表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第13章 因縁の町【アポロ&ヴァレリアン編】
299/343

6 これから介入する

 ディサイド近郊。包囲網の外でアポロとヴァレリアンは町の様子を見ていた。

 上空には飛行艇。まず最初に飛行艇から空挺用のポッドが射出され、町の中心部へと着陸した。


「始まったか」


 アポロはチュロスをほおばりながら言った。

 いつもは運び屋としての役割を担うアポロだが、今回ばかりは別の目的でディサイドの町に来ていた。トイフェルに頼み、ディサイドでの作戦の実行役にさせてもらった。


「オリヴィア一派もこの中にいる。うまくいけば全員を始末できるはずだよ」


 と言ったのはヴァレリアン。


「ああ。それならストラウス家への接触は頼んだ。俺はオリヴィアたちを始末する。ストラウス家の最高傑作だか知らないが、オリヴィアに関わったら何かしらのイレギュラーが起きる」


 と、アポロが行ったその時。

 アポロの持っていた携帯端末に着信があった。アポロは何事か、と電話に出る。


『カナリス・ルートか。私だ。緊急事態だ、市長の身に何かがあった。電話の最中に何か起きたようでな、何者かが電話を乗っ取った』


 ストラウス家の当主は焦った口調でそう言った。


「なんだと……介入は必要か?」


『頼む。が、こちらへの訪問は当初と同じで頼む。介入はできるだけ素早くしてくれ……』


 ストラウス家の当主はそう要求した。

 戦場への介入とストラウス家への訪問を両方やらなくてはならないのであれば、必然的に別行動となる。


「了解だ。ヴァレリアンをそちらに向かわせる」


 アポロはそう言って電話を切る。

 そんな彼に、結果を聞かせてくれとばかりにヴァレリアンは視線を向けた。


「状況が変わった。市長からの連絡も途絶えたらしい。やはり俺達の介入が必要らしいが、ヴァレリアンは予定の通り動いてくれ」


 と、アポロ。


「ああ、そうかい。それなら介入の方は頼んだよ」


 ヴァレリアンは理解が早く、すぐに納得した。

 そうして2人はそれぞれディサイドの町とストラウス邸に向かう。


「……食ってる場合じゃねえな」


 アポロはヴァレリアンと別れた後、食べかけのチュロスを投げ捨てた。

 早急に向かわなくてはならない。アポロはイデアを展開して現場に急ぐ。能力の力も使って走るアポロはおおよそ人間ではありえない速度を出していた。




 ディサイドの町に近づいていたのは何もカナリス・ルートだけではなかった。

 ディサイドの町の北東、ティアマットの町から近づいている者たちもいたのだ。

 彼らは装甲車で近づいていた。


「まさかお前が知っているとはな、ミリアム」


 車の後部座席に座っていたゼクスはピザを片手に言った。


「これでもクロル家の情報網はまだ生きている。カナリス・ルートのきな臭い話は仕入れられたよ」


 と、ミリアム。

 彼女もまたピザを片手に話している。いや、今運転しているファビオ以外の全員がピザを食べながら話をしている。これから混沌とした場所に向かうというのに緊張感もあまりない。が、一行には妙な結託があった。


「へえ、すごいじゃん。情報網のタダ乗りとか、あたしはさせてもらえなかったよ」


「同じく。ってか、あーしは本当にエレインに飼われていただけだし」


 リンジーとオルドリシュカはそれぞれ言う。


「ま、俺もだな。そもそも俺は戦う事以外を想定されてねえわけだが」


 と、ゼクス。

 ここにいる6人全員がほとんど同じような境遇を経験している。全員がカナリス・ルートの会員の部下として暗躍し、離反あるいは会員の死でカナリス・ルートとのかかわりが消えた。加えて今やこの6人はカナリス・ルートと明確に敵対している。


「ただ、私がきな臭い話を仕入れたのはいいが、実行すると決めたのはお前たちだ。特にリンジー。やっぱりオリヴィア絡みか?」


 ミリアムはリンジーに尋ねた。


「そうだよ。オリヴィアは異世界生まれだけど、表向きではディサイド出身てことになってる。行くとしたらディサイドだって」


 と、リンジーは答える。


「そういうことか」


 ミリアムは納得する。

 が、彼女自身もディサイドの町に行く理由はあった。それはヒルダの存在。オリヴィアがディサイドの町に行くとなればヒルダも行くだろう。ミリアムはそう踏んでいた。


「それはそうと、オリヴィアたちに連絡しなくていいのか?」


 そう尋ねたのは陽乃。


「忘れてた……状況くらいは確認しないとね」


 と、リンジー。

 やれやれ、と言わんばかりに陽乃は携帯端末を取り出して電話をかける。相手は陽乃が唯一番号を知っているオリヴィア一派、晃真だった。


 ほどなくして晃真が電話に出た。


「よう、晃真。私は敵じゃないぜ。そっちの状況を端的に教えろ」


 晃真が電話に出るなり陽乃は言った。


『信用できない。あんたは何者だ?』


「リンジーの仲間だから、お前らの味方だよ」


 陽乃はリンジーの名前を上げる。


『そうだったか』


 納得した様子の晃真。さらに晃真は続ける。


『ディサイドの町は包囲された。今俺たちは市長の家に籠城しているんだが、ついさっきストラウス家の人間が襲撃してきた。それでオリヴィアと俺達が分断されて、襲撃者はオリヴィアの方に行った。こんな状況だ』


「へェ……」


 と言って陽乃は外を見た。

 気付かなかったが、ディレインの町の上空には飛行艇が6機ほど飛んでいる。それらはすべて爆撃もできる代物。

 陽乃は最悪の可能性を想定した。


「大変だ……飛ばせ、ファビオ! 私らが死ぬかもしれねえ!」


 電話の最中でありながらも陽乃は言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ