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1 カナリス・ルート

 画面に映ったのはタスファイ以外のカナリス・ルートの会員たち。左上に表示された金髪の男はカナリス・ルートのトップだ。彼以外にも、続々と会員たちが会議の場にやって来る――と言ってもオンラインだが。


 そして、全員がオンライン上に集まると。


「揃ったな?」


 トップの男は言った。


「全員いるわ。今回の話は何? 報告だけで終わること?」


 眼鏡をかけた女は言った。すると。


「それもあるが、今回は鮮血の夜明団との取引についてがメインだ。ついにカナリス・コーポレーションが、俺の会社が鮮血の夜明団と提携するチャンスを得た」


「それは本当か、リーダー。あの鮮血の夜明団は系列の武器会社としか取引をしねえと聞いたぞ」


 と、藍色の髪の筋骨隆々な男――昴は言った。椅子に足を組んで座る様子は会議そのものに乗り気ではないようだったが。


「ヨーランの功績だ。鮮血の夜明団と関係があったということだから、一任していたのだ。もう少し時間がかかるかと思っていたが――さすが鮮血の夜明団でホープと言われていただけあるな」


 カナリス・ルートのリーダーは言った。


「褒めることもない。カナリス・ルートにいるうえで、ぼくの役割を果たしたにすぎないだろう。取引の話し合いは今こちらで進めているところだ」


 と、ヨーランは言った。


「おい、ヨーラン。半分死んでるとはいえ、少しばっかし顔色が悪すぎるんじゃないか? 疲れたときの顔に近いぞ」


 そう言ったのはクラウディオ。飛行艇の中で指示を出していた彼も、カナリス・ルートの一員だったのだ。


「いつもこうだ。それより、鮮血の夜明団で気になるところがある。どうにもぼくにスパイをさせるつもりでいるらしい。こちらに情報を流されるとも知らずに」


 と、ヨーランは答えた。


「それは何だ? 場合によっては……鮮血の夜明団を消す対象に入れることになるが」


 カナリス・ルートのリーダーは言う。するとヨーランは。


「極秘でとある人を探しているとのことらしい。話によればその探し人は大悪党アンジェラ・ストラウスの忘れ形見だと。彼女を探し出して何をしたいのかは、知らない」


 真剣そうな顔でそう言った。

 すると反応したのはタスファイと眼鏡をかけた女、そしてリーダー。いずれもアンジェラ・ストラウスという名前に反応したのだった。


「どうする? 消すか?」


 ヨーランは尋ねた。


「いや、少し泳がせておく。だが……そうだな。監視役をつけようか。アポロ、頼めるか?」


「楽勝。その時が来れば、探している連中も忘れ形見も消してやる。それが俺の仕事じゃないか」


 アポロと呼ばれた赤毛の男はふっ、と笑って言った。


「任せたぞ、アポロ。それで、報告を聞こうか。そちらで変わったことは?」


 と、リーダー。すると今度は。


「カナリス・ルートを探っている者を見つけたので……俺が消しに行った。1人は殺したが、問題はそいつに仲間がいたことだ。名前はアナベル。糸使いだ」


 と、タスファイ。

 彼の口にした「アナベル」というワードに明らかに反応したヨーラン。それもそのはず、彼はアナベルをセラフの町まで連れて来た張本人なのだ。


「……ぼくは知っている。あの女は、本当にやりにくい。あの女の目的は知らないが、口ぶりからするにまともなことを考えてはいないだろう。そうでなかったとしても、まともな神経の持ち主でないことは確かだ」


 ヨーランは言った。


「おう、なるほど。そのマトモな神経してねえヤツを俺のところに引き寄せればいいじゃねえか。こちらから消さねえ限り、狙ってくる連中はすべて俺のところに来るんだしよ。今日も1人殺ったぜ?」


 ヨーランやタスファイの言うことを面倒くさそうに聞いていた昴が口を挟む。そうしながら、昴は血塗れの刀を鞘から抜いた。

 赤黒く染まった刀が部屋の照明を受けて怪しく輝く。それを見たヨーランは眉間にしわを寄せた。だが、ヨーランは少なくとも昴を疎んでいることはない。

 ヨーランは感情を抑えつけるようにして再び口を開く。


「なるほど。お前のところに不届き者が来たということか。だが、必ずしもそうなるとでも思ってるのか?」


「……あん? 俺に殺意でも向けてみるか? いいぜ、やってみろ。最高にゾクゾクするからな……!」


 冷静な口調のヨーランに対し、昴は言った。そんな様子を見て、「また始まったか」と言いたげな他のメンバーたちはそれぞれに違った反応を見せる。

 ため息をつく者、苦笑いをする者。その様子はそれぞれの性格を表しているようでもあった。メンバーたちの反応を見ながら、昴は渋々刀を鞘に納める。


 そんな中、今度はタスファイが。


「こちらから消しに行って、向こうが反撃するやり方では昴が対応できないだろう。今回はそういうケースだった」


 タスファイの発言を聞きながら、ヨーランも頷いていた。


「それもそうだな。で、消そうとした連中はどんなやつらだ?」


 と、昴。


「ダンピール2人に、吸血鬼の血を引く男1人。それから、雇われたと思われる女2人。驚くなよ、昴。吸血鬼の血を引く男は晃真。お前の弟だ」


 タスファイは言った。彼の言葉を聞き逃さなかった昴は口角を上げる。


「おう、最高じゃねえか。弟に狙われることがこうもゾクゾクするとはな……別に消しに行かずとも、晃真だけは俺のところに来てもいい。そうして、恨みをすべて俺にぶつけてくれればな……」


 ニヤニヤと笑う昴に対し、他メンバーは少し引くような反応を見せる。が、リーダーは。


「お前のところに来たらな。好きにやっていいが、死ぬなよ。いや、生きる優先度的には低いだろうが、失って厳しいことには変わりない」


 そう言った。


 そして、カナリス・ルート全員がオンラインで顔を合わせる話し合いが終わる。



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