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9 8月26日Ⅱ

 買い出しの帰りにつけられていたオリヴィアと晃真。

 2人のあとをつけ、ディレインでの拠点をあぶりだそうとしていたヴァレリアン。

 オリヴィア、晃真、ヴァレリアンの戦いが始まるのも秒読みなときに現れたジダン。


「間に合ったぜ、フレンド。どうやらこいつは俺たちの敵らしいな」


 ジダンはこの場に現れるなりヴァレリアンを敵であると断定した。あまりにも早急かもしれないが、彼には彼なりの思考回路があった。さらにジダンはイデアを展開し、ヴァレリアンと戦う意志を見せている。


「君は誰だ? 名簿には載っていない。あり得るなら僕が殺し損ねた人間かもしれないが、正直僕もあまり覚えていない。人間を殺した回数は他の支部長より少ない筈なんだが」


 ヴァレリアンは言った。


「それはどうでもいいことだな! いや、きな臭い気配がしたもんでね、ウチの支部長の後を追わせてもらったというわけだ!」


 ジダンは答えた。


「そうか、鮮血の夜明団なのはわかった。それで、構成員がなぜ僕に敵対する?」


「決まっている、お前がフレンド……晃真に敵対するからだ。見ていたぞ」


 と、ジダン。

 彼の一言がヴァレリアンの神経を逆撫でした。


「どういうことだ……お前はどこの所属だ――」

「答える意味はないぞ!」


 このとき、ジダンは自身の能力を発動した。

 ヴァレリアンが所属を尋ねたとき、すでに地面には紫色のペンキがまき散らされていた。ヴァレリアンを避けるように、オリヴィアと晃真がその範囲内に入るように。

 オリヴィア、晃真、ジダンは一瞬にしてその場から消えた。


「ああ……名簿から探すしかないかな?」




 ジダンはオリヴィアたちをあの場から逃がした。


 実はジダンは晃真たちの様子を少し前から見ていた。様子を見て推理し、2人の向かう拠点が外部の人間にばれてはならないと考えた。


 3人が移動したのはディレインのとあるホテルの一室。


「うまくいったか……ドラガノフ支部長にはばれていないか」


 ジダンは言う。


「だといいな。で、ジダン。念のため聞いておくが、これはどういう状況なんだ?」


「あの状況では言えなかったからな。ま、ドラガノフ支部長との戦いとお前たちの拠点の特定を回避するためにここに逃げた……撤退したってわけだ」


 晃真に聞かれるとジダンは包み隠さず答えた。


「俺達はこれから鮮血の夜明団ともやり合うかもしれないだろ? だから極力情報を与えないためってわけだな!」


「よく考えていたのね。ジダンのこと、ただの変人だと思っていたけど見直したかも」


 と、オリヴィア。

 彼女は少し笑っていたが、すぐにやるべきことを思い出す。


「パスカルに連絡しないと」


 オリヴィアは携帯端末を手に取り、パスカルに電話をかけようとした。だが、ここでジダンが口を挟む。


「盗聴されている可能性もあるぞ。電話よりメッセージの方がいいんじゃないか?」


「そうかも。じゃあ、わたしがパスカルに連絡するから晃真はノキアに連絡お願い」


 オリヴィアは言った。


「わかった。ノキアだけでいいんだな?」


 晃真は聞き返す。オリヴィアは少し黙り込んだ後にもう一言。


「キルスティにもお願い」


 オリヴィアがそう言うと晃真は頷き、キルスティとノキアにメッセージを送る。

 鮮血の夜明団に敵対者と思われる人がいること、セーフハウスの特定を防ぐためにある人の元に身を寄せていること、地下からともに本部を攻めることはできないこと。

 オリヴィアも晃真もそのことを伝えた。


「さて、色々と考え直さないとな。パスカルたちと考えていた作戦もパアだ」


 晃真は携帯端末をキャビネットに置くと言った。


「取引の日程はわかっているな?」


「8月27日だと聞いている。明日か」


 ジダンに聞かれると晃真は答えた。


「わかっているならよかった。その日、俺は適当な場所から……いや、直接本部に攻め込む。俺の能力を使ってな」


「あなたもやるんだね。パスカルたちとは連携して攻め込む?」


 オリヴィアが口を挟む。


「いや、それはしない。まずはランスの真意を確かめてからだ。話を戻すと、俺は本部の敷地内に移動ポイントを置いてきた。俺の能力を発動すれば移動ポイントにまで一瞬で行ける。移動してしまえばあとは簡単。内部から崩せるだろう」


 と言って、ジダンは鞄の中に入れていた見取り図を取り出した。

 これが鮮血の夜明団本部の地図。敷地面積はどの支部よりも広い。さらに本部にはメインの建物だけでなく独房がいくつもつくられた塔、カフェ、図書館、寮、倉庫など様々な施設があり、その端は崖に面した場所にあった。

 印がつけられていたのは倉庫の裏、本部の建物の裏、図書館付近の3か所だった。


「なあ、ジダン。この印はあんたの能力で行けるところでいいのか?」


 晃真は尋ねた。


「ああ、間違いないぞ! 解除しようにもできないように細工してきた、抜かりはない!」


「頼もしいな。このこともパスカルたちに伝えよう」


 と言って晃真は再び携帯端末を取り、別行動をする旨を送る。

 当初予定していたようには運んでいないが、わざわざメッセージをやりとりしてまで当初の作戦でいくことはないだろう。


 取引まで、あと1日。



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