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8 青色の鉱石の町

 道路脇には青色の砂が積もっている。砂漠の砂とは一線を画すようなものだ。


 ここはセラフの町。太古の昔に隕石が衝突した場所――セラフクレーターに面した町。

 エネルギーとして用いられる青色の鉱石がとれるこの場所は、雰囲気からして異様だった。


「……ここがそのカフェだ」


 路地裏、とまではいかないが、人通りのほとんどない通りでオリヴィアたちはおろされた。通りにあるカフェは客が少ないようだが。


「うん、ありがとう」


 アナベルはにこりと微笑んだ。腹の底が読めない彼女だが、今は素直に感謝しているようだ。


「ああ。それでは、僕は採掘所に向かう。これからまた会うかどうかはわからないが」


 ヨーランは車を発進させ、用事があるという採掘所へと向かった。


「私たちはそっちに入ろうか」


 と、アナベル。

 オリヴィアも頷き、2人はカフェに入った。


「いらっしゃいませー」


 カフェに入ると銀髪のけだるげな女が出迎えた。営業スマイルの欠片もないその態度からして、アナベルはその正体を怪しんだ。


「……何か事情でもあるのかな?」


 アナベルはオリヴィアに耳打ちする。が、オリヴィアはそれが何のことなのかもわからなかった。


「お二人ならできればカウンターにして頂きたいです。テーブルが少ないので」


 店員は言った。


「はいはい、それじゃあそうしよう。それとね……君、何の事情がある?」


 アナベルは店員に近寄り、好奇の目線を向けた。が、彼女はそれと同時に「答えなければ殺す」という、露わにすれば脅しになるような感情を小出しにしていた。


「……エミーリア。これは言って良いことか?」


 店員は呟いた。すると、カウンターの向こう側で菓子をつくっていたふくよかな女が振り向いて。


「私らの取り決めだろ、キルスティ。条件付きで話していいさ」


 エミーリアと言われた女は言った。


「わかった……というわけだ。話してほしければそれ相応の対価を要求する」


「ふうん……面白いね」


 アナベルは不敵に笑う。どのような要求でも来い、とでも言いたげだ。


「私たちの駒になれ。とある武器商人の暗殺のための」


 キルスティは言った。このカフェで働いている2人の要求はこれだった。

 彼女たちの要求を聞いたアナベルは動揺することもない。


「武器商人……なるほどねえ。君たちは武器商人を殺したい、と。恨みでもあったりするのかな? いや、無茶を言われるのは困るからよそうか」


 と、アナベル。

 緊張した空気の中で、彼女だけが笑っている。それだけの精神の強さと、ここで「殺されない」という絶対の自信があるからできることだろう。


「……恨みか。それはいずれわかることだろう? 協力しなければ、今すぐお前たちをここで殺す」


 キルスティはそう言った。ここで能力を使う、といった真似はしないが――その殺気は本物だ。


「わかったわかった。その詳細は何かな? 武器商人はどこにいるのかな?」


 と、アナベルは尋ねる。その声はどこか挑発的だったが。


「そいつらはどこにでもいると言われている。大都会クロックワイズの町にいると言われれば、今度は東の都の春月にも表れる。神出鬼没なのか、複数いるのか。尻尾を掴めない死の商人だよ。その名前は、カナリス・ルート」


 答えたのはエミーリア。


「なに、情報もないことに巻き込んで使いつぶすほど私たちは悪徳じゃないんでね」


 そう言って、エミーリアは笑う。


「……あのさあ、どうして武器商人に復讐したい人がカフェで働いてたりするの。つながりが見えないんだけど」


 オリヴィアが口を挟む。


「この地にもその武器商人がいるから。わかっていることはとにかく顔がいい男ってだけなんだけど」


 キルスティは答えた。


「……だから協力して。そうでなければ、お前たちの首を飛ばす」


「はいはい。あなたたちがアナベルの首を飛ばせるかどうかはわからないけど」


 少しでも間違いがあれば大惨事になりかねない空気の中。オリヴィアたちとキルスティたちは手を組むことが決まる。


「この町には採掘所がある。そう、青色の鉱石を採掘するところがね。あれ、武器にも使われるわけだから……死の商人どもが来てもおかしくないわけ。それに、決定的な情報が入ったわけだから」


 と、キルスティは言った。




 セラフの町の北部、セラフクレーターに面した採掘所。

 そこには採掘所で働く労働者たちがいた。今日も相変わらず青色の鉱石が掘り出され、レムリア大陸の各地に向けて出荷される。


 その採掘所近くの建物の中。藍色の髪と褐色肌が特徴的な男が電話越しに話をしていた。


「……掘り出される鉱石の質に変化はない。が、長いこと掘り出されているわけだ。いつか枯渇するだろうな」


 彼は言った。


『そうか。こちらもスラニアのふもとの工場を見てきたが、何も変わったことはなかった。だが、気を付けろ。そういうときに敵対勢力は寝首を掻きに来るものだ』


「大丈夫だろう。俺達には、最強の盾がいる。我々に牙をむく連中はおのずとそちらに向かう。対策をしていなければな」


 褐色肌の男はそう言って水を口に含む。


『無意識のうちに対策してこられた方が厄介だ。もし何かあれば、手を貸そう。偶然セラフ近くにいるんだ』



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