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6 3人の襲撃者

 調査拠点にいる間だけの短い時間。オリヴィアにとっても、それ以外の3人にとっても穏やかな時間であることには変わりない。それぞれが交代で仮眠をとり、そうでなければ見張る。だが、その見張りもあまり意味がないようだった。


「……穏やかだね。そうであるに越したことはないんだけど」


 夕暮れ時にパスカルは見張りをしていた。

 これまでの報告では襲撃しに来るような者たちはいなかったとのこと。変な動物が出たということもなく、本当に穏やかだった。欠伸が出るほどに。


 パスカルは携帯端末を取ると、ヒルダに電話をかけた。


「そろそろ交代の時間だよ。こっちは何もなかった」


 と、パスカルは言う。すると。


『了解! 今からそっちに行くね!』


 ヒルダは元気そうだった。これから彼女が外に来れば引き継げるのだが――


「ごめん、さっきのは嘘。敵襲。イデア使い3人がこっちに来ている。何が目的かはわからないけど……」


 と、パスカル。近づく敵の気配に気づき、イデアを扱える状態にする。石段から立ち上がり、黒い刀身のナイフを手に取った。


「加勢よろしく」


 パスカルはそう言って電話を切る。それと同時に――パスカルの視界に入る、有翼の青年。アサルトライフルを持った彼は羽ばたきながら銃口をこちらに向ける。

 パスカルだってそれには気づく。

 襲撃されたのならば応戦すればいい。


 有翼の青年は引き金を引いた。銃弾がばら撒かれ、パスカルたちのいる調査拠点にふりかかる。拠点への襲撃にしては生易しいようにも感じていたが。


「そっちは陽動ってことね」


 パスカルはすぐに答えを出した。有翼の青年は陽動にすぎず、裏手から回り込む他2人が本命だ。森から目視を逃れてここを襲撃するつもりなのだろう。だとすれば、パスカルが決断するのに時間はかからなかった。

 正面の防御は捨てる。パスカルは裏手に回り、本命2人の襲撃を待つ。その間、窓から中の様子が見えたのでランスにハンドサインを送る。


 ――持ちこたえることができたらいいんだけど。


 パスカルが集中して気配の動きを探っている中。表の方から銃声が聞こえてきた。これはヒルダがガトリングを連射する音。どうやら表側では始まったらしい。そして。


「加勢に来たよ。仮に私の命を狙っていたとしても、私は強い。なのでここで迎え撃つことにしたから」


 パスカルの方へ加勢に来たのはオリヴィア。至って冷静な様子でそう言った。


「はあ……勝手な真似を。自分の身は自分で守ってよ?」


 パスカルは言う。


「あなたに言われなくとも、それくらい簡単だし……来る」


 オリヴィアはすでにイデアを展開していた。パスカルが近づくことをためらうほどの、まがまがしい影。影の中からはうねうねと黒い手が伸びている。その手は森の中の暗くなっているところにまで伸びて。


「わかった。今回はあなたを信じる。左からくる相手をよろしく!」


「うん。私があなたの思う以上に強いってこと、見せてあげるから」


 オリヴィアがとった行動は先制攻撃。暗くなった場所を伝って、森の中にいる使い手にその手を向ける。見えない分、精度は下がるが初見殺しとしてはかなり優秀だろう。

 森の中に目を向けていたオリヴィアはもう1人の相手にも気づいていた。


「右側のやつに気を付けて。そいつ――」


 そう言おうとしたとき。オリヴィアの方も手ごたえを感じていた。黒い影の手は襲撃者に触れた。もっと言えば、その体に傷を入れた。が、それは致命傷には至らない。オリヴィアだってよくわかる。そして、もう片方の襲撃者。


「私たちをはめるつもりだから」


 オリヴィアは言った。


「心してかかるよ」


 パスカルは言った。


 5秒後。右側から襲撃者が現れた。パスカルは彼に対応すべく、イデアを展開。銃弾を撃ち込まれたときとは違い、今度はナイフを覆うようにして展開する。

 敵は重厚感のあるキューブ状のイデアを展開していた。これが何に使われるのか。初見だったパスカルにはわからない。すると。


「たかが凹凸を操る能力だとしても、そいつは。サバイは頭が回るから。突っ込んできたのも何かの目的がある!」


 オリヴィアが言う。が、そのときにはすでにキューブとナイフがぶつかり合っていた。その間に生じるエネルギーは大きく――パスカルの展開したイデアを吹き飛ばす。


「誰かと思えばオリヴィアじゃねえか。なんでこんなところにいるんだ?」


 オリヴィアがサバイと言った褐色肌の男はそう言った。


「ロム姉を探すため。知ってるなら、ここで情報を吐いてくれてもいいんだからね?」


 オリヴィアはイデアをちらつかせながら言った。彼女の能力はサバイを一撃で黙らせうる力なのだが。


「それは言えないな。そもそも、俺達の目的はそうじゃねえ。この調査拠点だ。教えてやろうか。手始めにこの調査拠点を攻め落とすんだよ!」


 サバイの放つ殺気。さらに、森の奥からの気配。

 オリヴィアは危険を感じ、森の奥へとイデアを伸ばす。目視できない分、精度は下がるがここで討っておくしかない。


 ――もうひとり。ルートビアは私たちをここに閉じ込めようとしている!


「キューブだけには近づかないで」


 オリヴィアは言った。



体調不良のため更新が遅れてすみません。次の更新は明後日です。

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