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ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第12章 見えざる城【ロム&クラウディオ編】
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27 終わりの始まり

 クリシュナはため息をついた。

 プロスペロの情報を集めてくると言った構成員が戻らないし、その構成員の情報がどうにもテンプルズ支部のデータベースと合わない。


「おかしい」


 と、クリシュナ。

 端末で構成員の情報を確認するも、周囲の人の言う事と一致しないことがある。


「データベースですよねえ。ほら、レヤンシュさんは本部にカナリス・ルートを招き入れて更迭されたじゃないですか」


 クリシュナの隣でマリカは言った。

 マリカはたった数日でクリシュナの信頼を得て副官にも近い立ち位置となった。そもそもそこからおかしいのだが。


「ああ。だが、データベースにはレヤンシュが更迭された記述もない。俺の副官はデータベース上ではレヤンシュということになっているが……俺の副官は君だ」


 クリシュナは言う。

 そうしながらも、勘の鋭いクリシュナはある可能性に行き着いていた。

 認識を狂わせる能力者がいるのではと。


「行くぞ、マリカ。確かめなくてはならないことがある。もし本当なら、俺はカナリス・ルートの手の者をふたりも招き入れたことになる」


 と、クリシュナ。


「ええええ!? 私、まだ手続き終わってないですよねえ!?」


「いいから行くぞ。何か取り返しの付かないことが起きているかもしれない。それに、君がカナリス・ルート側ではないことは確認済みだ。『知将』をなめるなよ」


 戸惑うマリカに、彼女のことはお構いなしのクリシュナ。クリシュナは時として強引だ。とはいえ、その行動には必ず意図がある。マリカも意図があると踏んでクリシュナとともに『Gift』工場に向かった。




「あのロムが? わたしを?」


 と、オリヴィアは呟いた。

 記憶が正常になってから、オリヴィアはロムを信用できなくなった。例えロム以外の口から幹部候補だったと伝えられてもだ。


「寝言は寝て言ってよ。ロムはわたしを出来損ないだと言った。信じられるわけがない」


「なるほどな。私はロムから信頼されていてね、本心も――」


 オリヴィアはプロスペロの言葉を遮るように影の刃を伸ばす。そのプロスペロも赤い粘液を振り撒いた。粘液を躱すオリヴィア。


「いいよ、そんなこと。ここはわたしの居場所じゃない」


 オリヴィアは冷たい声で言った。

 彼女の中で何かが外れた。パスカルを避けて影を部屋中に展開し、プロスペロとヴァルトにぶつけようとした。だが。


「いいのかな? 晃真は僕の手の中にいる。今攻撃すれば晃真は死ぬよ」


 ヴァルトは晃真を閉じ込めた瓶を盾にして言った。

 彼の近くにいたプロスペロもまだ影による攻撃を受けていない。

 そう。オリヴィアは晃真を盾にされた瞬間、攻撃の手を止めた。


「ずいぶんと複雑な立ち位置のようだからね。君も晃真も」


 ヴァルトは続ける。

 と同時にプロスペロは口から赤い粘液――アメーバのような何かを吐き出してオリヴィアにけしかける。その攻撃速度は思いの外、速い。戸惑うオリヴィアは対応が遅れ。


「危ないっ!」


 パスカルは斧で赤い粘液を弾き飛ばし、ヴァルトとプロスペロの前に出た。そこから、まずはプロスペロに攻撃。斧を振るう。


「やっと出たか。お前だけは早々に消せと」


 プロスペロは赤い粘液を纏った腕で斧を受け止めた。


「そんな事は想定済みよ。立場上ね。

 オリヴィア! 先に行って!」


 と、パスカル。


 もしオリヴィアが戦いづらいことがあればオリヴィアを先に進ませる。道中で決めたことだ。今は晃真を人質に取られているに等しい。なによりオリヴィアが戦うべき相手はひとり。


「わかった」


 オリヴィアはそうとたけ言って、プロスペロの隣をするりと抜ける。

 向かうのはこの先のドアだ。どこにつながっているのかわからなくとも、ヴァルトたちが入れたのだから出口はある。


「逃げるな!」


 叫ぶヴァルト。

 続いてプロスペロも赤い粘液を放った。が、オリヴィアは圧倒的な物量の影を展開。パスカルを含めた全員を威圧した。ヴァルトとプロスペロにできた隙をついて、奥の部屋に突入した。


 プロスペロはオリヴィアを逃がすまいと赤い粘液を放った。が、それは突如現れた壁に阻まれることとなる。


「相手は私だよ」


 と、パスカル。

 壁もパスカルが展開した。今の状況でプロスペロはぎりりと歯ぎしりし、再び口から赤い粘液を吐き出す。


「オリヴィアだけを逃がす、か。断言しよう。あの様子でも、ロムの手にかかればオリヴィアは我々の軍門に下る。ちょうど『荊姫』も再教育が始まった。『シンデレラ』もいずれ」


 と言うと、プロスペロは赤い粘液を地面にまき散らす。まき散らされたと思えば、粘液は成長したかのように形を変える。


「手加減はしないさ」


 プロスペロがさらにそう言うと、粘液がオリヴィアの影のようにして襲い掛かる。

 パスカルは即座にイデアを展開して攻撃を遮る。が、畳みかけるような攻撃は続く。イデアの壁の反対側に粘液が回り込み、パスカルに襲い掛かる。


「あぁあっ!」


 踏み込んで、斧で薙ぎ払う。斧での一撃で、粘液はパスカルを避けるようにして飛び散った。次は、攻撃だ。赤い粘液が降りかかる中、パスカルはプロスペロに突撃。パスカルは斧を振りぬいた。



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