表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/343

13 カナリス・ルートの会員候補

 ヴァリオ・セランネ。オリヴィアとリンジーの両方に因縁ある相手だ。

 ロムの手の者であるヴァリオがなぜここにいるのか、とリンジーは一瞬だけ考える。が、クラウディオがついさっき襲撃してきたことから、ヴァリオがここにいてもおかしくはない。


 そんな彼を前にしてオリヴィアは「もう惑わされない」と言い放つ。それを聞いたヴァリオは、癇に障るところがあったのか鉄パイプを握りしめてオリヴィアに突撃する。


「お前、あの餡子並みに甘い女に当てられたらしいな。ロムの下にいたときはそんなんじゃなかっただろ。それとも、お前の最愛の晃真がお前に何か変なことでもしたか?」


 影に防がれたその瞬間、ヴァリオは言った。


「黙れっ! パスカルを、晃真を悪く言うなっ!」


 激昂するオリヴィア。その瞬間、彼女は加減を忘れたのかこの空間いっぱいにイデアを展開。その物量をヴァリオにぶつけようと、影の刃をヴァリオに放った。


「オリヴィア! 冷静になりな……!」


 と、リンジー。

 だが、無理もない。この暁城塞に突入した時点でオリヴィアの精神は限界に近かった。そもそもロムに裏切られ――裏切りですらなく真実を知らされ、一度はアナベルや晃真の存在で回復するも、晃真が連れ去られてからオリヴィアはだいぶ参っているようだった。セラフ支部の者たちの対応もあるかもしれない。


「お前たちも全員殺す!クラウディオも、お前も、ロムも全員っ!」


 激昂したオリヴィアのイデアは確かにすさまじかった。だが、ヴァリオは鉄パイプの一閃ですべて薙ぎ払う。その鉄パイプは鉄パイプではない、イデアを無効化する物質で覆われていた。


「……凄いイデアだ」


 と、ヴァリオは一言。それでもオリヴィアは影を放つことをやめない。ヴァリオは迫りくる影の刃や影の手をすべて鉄パイプでかき消している。その技量はかなりのものだ。オリヴィアの後ろにいたリンジーもひしひしと感じていた。


「……こいつ、こんなに強かったっけ?」


 リンジーは呟いた。

 彼女の知るヴァリオはここまで強くない。急激な成長を遂げたか、あるいは力を隠していたか。

 そんなヴァリオに通用するとは限らないとわかっていながら、リンジーも参戦する。


 影の手がかき消された瞬間を狙ってリンジーは荊を伸ばした。刀を反すかのようにして荊は消されたが、リンジーはそれを狙ってヴァリオに突っ込む。からの蹴り。蹴りはヴァリオの頬をとらえ、ヴァリオはよろめいた。


「なんだ、通るじゃん」


 リンジーは呟いた。

 そんな声を聞き、ヴァリオはイデアを展開。彼の背に光の翼が現れる。その様子を見て、リンジーは瞬時に距離を取る。


「この……俺は新カナリス・ルート候補だ。派閥さえ問わなきゃ、もうカナリス・ルート入りしてんだよ!弱いわけがないだろ……!」


 ヴァリオは言った。


「へえ。オリヴィアとあたしがカナリス・ルートの半分近くを殺してるってわかってもそんなことを言う?」


 と、リンジー。

 それが合図であるかのように、オリヴィアは床を伝わせて影を伸ばす。ヴァリオの足元から攻撃を仕掛けた。ヴァリオは跳びあがり、羽がきらめく。羽がきらめいたその直後、放たれる虹色の破片。

 ヴァリオを相手取っていた2人はそれが危険な代物だと一瞬で悟る。


「なめないで」


 オリヴィアはそう言って影を盾のように展開。ほとんどの破片は消えるが、いくつかは影を侵食する。物量次第ではやられかねない。


 オリヴィアが防いだ後はリンジーが攻めに出る。厄介なイデア能力ならば封じてしまえばいい、と荊を伸ばす。


「またそれか。いい加減飽きたぞ」


 と、ヴァリオ。

 荊が消える。否、切られた。その隙を狙うように放たれる、圧倒的物量の破片。それを防ごうと影を展開するオリヴィア。まるで千日手。

 それにいち早く気づいたのはヴァリオ。光の翼を展開したまま影をかき消し、オリヴィアへと肉薄。


「死ねよ、裏切り者」


 といってゼロ距離から光の破片をオリヴィアに向けて放つ。ヴァリオの後ろからリンジーが荊を伸ばすも間に合わない。光の破片はオリヴィアへと降り注ぎ、彼女の肌を切り裂いてゆく――


「オリヴィア!」


 叫ぶリンジー。


「騒ぐなよ。こいつが死ねば相手してやるから、な?」


 と、ヴァリオ。そう言いながら、リンジーの伸ばした荊を片腕ではじいていた。

 どうやらヴァリオは力を隠していただけで、相当な実力者らしい。そんな彼がロムの配下に甘んじていたわけだ。気づけないのも無理はない。


 そして、オリヴィア。

 光の破片の物量に押され、倒れていた。全身の傷はそれなりに深い。キルスティのいない今、オリヴィアの傷は命にかかわるかもしれない。

 彼女の姿が見えたとき、リンジーは底の見えない怒りにかられることとなる。ヴァリオはオリヴィアを傷つけた。


「死なせてたまるか。どんな方法を使っても、お前を殺す!」


 と、リンジー。

 荊を伸ばしたところでヴァリオには届かない。ならば、リンジー自ら突撃するしかない。

 リンジーは視線を向けないヴァリオに肉薄し、蹴りを入れる。


「今度の相手はこっちだよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ