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23 天上決戦Ⅳ

 トイフェルを倒す鍵は距離を操作する能力の攻略にある。攻略には時空系の能力者がいればよいのだが、ここにいる誰もその能力を持っていない。ならば、イデア界に到達した複数のイデア能力者が引き起こす空間の揺らぎを利用するほかはない。


「……まだか、リンジー。お前さえいればこの状況は好転する」


 レフは呟いた。


 今の状況は敵有利。トイフェルはバグによって能力を解除させられたものの、バグの範囲外に吹っ飛んだことでイデアを再展開。さらにその能力で戦場に帰ってきた。彼とともに戦っていたアイゼンはオリヴィアと晃真を拘束している。その能力は命さえも侵食する。戦いが長引けば彼らの命はない――


「どうすんだよ、レフ。あいつが来ないことにはどうにもならねえよ。あーしは死に慣れすぎてその程度じゃ到達できねえし」


 オルドリシュカは愚痴をこぼす。


「ああ……おれも正直わからん。だが、何もしなければ何もできんまま終わってしまうぞ!」


 と言って、レフは地面にイデアのエネルギーを纏った拳を叩き込む。

 すると空間とイデアのエネルギーが揺らいだ。オリヴィアを拘束していた血にノイズが走り、拘束は緩み。

 オリヴィアは強引に抜け出した。


「いくよ」


 と呟き、再び黒の姿へ。紅く染まった瞳は鋭くアイゼンを睨みつけ、とんでもない物量の影を展開。それらは奔流となってアイゼンへと襲い掛かる。一方のアイゼンも血のイデアで同じことをする。

 血と影はぶつかり合い、反発し合い、空間が大きくゆがむ。

 そのときだ。空間の揺らぎから小さな異世界へのゲートのようなものが現れ、そこから1人の青年が地面に投げ出された。

 晃真だった。


「そんな……!?」


 動揺するアイゼン。

 それが隙となり、オリヴィアの影はアイゼンを飲み込んだ。

 影の空間の中、アイゼンは膨大なイデアに押しつぶされて絶命するだ。


「まずは1人。と、晃真……」


 オリヴィアは黒の姿のまま、晃真を見た。

 晃真は意識を取り戻したのか、目を開き、オリヴィアの方を見た。

 黒い瞳はこれまでの晃真と同じ。だが、違うところがあるとすれば晃真から感じられる大きなイデア使いの気配。彼の気配はこれまでにオリヴィアが戦った強敵――イデア界に到達した者たちと同様になっていた。


「もしかしてあなたも、イデア界に……?」


「ああ。あっちには昴がいたよ。最後まで好きになれねえやつだったが、あいつが俺をイデア界に導いた。俺も一緒に戦えるよ、オリヴィア」


 晃真はそう言ってオリヴィアに笑いかけて立ち上がる。これから、彼とともに戦うのだ。


「うん、行こう。晃真」


 オリヴィアがそう言うと、2人はイデアを展開。

 2人の前に立ちはだかるのはトイフェルただひとり。そのトイフェルもあの禍々しいイデアを展開して2人を迎え撃つ。


 最初に動いたのは晃真。地面を拳で殴り、トイフェルの足元に熱を放出する。トイフェルはそこから一歩たりとも動かない。概念としての距離を晃真の攻撃から無限に伸ばして攻撃を回避する。

 そのときに別方向から影の刃と影の奔流で攻撃するオリヴィア。今度は、トイフェルは距離をあえて縮めてそれらを正面から受け止める。


「感じるぞ。お前の生まれ持った『怠惰』の因子。だから私は嫌いだったのだ」


 トイフェルはそう言って距離を調整しながらオリヴィアの攻撃をはねのけた。

 かと思えば今度はオルドリシュカの斬撃。トイフェルの死角からの攻撃を受けそうになった彼だが、距離を調整しつつ片手間でオルドリシュカに反撃。


「くそ……! 倒れてたまるか!」


 と言ってオルドリシュカは反撃を受け流した。

 そうすることでオリヴィアたちに対してトイフェルには隙が生まれる。オリヴィアはそれを見逃さなかった。


「ああああああっ!」


 オリヴィアはトイフェルにできた隙を見て影の奔流をぶつけた。

 距離を伸ばして無限を作るトイフェル。

 ここで空間が揺らいだ。

 距離に狂いが出た。無限は無限ではなくなった。


 晃真はそれを見逃さず、トイフェルに突撃。

 その身に熱の鎧を纏い、熱の剣を手に斬りかかる。

 その一閃はトイフェルには届かなかったが、再び空間が揺らいだ。

 空間の揺らぎに便乗してオリヴィアが影の刃で斬りこむ。


 だが、トイフェルはその攻撃を見抜いていたかのように距離を一瞬で何度も調整してオリヴィア、晃真、オルドリシュカ、さらにレフをも吹っ飛ばす。

 このとき、トイフェルは珍しく焦りを見せていた。


「……わからなかった。私はイデアによる空間の揺らぎすべてを把握していたはずだ……」


 トイフェルは呟いた。

 それでもトイフェルはすぐに気持ちを切り替える。

 手始めにオリヴィアとの距離を縮められるだけ縮めて手刀での攻撃。

 オリヴィアは影で手刀をガードするが、トイフェルは一瞬にしてオリヴィアの後ろに回り込み、靴に仕込んでいたナイフで蹴りつけるようにして攻撃――

 ナイフはイデアを消す素材でできていたらしく、影と一体化していたオリヴィアにも攻撃が通る。さらに、彼女は影との一体化を解除された。


「まだまだ……わたしはこんなところで死ねない」


 オリヴィアはそう言って影でトイフェルを串刺しにしようとするも、届かない。

 そのときだった。トイフェルの距離の操作に荊が干渉した。


「待たせたね、オリヴィア。一緒に戦おう」


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