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10 ダフネとオルドリシュカ

 ミリアムたちの乗る車はセラフの町から北へと向かっていた。ミリアムが運転し、砂漠のハイウェイを爆走する中、彼女のイデアは現れた。それは、砂嵐。ハイウェイを突っ切り、行く手を阻むように展開されている。


「襲撃!?」


 車の助手席でオルドリシュカは声を漏らす。


「遠距離攻撃ができるメンバーは……」

「本業じゃないけど僕はできる」


 と、千春が名乗り出る。彼は炸裂弾を右手に持ち、車の窓から身を乗り出し。炸裂弾の軌道を軌跡に乗せて放つ。炸裂弾は砂嵐の中心部に達すると、光を放って炸裂。光に当てられ、砂嵐は消失する。その中心にいたのはキャスケットを被り、斧を持った女。彼女は砂嵐という盾を失ってすぐにハイウェイから退避。さらに車の側面に回り込み、側面から砂での攻撃を叩き込む。


「まずい!」


 と、声を上げたのはファビオ。

 それと同時に車は横転――回転し、吹っ飛ばされて砂漠に投げ出される。乗っていたメンバーは全員どこかしらを打撲した。


 その状況でもキャスケットの女、ダフネはハイウェイを強引に横断してミリアム一行に近づき。


「あっちは手遅れだと思ったからこっちに来てみたけど、包囲を未然に防げるのならこっちで正解ってわけだよね」


挿絵(By みてみん)


 ダフネは淡々とした声で言った。彼女がそう言う中、再び砂嵐が吹き始めてダフネとミリアム一行を閉じ込める。

 一方、まず車から出てきたのはオルドリシュカ。錬金術を使いこなし、死を重いものとして見ていない彼女はすぐさま横転した車から這い出て、車から剣を引きずり出して立ち上がった。剣を片手に。


「手遅れってなんだよ。なんであーしがここに来るって知ってんだよ。どこ情報だ?」


 オルドリシュカは尋ねた。


「どこだっていいじゃん。とにかく、あんたたちを近づける気はない」


 と、ダフネは言う。


「内側からばらされたって理由は考えたくないけどさー。あーしはこれでも仲間を信じてるし?」


「居場所が変われば考え方も変わるんだね。同じ人の下にいたのに、私はトイフェルに抜擢されて、あんたは捨てられて。境遇も違うからそれはそうかな」


 と言った後、ダフネはオルドリシュカに斬りかかる。オルドリシュカは跳びあがり、攻撃をかわす。その隙をつき、ダフネは砂嵐を刃物のようにしてオルドリシュカの死角から切りこんだ。鋭い砂の刃はオルドリシュカの脇腹を抉る。避けられなかった、否、避けられないと悟ってわざと致命傷を負うように当たりにいった。


「馬鹿じゃないの……」


 攻撃したダフネも、オルドリシュカの予想外の行動に困惑したのかそう呟いた。

 だが、ダフネはオルドリシュカの能力を知らない。


 ダフネの攻撃で一度絶命したオルドリシュカ。

 イデア使いの能力の中には、たまに使い手が死亡しても能力だけが独り歩きするものがある。オルドリシュカの能力もそれに該当し。


 オルドリシュカの亡骸からイデアのビジョンが現れる。それは七色に光り輝く不死鳥。不死鳥の尾がオルドリシュカの身体に触れると、彼女の身体は再生する。原型をとどめていなかった胴体も修復され、鼓動も戻り。何事もなかったかのようにオルドリシュカは立ち上がる。


 立ち上がるオルドリシュカに向かって、ダフネは砂の刃を放った。が、オルドリシュカはそれを一閃で薙ぎ払い。


「おいおい、あーしに向かっておイタが過ぎるんじゃねーの?」


 オルドリシュカは言った。すると、ダフネは困惑したまま口を開く。


「なんで死ぬような攻撃を受けて生きてるの……しかも、さっきのはわざとだよね?」


「あー……」


 オルドリシュカはぼりぼりと頭をかいた。


「あーしは死なない。だから、重傷より死ぬ方が実はダメージが少ないし、さっきのはもちろんわざと。重傷だと再起に時間がかかっちまうからさ」


 オルドリシュカがそう続けると、ダフネはゴミを見るような表情を見せる。


「効率厨通り越してもはや変態だよ……っていうか、殺せないって」


「降りるかい? あーしはオリヴィアみたいにカリカリしてないから対話の意志があるなら応じてやるぜ」


 と、オルドリシュカ。

 すると、ダフネは少し黙り、こう言った。


「そんなことをしたら、カナリス・ルートが終わるし……トイフェルに迷惑をかけてしまう。私、正規の会員だよ?」


 ダフネの口調はどこか自身に言い聞かせているようだった。その口調からダフネの思いを察したのか、オルドリシュカは一度剣を鞘に納める。


「あんた、迷ってんだろ。自分の置かれた立場と、自分のやりたいこととで」


 と、オルドリシュカ。


「そんなことはない! 人間のクズのくせに、知ったようなことを言わないでよ……唯一の理解者を裏切ったんだよね……!?」


 オルドリシュカに真意を見抜かれたダフネは噛みつくような口調で言った。それに呼応するように、彼女の周りでは砂ぼこりが渦を巻く。いつでも攻撃できるような状態になっている。

 だが、オルドリシュカは怯まない。


「違うぜ。理解者ならそこにいる。エレインのヤツに弄ばれる中であーしを助けてくれて、共に行こうって声をかけてくれた。あーしの居場所だぜ」


 オルドリシュカの声は自信に満ちていた。

 そんなオルドリシュカが眩しすぎて、ダフネは斧を片手にオルドリシュカに詰め寄って斧を振るい。オルドリシュカの首を切り落とした。




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