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6 化けの皮

 ジェイドは殺され、時雨屋旅館の場所が敵に割れた。事態は一気に変わり、作戦も変更されることとなる。いや、変更ではない。予定より少しばかり早く次の段階に移行するだけだ。


「オリヴィア。晃真。ヒルダ。エミーリア。ランス。頼んだぞ」


 旅館の前で杏奈は車に乗り込む5人に言う。

 この5人がスラニアにあるカナリス・ルート本拠に殴り込むメンバーだ。5人は弄月作戦を経て実力を確実にあげており、できることはやった。


「うん。頑張るね」


 車の窓を開け、オリヴィアは言う。


「必ず戻って来い。君たち全員が戻って来ることが私の今の一番の望みだ」


 杏奈は微笑みながらそう言った。

 陽葵や彰、桃瑠も手を振りながら一行を見送る。


 ランスが運転する車は時雨屋旅館を出発し、スラニア山脈の東側の盆地へと向かう。


「これはゼクスからの情報なんだが、残るカナリス・ルートはボス・トイフェルを含めてあと4人。最近増員したらしいと聞いたよ」


 3時間ほど進んだ頃。運転しながらランスは言った。


「誰だろう? 増員したってことはわたしが知らない人かもしれないんだよね」


 後部座席からオリヴィアが声をかける。


「それは何とも言えないなー。さて、あそこで休憩しよう」


 運転しているうちに店が見えてくる。レムリア大陸でも有名なコンビニ、スクエアCだ。ランスが車をとめ、一行は外に出る。

 オリヴィアたちがいた春月からはそれほど離れていないが、雰囲気は大きく違っている。春月のような明るいようで重苦しい雰囲気はない。


「ひとまずここでリンジーと合流することになっているな。リンジーが来てくれればいいんだが」


 と、ランスは言う。


 一行は駐車場近くのカフェのテラスでリンジーを待つ。その間にはこれまでの旅の思い出だとか、とりとめのない会話をしていた。

 そんな中でオリヴィアは席を外し、カフェやコンビニとは反対側へと向かう。晃真たちはオリヴィアを心配しつつも行かせたのだが――


「会いたかったよ……オリヴィア」


 オリヴィアが歩いていると、彼女に後ろから声をかける者がいた。ねっとりとした口調とその声で、オリヴィアは声の主にすぐ気づいた。声の主はアナベルだった。


「アナベル……?」


「ディサイドでのことはごめんね。アポロっていう赤髪の敵は私が倒しておいたよ……それにしても強くなったよねえ、オリヴィア。こうなることは予想していたけど……私の思っていた以上に仕上がってくれて……目にするだけで昂ってきたよ……♡」


 アナベルは顔を赤らめ、その口調も心なしかアナベルの内面を押し出したようになり。ついにアナベルの化けの皮が剥がれた。


「アナベル……?」


「もう焦らさないでくれるよね? ついに迎えたこのとき、最初から最後まで味わい尽くしたいからね……もう、我慢できない。仕上がった君を殺し、私の血と君の血が交わる様を――」


 アナベルがそう言う中、オリヴィアはイデアを展開。アナベルを斬りつけようと影の刃を放った。するとアナベルは糸でそれらをすべて受け止め。


「刺激的♡ そうだよ……やっぱり君は私を昂らせてくれる」


 アナベルはこのとき、はじめて本気を出した。糸を操り、オリヴィアの体内にまで糸を挿入する。だが、オリヴィアはそれに対処していたのか体内にも影を展開して糸を切る。からの、アナベルの死角からの攻撃。


「へえ……」


 と言うと、アナベルは影の刃から逃れたと思えばオリヴィアを拘束。すると、オリヴィアは影と一体化して拘束から逃れ。


「話が見えない! わたし、あなたを殺したくないし殺されたくもない! どうしてこうなるの!? あなたはわたしの前ではこうじゃなかった!」


 オリヴィアは影と半ば一体化してそう叫ぶ。


「残念……こっちだよ、私の本性は」


 と言って、アナベルはオリヴィアに向かって糸を放つ。その後ろには糸の結界。逃げ場などないと錯覚させる。だからオリヴィアは影の奔流をぶつけた。


「本性くらい隠してよ!? わけがわかんない!」


「戦えばわかる。きっとわかる。私の中の熱情くらい、似たようなものを向けられている君ならわかるんじゃないかな……?」


 アナベルは影の奔流を受け止める。

 オリヴィアは影の奔流がアナベルへの決定打になりえないことを悟り、降ろす。オリヴィアは影と完全に一体化し、黒髪に赤眼の姿となった。


「わからない……わからないよ、アナベル。わたしに優しくて、わたしを助けて生かしてくれたアナベルは何だったの……?」


 オリヴィアは目に涙をにじませて尋ねた。


 アナベルは仲間とはぐれたオリヴィアを助け、導いた。旅のところどころでおせっかいながらも助けてくれた。ロムに殺されたオリヴィアの命を救ってくれた。


 だが、今のアナベルにその面影はなく、ただオリヴィアを自身の情欲のはけ口にしているだけだ。


「同じだと思ったんだよ……私も君も無価値だと思われていたって。でも違った。私が君の中に価値を見つけてしまった。それで君は無価値ではなくなるし、君は旅を通して強くなった。だったらやることは一つだよねえ……?」


 今のアナベルには話が通じない。化けの皮が剥がれたアナベルは、もはやオリヴィアの知っているアナベルではなくなっていたのだ。

 オリヴィアは影を纏い、アナベルに突進。手刀をアナベルに叩き込もうとするが――糸で完全に防がれた。


 アナベルは圧倒的な強者だった。

 オリヴィアは再びここで絶望を知ることとなった。


 だが、アナベルの前にもう一人の人間が現れる。


「やっと会えた、アナベル」



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