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ダンピールは血の味の記憶を持つか ~悪の吸血鬼の娘は自分探しの旅に出る~  作者: 墨崎游弥
第12章 見えざる城【ロム&クラウディオ編】
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5 いざテンプルズへ

 オリヴィアとリンジーが組んだ。

 秘密裏のものかと思われたが、実際には目撃者がいた。その目撃者はノーフェイス、またの名をジョン・ドゥ。

 セラフの町でオリヴィアに倒されるも奇跡的に生還したジョンその人だ。


 物陰に隠れていたジョンは見ていた一部始終を携帯端末でロムに伝えていた。

 オリヴィアとリンジーが組んだこと。2人がロムの命を狙っていること。拠点の場所が割れた可能性があること。

 今の状況は間違いなくロムにとって逆風だった。


 一方のオリヴィアたちはジョンには気付かずに亡龍城を発つ。一行の目的はあくまでもロムを討つことで、ロムの過去について調べるのはその後でもいい。


「まずはテンプルズの町に行く。話はそれからだよ」


 リンジーは言った。


「テンプルズの町の近くにあるのね」


「そ。ただ、どうやってあの大きな飛行挺を隠しているのかはわからない……乗ったことはあるのにね」


 オリヴィアが確認すると、リンジーは答えた。


「仕方ないよ。ロムは秘密主義だから」


 と、オリヴィアは言う。

 だが、すぐにオリヴィアは違和感を覚えた。ロムが秘密主義だと思わせるようなことがあったか? そもそも、あったとして記憶は信用できるか?


「にしても、アリリオのやつはこっちには来られないってさ。面白いことがマルクト区で起きたって。本当に無責任なヤツ!」


 リンジーは言った。

 彼女の言う事にはオリヴィアも同意だった。




 一行は亡龍城からアモンへ。そこから大陸鉄道でテンプルズの町へ向かう。レムリアでも同じ南部というだけあり、それほど時間はかからない。


「誰か南部に詳しい人っている?」


 道中、テンプルズ行きの列車の中でオリヴィアは尋ねる。すると、リンジーは悲しげな顔をしつつも名乗り出る。


「南部ならよく知ってるよ。ロムとは付き合いが長いからね」


「……うん」


 オリヴィアも複雑な気分だった。比べてはいけないとわかっていてもどうしても比べてしまう。

 リンジーはロムの目の届かないところでは、オリヴィアに優しかった。本当の姉のようで親友のようでもあった。忘れていたし記憶も正しいという確証はないが、リンジーは信頼できる人。


「オリヴィア。あたしにとってもロムは敵だから。してもらったことがあるにしても、敵に好かれてたかどうかはもう関係ないでしょ」


 オリヴィアの心境を察したリンジーが言う。


「あの人、本心を表に出さないからさ。実際にどう思ってたかは謎のままだよ」


 さらにリンジーは付け加えた。


「そっか。そうだよね。今更ロムに良く思われたって、わたしも複雑かも」


 と、オリヴィア。

 オリヴィアは目を伏せていたのだが。


「ねえねえ! 車内販売でアイス売ってるみたいだよ!」


 複雑な空気を醸し出す義理の姉妹たちに声をかけたのはヒルダ。彼女はオリヴィアの斜め前、晃真の前に座っていた。オリヴィアが目をやってみれば、車内販売のワゴンを押している乗務員が1人。どうやらテンプルズ行きの列車ではアイスクリームを売っているらしい。


「種類は?」


 と、オリヴィアは尋ねた。


「バニラと、イチゴと、チョコレートと、パイナップルと、オレンジと、クッキークリームと抹茶があるみたい」


 ヒルダは答えた。

 すると、今度はリンジーが。


「おすすめは?」


「わかんないや。でも晃真は抹茶にしたし、パスカルはパイナップルにしたよ」


 ヒルダは答えた。


「じゃ、わたしは抹茶にする」

「あたしはイチゴで」


 オリヴィアとリンジーはそれぞれ美味しそうだと思ったフレーバーを選んだ。

 すぐにアイスクリームは手渡され、それぞれ好みのアイスクリームを食べることとなる。


「選ばなかったけどさ、抹茶は春月とかのだよね? 美味しいの?」


 アイスクリームを食べながらリンジーは言った。


「美味しいのは確かだ。抹茶チョコとか抹茶パフェもあるぞ」


 と、晃真。


「へえ……今度は抹茶にしてみよっと」


 と言って、リンジーはイチゴ味のアイスクリームを口にする。


「あ、そうだ。あたし、協力者がいるんだよね。テンプルズで待っているはずなんだけど。あんたらもキルスティを待たせてたりすんの?」


 さらにリンジーは言う。

 その時、オリヴィアたちの空気が凍り付いた。リンジーも聞いてはいけないことを聞いたと悟る。

 が、パスカルが口を開き。


「カナリス・ルート構成員と戦って相討ちになってね……でも、ああするしかなかったと思う」


 パスカルは言った。

 キルスティはもういない。真相を知るのはパスカルと晃真とヒルダの3人。この3人も死の瞬間こそ見ていないが、崖から落ちたキルスティの末路は容易に想像できた。


「そっか……人は簡単に死ぬんだなあ。あの人の手にかかればだいたいの怪我人は死ななかったのに……」


 リンジーは静かな声で言った。


「私がもっと戦えていればよかったのだけど。ただ、捜索を頼んでも見つかっていなくて……今はこういう事を言っている場合じゃないのかな。妙な気配がしない?」


 と、パスカル。


「うん。できるだけ気配を殺そうとしていたけど、わかるよ。今隠れたみたいだけど、私からは逃げられないよ」


 ヒルダも言った。

 敵はこの列車に乗っている――



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