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ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第12章 見えざる城【ロム&クラウディオ編】
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7 隔離

 気がつけばオリヴィアとリンジーは謎の空間にいた。

 襲撃してきた7人を拘束した直後に、窓に映り込んだ何者かの手で引きずり込まれ。オリヴィアとリンジーは得体の知れない場所に飛ばされた。


「いたた……何あれ……」


 オリヴィアは体を起こしながら言った。


「さあね。ただ言えるのは、ここが列車の中じゃないってこと?」


 と、リンジー。

 彼女はこの空間に覚えがあった。リンジーが思い出すのは、リュカの作り出した亜空間。件の場所がどのように作られたのかはわからないが、ここが似たような仕組みを持つことはわかる。


「あと、空間を作ったやつを殺せば出られる。場所はどこになるかわかんないけどね」


 さらにリンジーは続けた。


「なーんだ、簡単だね。見つけ出して殺すならすぐにできそう」


 オリヴィアは言った。


「そう簡単にいく訳がないんだよなあ」


 男の声。

 オリヴィアが振り向いてみれば、そこには水色の髪の爽やかそうな男がいた。彼はボルド。オリヴィアたちをこの空間に閉じ込めた張本人だ。


「あれ? そういうこと言っちゃう? あたしはあのリュカの空間に侵入できたし破壊できたんだけど」


 と、リンジー。


「俺には制約がある分、簡単にはわからねえよ。ここから出る方法は」


 ボルドは言った。


「? 要はあなたを殺してリンジーの能力で脱出すればいいんでしょ?」


 今度はオリヴィアが言う。

 彼女の足元には影が蠢いていたが――


「正解だ。とはいえ、お前の能力で俺は恐らく殺せないんだな。それが」


 と、ボルド。


「イデア界に到達したわたしにそんな事言えるの?」


 と言ってオリヴィアはイデアを展開するが――展開したそばから影のイデアは消える。どれだけ頑張っても結果は同じだ。


「ほらな。空間生成能力は中を好き勝手弄れる。拘束に関しては勝る能力も無いぜ」


 ボルドは言った。


 イデアは封じられている。ならば、それ以外の戦い方はどうか。

 オリヴィアは獣のようにボルドに掴みかかる。が、当のボルドはオリヴィアの攻撃を受け流して投げ。オリヴィアは地面に叩きつけられた。


「お前、近接戦闘に慣れてねえだろ。動きが素人なんだよなあ」


 と、ボルド。

 何も言えないオリヴィア。彼女はこの空間ではまさしく無力だった。


 それでもオリヴィアの元にはリンジーもいた。リンジーはオリヴィアがいなされた直後、ボルドに肉薄し。


「じゃあ、あたしはどうだ?」


 そう言った瞬間には蹴りを放っていた。

 ボルドは対処が遅れて蹴りを受けた。脇腹に蹴りを受けてよろめいたところに、さらに一発。


「うっ……!?」

「ここから出すまでやめないから」


 リンジーは言った。

 反撃しようとボルドがリンジーにタックルを繰り出すが、リンジーはいとも簡単にかわす。からの、ハイキック。


「くそ……出なければ……」


 と呟きながら、ボルドは光のある方へ。光へと手を伸ばしてボルドは姿を消した。


「消えた……」


 オリヴィアは呟いた。


「空間生成能力ねえ。出入り自由な分、あたしらでの対処が無図かしいわけなんだけど」


 リンジーは言った。

 するとオリヴィアも言う。


「あいつの言ってたこと、覚えてる? 制約があるって」


「そういえば」


「制約でわたしが思い付いたのは3つ。1つは、出入りする方法が限られていること。もう1つは、ある弱点を突けばわたしたちでも脱出できること。それと、この空間から外につながることができるかもしれないってこと」


 と、オリヴィア。


「詳しく」


「うん。言える限りだと、アナベルの能力が変な空間から出る能力だったからって言うのかな。他は本当になんとなくだよ」


 リンジーに聞かれるとオリヴィアは答えた。


「なるほどね。なんとなくも理由だと思うし、いーんじゃない? で、アナベルの能力……アナベルの能力ねえ……」


 と、リンジー。

 彼女は表情を変えて再び口を開いて。


「あたし、どうもアナベルとは平行世界の同一人物って関係にあるんだよね」


 リンジーは言った。


 亜空間をしばしの沈黙が包み込む。

 オリヴィアはわけがわからなかった。平行世界の存在はこの身で経験したから知っているが、平行世界の同一人物など聞いたことがなかった。


「……ごめん、どういうことかさっぱりわからない。辛うじて、平行世界があることはわかるけど」


 オリヴィアはしばらくして言った。


「あー、そうだねえ。分かんないだろうね。簡単に言うと、あたしたちがいる世界以外にも世界があって。そっちにもあたしに相当する人がいる。それがアナベルって話。どっちもオリヴィアと引かれ合うみたいだし」


 と、リンジー。


「うん、よく分からないけどそういうことなんだ。で、平行世界とこの空間は関係あるの?」


 オリヴィアは尋ねた。


「ある……とは言い切れないけど、仮にあるならここから出られるかも。それに、平行世界の同一人物の能力は似てるって言うわけだし。それを踏まえたら」


「出られる?」


「出られるかも。ま、あたしが能力を使えたらね」


 と、リンジー。

 八方塞がりだ。2人はここに閉じ込められ、誰も助けに来ることなく――


 リンジーに限ってはそうでもなかった。

 彼女の足を男の手が掴み、亜空間から引きずり出した。



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