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ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第13章 因縁の町【アポロ&ヴァレリアン編】
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10 ディサイドの惨劇

 ここはディサイドの町だったところ。今は戦闘と虐殺で地獄絵図と化している。


 リンジーの目の前でオルドリシュカが一刀両断され、殺された。彼女を殺したカテリーナは狂気に満ちた瞳でリンジーを睨み。次のターゲットはリンジーだ。


「お前らの屍は……ダンピールだから心臓を串刺しにでもして飾っておくかァ。吸血鬼になられても困る」


 カテリーナは言った。

 リンジーはこれからカテリーナを相手しなくてはならない。広範囲を支配し、いつもの半分以下のイデアしか自由に扱えない状態で。


 カテリーナは狂気に満ちた笑みを浮かべ、リンジーに斬りかかる。

 終わりだ。殺される。リンジーは確信しつつも荊での拘束を試みた。その荊はいともたやすく切り裂かれ。チェーンソーの刃はリンジーに届くと思われた。

 だが、チェーンソーとリンジーの間に展開された障壁。刃は障壁にはじかれる。


「カテリーナ・ストラウス。まるで狂戦士ね。あなた、何人殺した?」


 まず間に入ったのはパスカルだった。


「殺したやつを数える趣味なんてないし死ねば灰になる連中の死体をどう数える!」


 カテリーナはそう言うと障壁を迂回してパスカルに斬りかかるが。パスカルは斧で正面から受け止めた。そのままチェーンソーごとカテリーナを振り払い、さらに斧の一撃を叩き込む。

 パスカルの加えた一撃はカテリーナをよろめかせ。


「ちっ! お前さてはダンピールだな!」


 カテリーナはよろめきながらもチェーンソーを振るい。パスカルが展開したイデアを切り裂いた。砕け散る障壁、笑うカテリーナ。カテリーナは体勢を立て直すと、畳みかけるようにしてパスカルに斬りかかった。

 パスカルは斬撃を躱す。するとチェーンソーでの斬撃は市長の邸宅の壁を両断。とんでもない切れ味だった。


「受け止めない方がいいのね」


 呟くパスカル。

 さらに彼女の後ろではリンジーがカテリーナに恐怖を覚えていた。


「あたしが知ってる実力者と……違う。まるで『Gift』中毒者だよ……」


 リンジーはそう呟いた。


 そうしている間にも、カテリーナはパスカルに斬りかかった。単調なようで単調でない攻撃。パスカルはまた間一髪で攻撃を躱した。だが、今度はパスカルに当てようとした攻撃が拘束された兵士たちに当たる。頭が切断され、脳漿がぶちまけられ、首が胴体から離れ。パスカルが避ければ避けるほど兵士たちは殺されてゆく。

 また避けて、パスカルのかわりに兵士が殺されて。大地が血で染められる。


「なるほど、早く終わらせる必要があるね。じゃないと、必要以上に人が死んでしまう」


 と、パスカルは言ってまた攻撃を躱す。するとカテリーナに隙ができた。

 パスカルはカテリーナの懐に飛び込むようにして斧を振るう。


 それと同時に剣を振りぬいた者がひとり。

 両者の攻撃は同時にカテリーナの下腹部と背中に命中し、カテリーナは苦悶の表情を浮かべてよろめいた。

 剣を振りぬいたのはミリアム。彼女の一太刀はカテリーナの防刃ジャケットを突き破り、その刃をカテリーナに届かせた。

 パスカルだって同じ。斧が防刃ジャケットを貫通し、攻撃がカテリーナに届いた。


「やれやれ、とんだ化け物だな」


 ミリアムは言った。

 この惨状を前にしてもミリアムは、表面上は涼しい顔をしている。


「ええ。本当に。頑張れば勝てないこともないけど、ここまでの状況はさすがに見ていられない」


 と、パスカル。


「そいつ、カテリーナ・ストラウスは後継者のイザーク・ストラウスより強いぞ。何をしたか分からないが。まあ、とにかく」


 そう言いながら再び斬りかかってくるカテリーナの攻撃をあしらい、斬撃へ。カテリーナはその攻撃を受けようとするも、今度は反対からパスカルの攻撃。


 だが、カテリーナは大振りな薙ぎ払いを選んだ。

 何でも切断するチェーンソーは2人の得物に傷を入れる。ミリアムのサーベルは先端が折れた。パスカルの斧は刃こぼれした。


 それでもミリアムは諦めず、折れた剣でカテリーナへと斬りかかり、懐へ。


「野蛮な方法だが殺せば解決する。逆にコイツの心臓を串刺しにしてやろう。シュラスコみたいに」


 と言って、左手で予備の剣を抜いたと思えば超高速の斬撃でカテリーナの頸動脈を切り裂き。カテリーナが後ろに下がろうとすれば両目を狙って突きを繰り出した。からの、斬撃。カテリーナの生首は地面に落ちた。


 ミリアムはふう、と息を吐いて剣をさやに収めた。


「ありがとう、助かった。これで地上は大丈夫?」


 パスカルは尋ねた。


「天照の連中がうまくやっていれば問題ないはずだ。できていれば降下してくるやつはこれ以上いないはずだ。どうだ、ファビオ。連絡は取れるか?」


 と、ミリアム。

 当のファビオは晃真の処置を終えて電話で連絡を取っているようだった。


「陽葵とレフは大丈夫みたいだよ。それと、降下は大丈夫かもしれないけど墜落には気を付けてって」


 ファビオは答えた。

 墜落という言葉でパスカルは飛行艇の存在を思い出す。もし降下が止んでも飛行艇そのものが地上に落ちてくるとしたら。


「まずい……!」


 パスカルはその危険性に気づいた。



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