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10 水使いの襲撃

明けましておめでとうございます。今年初投稿です。

「調査地点は採掘所近く。それから、経営者なんかが泊まるホテル付近」


 オリヴィアとアナベルは指示された通りに、調査に出ていた。


 ここはセラフの町。その中でも採掘場にほど近い場所。この辺りは労働者たちで賑わっている。

 路地で張り込んで、イデア使いを探す。キルスティたちは何も言っていなかったが、情報をできるだけ掴ませずにいられることからイデア使いの可能性が高いと見ていたのだ。


「……アナベル、どう?」


 オリヴィアは少し離れた場所にいるアナベルに、電話越しに話しかけた。


「イデア使いならそれらしき気配があったねえ。ただ、問題は――いつ誰が消しに来るかわからないってこと」


 と、アナベルは答える。

 カナリス・ルートを獲物として見ている彼女だが、警戒していることには変わりない。だが、おそらく彼女は『逃げられる』ことを警戒しているのだろう。


「ここから先は採掘所とほとんど変わらないエリアになりそうだけど、また進む?」


 オリヴィアは尋ねてみた。


「進むかなあ。消しに来たやつは、殺せばいい。情報を得るのが大事だけど、まあ所持品からたどれる部分もあるわけだし」


 互いの意見は一致した。

 オリヴィアとアナベルは路地を出て、採掘所に近づいた。


 そこはホテル街の先。

 労働者たちの住居や商店、事務所が点々としている。それなりの活気はあるが、中には路上で生活しているように見える者もいる。


「さて、どうしようか。経営者、管理人にはアポも取れていない。私たちが男だったら労働者にまぎれて探ることもできたわけだが」


 と、アナベルは言った。


「……え? 直接この場所を襲撃しちゃだめなの? テロリストだと偽ってさ。そうしたら、関係者が何か行動に出てくるんだと思うけど。だめ?」


 そう言ってオリヴィアはアナベルの瞳を見つめた。


「あー……私も考えたけど、ねえ」


 アナベルは珍しく乗り気ではなかった。どうやら彼女にも危険な場所へ安易に踏み込まないだけの思慮深さはあったらしい。


「そうしたら、春月に行きつくと思ったからね。等価交換に反するじゃないか――」


 そう言いながら、アナベルは突然飛んできた攻撃に反応した。

 手の甲で水の塊をはじく。


「その気配は隠せない。近づくだけで怪しんで攻撃しようとする。そういう人物だということはよーく、よーくわかっているよ☆」


 アナベルは言った。


「気づかれたか。さすが、元仕事仲間というだけある」


 オリヴィアとアナベルの耳に入ったのは、男の声。彼の声を聞いたアナベルは口角を上げる。


「ふふ……最初に君を看取ることになるとは思わなかったよ。タスファイ。私と戦って、輪切りにされて死ぬのかな? それとも首がポロッ、といっちゃう?」


「悪い冗談はやめろ、アナベル。やりづらい能力ではあるが、対処法くらいこちらにもある」


 そう言って民家の屋上から飛び降りると、水のナイフをその手に握る。藍色の髪に褐色肌の男――タスファイはアナベルの展開していたイデアの糸を切り裂いて、首を狙った。


「だったら、こっちの対処法は?」


 タスファイがアナベルばかりに気を取られていたところに、オリヴィアが乱入。彼女を中心に広がる影がタスファイの左脚を掴み、地面に叩きつける。さらにオリヴィアはタスファイの四肢を影で縛り、拳銃を向けた。


「とりあえず、聞いておくね。あなたは、わたしたちを消しに来たの?」


 オリヴィアは銃口を向けたままそう言った。


「答えないと、あなたの顔面をぶち抜くから」


「嬢ちゃんよ……それは俺の能力を少しでも見てから聞くことだぜ。そんなものは尋問にすらなっていない」


 タスファイがそう言った瞬間、オリヴィアは引き金を引いた。今の彼女に慈悲など欠片もない。そのまま銃弾がタスファイの眉間を貫いたかと思えば――銃弾は水の壁にはじかれた。


「アナベルもよく知っているだろうが、俺の能力は水を操る能力。そんな武器ごときに負けるような代物ではないな」


 タスファイはそう言って笑う。


「わたしには捕まったくせに。まあいいや、こんなもの使わなくてもあなたを半殺しにして情報を吐かせてやる。襲撃したのにも何かしら理由があるんでしょ?」


 オリヴィアは笑みを浮かべながら拳銃を投げ捨てた。


「ねえ、答えてよ。答えないと、殺すよ」


「殺すならやってみろ。俺の役目の一つは死ぬことだ」


 タスファイの言葉が合図となった。

 オリヴィアは拘束したタスファイを、民家の壁に叩きつけた。すさまじい力によって、民家は破壊されるが、オリヴィアはそんなことなど気にしない。一度タスファイを手放すと、今度は瓦礫の中から彼を拾い上げる。だが。


「気づけよ。拘束されようが能力は使えるって、何遍言えばわかるんだ?」


 タスファイがそう言った瞬間。オリヴィアは頭上の気配に気づいた。

 水の槍。それはまるでつららのよう。タスファイが指をぴくりと動かした瞬間。水の槍はオリヴィアに降りかかる。

 タスファイから影を離す。降りかかる水の槍を防ぐように、イデアを再展開する。


「ちっ……アナベル! あなたは採掘所に!」


 オリヴィアは言った。


「……仕方ないか。そうさせてもらうよ。私に、追いついてね♡」


 そう言ってアナベルは採掘所の方へと向かった



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