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11 エミーリアなら大丈夫

 ゼクスに3A-066を任せ、オリヴィアたちは先に進む。階層の移動はまだないが、この城塞はやはり迷宮。少し進めば迷い始めていることにリンジーが気付く。


「ここに潜んでる連中も馬鹿じゃない。ううん、あの人に至ってはは頭も回るんだよね」


 リンジーは歩きながら言った。

 一行はリンジーがそう言っても警戒を怠らない。この迷宮だ。いつ誰が襲ってきてもおかしくない。


 と、ここでオリヴィアが足を止め、リンジーも眉根を寄せた。


「上だよ!」


 リンジーは叫ぶ。


 次の瞬間、天井に穴が空いた。まるで何かに切られたように――実際に天井は斬られた。赤く、熱を持ったナイフに。


「クラウディオ……!?」


 と、リンジーは声を漏らした。

 それと同時に天井の穴から現れるクラウディオ。運の悪いことに、一行はエミーリアとそれ以外とで分断されることとなる。クラウディオはエミーリアの前に降りてきたのだ。


「うはははは! 久し振りでもねーな、オリヴィアよお!」


 砂ぼこりに紛れて響く声。その声に真っ先に反応したのはエミーリア。イデアの展開なしに踏み込み、クラウディオに一撃を入れた。


「ぐおっ……」


 エミーリアの一撃に吹っ飛ぶクラウディオ。そんなときエミーリアは自身の位置に気付く。

 分断された。


「オリヴィア! キルスティ! リンジー! 先に行きな! こいつは私が相手するからさぁ!」


 エミーリアはすぐに現状を把握してそう言った。オリヴィアとリンジーは因縁ある相手だと気付くが――


「今は晃真の奪還が先だ。それにエミーリアは弱くねえ」


 と、キルスティ。

 そう言われ、オリヴィアとリンジーは一瞬黙った。が、オリヴィアは当初の目的を思い出す。


「そうだよね。クラウディオなんてここにいるって聞いてなかったからね」


 オリヴィアは納得した様子。リンジーもどうにか納得している。


「先に進もう。エミーリアがどれくらい強いかわからないけど」


 と、オリヴィアは再び言った。

 一行はクラウディオをエミーリアに任せて先へ。特にキルスティには「エミーリアなら大丈夫」と思えるものがあった。


 一方で、エミーリア。瓦礫に叩きつけられたクラウディオをあえて追撃せず、見下ろした。


「イデアなしでこれか。お前、吸血鬼か? あっはっは」


 瓦礫の上でクラウディオは笑う。が、それだけでなくイデアまで展開していた。その姿はいつでも反撃できると脅しているかのよう。

 とはいえ、クラウディオにもダメージは入っているのか、かなり警戒している。下手に動けば今より強烈な一撃が来るかもしれない。エミーリアはまだイデアを展開すらしていない。


「答える必要があるのかい? 私としちゃあ、どうでもいいことだがね」


 と、エミーリア。


「ま、いいか。得体の知れねえ相手とやりあうのも悪くねえ」


 先に動いたのはクラウディオ。

 立ち上がりながら紅のナイフをエミーリアに向けて飛ばした。対するエミーリアはその着弾地点を避ける。

 着弾地点は高温に熱されたかのように溶けた跡がみられ、一部はガラス化している。


「へへ……それで避けたつもりかァ!?」

「だろうねえ!」


 クラウディオはエミーリアの前にナイフが着弾するようにと、残りのナイフの軌道を変えた。


 するとエミーリアは右手にイデアを展開。異形の腕はナイフをすべてかき消した。からの、エミーリアの突撃。踏み込んで右ストレートを放つ。


「ぐっ……」


 衝撃に顔をしかめるクラウディオ。その一撃でクラウディオは先ほどと同じように吹っ飛ばされる。が、クラウディオは吹っ飛ばされながら両手に紅のナイフを持った。

 そのままクラウディオは受け身を取り、転がって立ち上がったかと思えば今度はクラウディオ自身が突っ込む。斬り込む。


「ふんっ!」


 クラウディオの一閃を、エミーリアが受け止めた。クラウディオはつばぜり合いを嫌ってかナイフを消す。だが、それが仇となった。

 クラウディオにできた丸腰の一瞬。すなわち隙。エミーリアは見逃さず、フェイント。からの右ストレート。


 クラウディオは今度こそ吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。


「クラウディオ・プッチーニ。あんたの話なら聞いているさ」


 エミーリアは言った。

 クラウディオから見てさえ、エミーリアは強者に見えた。勝てない、とクラウディオ自身に分からせるような覇気が、エミーリアにはあった。


「クソ……こんなの……俺の考えていたプランじゃねえ!」


 立ち上がりながらクラウディオは言う。


「俺が戦いの主導権を握れなきゃあ、面白くねえだろうが……クソが……」


 このときのクラウディオは、既にイデアを再展開していた。ひとつこれまでと違うところを挙げるならば、クラウディオが握っていたのは青白い剣。クラウディオ自身は熱と圧を感じさせるものを放っていた。


「やんぞ、ロム。下ろすぜ」


 と、クラウディオは言う。この瞬間にクラウディオの様子が変わる。


「ああ、そうかい。どうやら私が相手したのは間違いだったわけかい」


 エミーリアもそう言った。



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