表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/343

17 ミランの尋問

 次のページはエミルの尋問から引き出した情報が記されていた。が、アルマンドのところと違うのは、血痕が一切ない。血のついた指で触れた跡もない。


「アルマンドとは様子が違いますね。こちらは血がほとんどついていませんが」


 と、ソニア。


「子供は傷つけないって決めたからね。少しやり方を変えたんだよね。あたしたちで決めたことだし、拷問はまずいでしょ」


 リンジーは言った。

 拷問をしていないと言えば嘘になるが、直接エミルが痛がることはしていない。


「あなた方にもそういった気持ちが残っていたのですね」


「人を誰だと思ってるの……と言いたいところだけど、アルマンドのことはね……」


 そうして、ここにいる面々がノートを覗きこむ。


【尋問、エミル。

 エセラ村が滅びたときにしていたこと。

 覚えていない。


 村を滅ぼした人。

 カナリス・ルート。人影を見た。ロムとクラウディオとリンジーは確実。そもそもリンジー本人が知っている。他には昴、タスファイ、アポロ、モーゼス。


 イデア使いが憎い。


 この(セラフ)にタスファイがいると知ってアルマンドに協力した。目標はタスファイ】


「リンジー……あなたとロムは村をひとつ滅ぼしたってこと……?」


 オリヴィアはノートを読み進めると言った。


「そういうことになるね。確かにあたしはとんでもないことをしたけど……だからこそ償わなくてはと思う。それに、村を滅ぼされたら復讐くらいしたくなるって」


 と、リンジー。


「……こういうことだよ。あたしを糾弾するならすればいい。確かにカナリス・ルートとは手を切ったけど、この連続殺人事件の犯人の動機にはあたしも関わってる」


「貴女は関係ないでしょう? 償おうともしているし、何より私が助けた子の中にエセラ村出身の子もいてね。その子、水色の髪のお姉さんが逃がしてくれたと言ったけど、貴女のことじゃないの?」


 そう言ったのはパスカル。


「想像に任せるよ。ひとつ言っておくのなら、この連続殺人事件、カナリス・ルートにも対処する必要が出てきたってこと」


 と、リンジー。


「やっぱり、あのメモリースティックも……」


 オリヴィアは言った。

 これでつながるべきところはつながった。なにより、リンジーたちの手でセラフ支部の誰も知らないうちに犯人と思われる人は捕らえられたはずだ。


「そういうことになります。ただ、困りましたね。カナリス・ルートと敵対することは鮮血の夜明団で決めていましたが、まさかこんなに早く相手取ることになるなんて」


 と、ソニア。


「その件に関しては問題ないねえ。私たちがあんたらへの被害は極力減らす」


「うん。直接戦うのは、わたしたちだけでいい」


 エミーリアとオリヴィアが口々に言った。


 ここでの関心は、連続殺人事件からカナリス・ルートへと移っていた。が、ここにいた面々は勘違いしていた。




 場所はリンジーたちのアジトに移る。鍵のついた部屋にはアルマンドとエミル、そして2人を見張るミリアムの姿もあった。


「恨みがあるのなら手当たり次第やらなくてもいいだろうに」


 と、ミリアムは呟いた。

 2人を拷問もとい尋問していたミリアムは、話した内容からその事情を理解していた。仕方ないというところもあるようだが、イデア使いとはいえ一般人を殺すべきではない。


「本気で言っているのか? カナリス・ルートは異常だ。僕たちで調べあげるなんて無理だ。こういうことでもしない限りはね……でも僕は諦めていないよ」


 と、アルマンド。


「どういうことだ?」


「いつ僕が、この事件を2人で起こしたと言ったかな?」


 ミリアムが尋ねればアルマンドは答える。そのときのアルマンドは、ミリアムが拷問したときの彼とは全く違う様子だった。これまでの拷問で、彼は確かに本当のことを言っていた。が、それがすべてではない。アルマンドは肝心なことを言わなかったのだ。それはエミルも同じ。


「詰めが甘かったね」


 拘束されたアルマンドは言う。


「そうか……お前を拷問すれば、何か吐くのか? 腕だけでなく、お前の胴体の肉を削ぎ落とせばいいのか?」


 と言って、ミリアムは剣を握る。まだ抜いてはいない。抜いてはいないが、ミリアムはこれまでにない狂気を放ち始めた。


「細身だからすぐ肋に達してくれるだろうな? いや、背骨もいいだろう」


 全身を舐め回すように見るミリアム。今の彼女の人格はミリアムのものではない。かつてクロル家の親衛隊として戦い、何人もの肉を削いで拷問したときの人格が出ている。ミラン・クロル。それがかの人格だ。


「冗談だろう……? いや、生きてはいられるんだな? 僕はまだ……」


「手が滑れば命の保証はできんな」


 いい放つミラン。

 彼女は時折、狂気じみた執行人のような表情を見せる。返答を誤れば、アルマンドを待っているのは痛み。


「忘れるなよ。お前の命は私が握っている。お前の協力者は、あと何人いる?」


 ミランは剣を抜いた。

 刀身は証明の光を受けてぎらぎらと輝いており、命を切り落とす色をしている。だが、本当のアルマンドは怯まない。


「誰がそんなことを話すとでも?」


 と、アルマンド。

 次の瞬間、アルマンドの肉が削ぎ落とされた。


「これでも言わないか? 私は少し……達しそうなのだが……ッ!」


 そんなミランを前にしてもアルマンドは真実を語らない。ミランに肉を削がれ、全身が血まみれになったそのとき、アルマンドは口を開く。


「自分で考えるといい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ