増援がやってきたのは。

 地面から現れる荊。晃真の熱の塊でこそ焼かれるが、ジダンをいとも簡単に拘束する。


「対応されちゃ終わりでしょ、あんたの能力。ここから先はあたしがやるから」


 女の声だ。

 直後、ルートビアがやってきた方向からフードを被った女が現れた。粗末な照明でわかるのは大まかな顔つき、体つき、髪の毛の先端の色。


「アナベル……!? いや、違う。アナベルの妹なのか……!?」


 晃真は言った。


「誰それ。知らない人の名前出さないでくれる? あたしはリンジー。アナベルじゃない。あんたはオリヴィアの何なの」


 フードの女は言った。


「恋人だ」


「ふうん……なら敬意をもって相手をしてあげる。一緒に連れて行ってあげるから。ルートビアはそっちの銀髪をよろしく」


 フードの女は地面から荊を生やす。その荊が執念深く晃真を追跡するのだ。晃真は熱の塊で焼き払おうとしたが――


「見えてんだからね!?」


 晃真の死角から襲い来る白い荊。晃真は対応する間もなく左腕を拘束された。


「くそ……」

「あたしには及ばなかったってわけだ。安心しな、命までは取らない。オリヴィアにとって大切な人ならそれだけで生かす意味があるってこと」


 リンジーは言った。


「言っとくけど燃やそうっても無駄だよ。今、あんたのイデアは封じられている。大人しくこっちに来てくれればなにもしない。ボスを殺してでも保障する」


「…………いいだろう。ただしオリヴィアをそっちに寄越すとは言ってないぞ。もし危険ならオリヴィアは渡さない」


 と、晃真。


「ふーん……案外色々考えてんのね。で、そっちは……」


 リンジーはジダンたちの方へ目をやった。

 ジダンが、押している。閉じ込められそうになれば別の場所へ瞬間移動し、ルートビアを翻弄している。


「なんで当たらないんだ……!」


 あからさまに焦りを見せているルートビア。


「最初に当てていれば今頃勝ててただろうな。だが残念、もうおれを止めることはできない」


 ジダンが言う。その瞬間、再びジダンが消えた。そしてルートビアより先にリンジーが気付く。


「――どこ見てんの!? 左に……」


 もう遅い。リンジーの警告もむなしく、ルートビアの顔面が変形した。左側から現れて拳を叩き込む。ルートビアは抵抗することも許されずに地面に崩れ落ちた。


「ま、仕方ないか。ルートビアだし。こちらは片がついた。ちょっとだけ、晃真を借りるから」


 と、リンジー。


「晃真が了承したかもしれんがおれはまだ了承していないぞ」


 ジダンは言った。


「やめときな。あたしはあんたの能力を完全に理解した。印を残した……いや、色を塗った場所に瞬間移動する能力だろ? 残念ながらあたしはその能力を封じ込めることだってできる」


 と、リンジー。ジダンは目を丸くする。


「それだけじゃないな。あんたは、自分だけじゃないものだって瞬間移動させられるだろ。見ればわかる」


「観察力があるんだな。だから何だ」


 と言うとリンジーは途端に顔色を変えた。晃真に見せた理解を歩み寄ろうとする姿は消え失せて、ジダンへの敵意をあらわにした。

 ジダンの足元から現れる茨。絡みつこうとしたその瞬間、ジダンは消える。現れたのはリンジーの死角。そこからリンジーに一撃を与えようとしたのだ。


「見えてんの! ちょっとルートビアを下したからって勝ったと思わないでよね!」


 ジダンを見ることなくリンジーは彼を拘束した。


「でも、少しはやるじゃない。状況を理解できないやつを認めたくはないけど……認めたくは……」


 このとき、リンジーは嫌な予感がしていた。



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