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ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第12章 見えざる城【ロム&クラウディオ編】
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10 予想外の対価

 一行はテンプルズにたどり着く。

 テンプルズは南国、常夏の町。開放的な空気は学問に対してもあてはまり、この町は錬金術の聖地でもある。駅から出たところにあるのは第一図書館、さらに案内板には第二図書館、錬金術アカデミーに錬金術研究所まで書かれていた。

 キルスティがいればさぞ興奮したことだろう。


「ついたのはいいけど、問題は手掛かりを無くしたってことね」


 と、パスカルは言った。

 彼女の言う通り、手掛かりを握っていたのはリンジーとオリヴィア。特にリンジーはこの町にいる協力者についても話していたし、本拠地についても言及した。が、肝心の場所はリンジーさえも知らなかった。


「ロムたちも抜かりないな。オリヴィアとリンジーを連れ去るなんて……」


 そう言ったのは晃真。


「あれでもぬるい方ね。その気になれば、私たちをはめることもできたはずなのに。他に優先したいことがあれば別だけれどね」


 と、パスカル。


「違いないねえ。で、行くところは鮮血の夜明団テンプルズ支部でいいのかい?」


 エミーリアは尋ねた。


「ええ。私たちが情報を得るならテンプルズ支部が最適解よ。もし鮮血の夜明団に用があるなら杏奈の名前を使えばいいからね」


 と、パスカル。

 彼女の言葉にはマリカも少しだけ反応した。


「……テンプルズの支部長って」


 マリカの言葉は一行の誰も聞き取れなかった。




 30分ほど歩いて一行は鮮血の夜明団テンプルズ支部に到着した。

 他の支部と同じように、受付で手続きを済ませた。杏奈からの紹介と言えば、受付の中年女性もすぐに分かってくれたらしく、すぐに通された。


 案内されたのはなんと支部長室。

 普通は応接室での対応となるのだが、パスカルが杏奈の名前を出したことで案内人は支部長室へと通したのだ。


「初めましてだな、神守杏奈の友人ご一行。俺がテンプルズの支部長クリシュナだ。以後お見知りおきを」


 支部長室の奥、椅子に腰かけたクリシュナは言った。

 年齢は杏奈やエミーリアと同じくらい、身長は180センチないくらい、薄めの褐色肌に銀髪が特徴的な美丈夫だった。


 クリシュナを目にしたマリカは明らかに落ち着きがなかった。表情は緩み、心なしか頬は紅潮していた。


「まさか杏奈の名前を出すだけでここまで進むとは思いませんでしたよ」


 と、パスカル。


「はは、杏奈と俺は同期だよ。それに、杏奈の影響力は強い。彼女の名前を出されては無下にはできないよ」


 クリシュナは言った。

 知将の二つ名を持つ彼は、話のわかる人らしい。


 パスカルはひとまずクリシュナを信じて尋ねる。


「本題ですが『Gift』の製造元を特定したというのは本当ですか?」


 聞かれた方のクリシュナは一瞬黙るが。


「本当だ。アルコナという村にあるとまでは突き止めた。問題はロム一味のあるイデア使い。彼女のせいでどうにも近付けなくてね」


 クリシュナは答えた。


「もし使い手たちの情報があれば回してくれるかい? あんたらの組織の諜報員たちは優秀だから信頼していてねえ」


 今度はエミーリアが言った。


「構わないよ。ただし、眼鏡の彼女を鮮血の夜明団テンプルズ支部に引き抜かせてほしい」


 と、クリシュナ。


「私い!?」


 戸惑うマリカ。

 まさかクリシュナのような美男子から引き抜きの提案があるとは思ってもみなかったのだ。


 マリカをよそにクリシュナはさらに続ける。


「ああ、そうだ。ちなみに錬金術アカデミーは退学してくれ。都合が悪い」


「へあっ!? 私にも私の人生があるんですけど! アカデミー出てない錬金術師なんて箔がつかないじゃないですか! 私に錬金術師の人生を諦めろって言うんですか!?」


 と、マリカ。


「すまない、言葉が足りなかった。錬金術師として引き抜きたい。錬金術アカデミーのありかたは賛否両論だが、俺はあまり良い印象を持っていない。学費のために金払いの良い学生をわざと留年させたり、九頭竜の手の者が運営していたり。君は、一体何年アカデミーに在籍しているのかな?」


 クリシュナは尋ねた。

 すると、マリカは指を折ってアカデミーにいた年数を確認する。


 マリカは今、23歳。アカデミーに入学したのが10歳の頃、それから入門課程を3年に中等課程を3年。これで6年。さらに、上級課程を7年。本来ならば上級課程は4年で終わるはずなのだが、マリカはすでに3度留年している。

 今思い出してマリカは顔色を変える。


「13年。待って、普通は10年だし、私の場合は最低でもあと1年……! うう、私が落ちこぼれだからですか……」


 と、マリカ。


「すまない。聞いた俺が悪かった。とはいえ、君は錬金術師として可能性を投げ捨てているように見えるんだ。俺の元にいれば、アカデミーにいるより君は成長できるはずだ。それに、何も錬金術師になるにはアカデミーにいなくてもいい。キルスティやヘンリクさんがそうだったように」


 クリシュナは言った。

 マリカは落ちこぼれだとわかっていながらアカデミーにしがみつこうとしていたが、少しだけ見る目が変わった。


「い……いいですよ。あなたの意図がわかりませんが!」


 マリカは答えた。



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