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18 空間への不正アクセス

 一行は町中を行く。不思議なことに、昼間に感じていたねっとりとした視線はなくなった。加えて町中――路地には暗殺者も潜んでいない。何もないということ自体が違和感に直結していた。


 ――本当にどういうこと? 50人の暗殺者がいたというのにこのありさま。罠だよね……?


 リンジーは進みながら暗殺者の気配を探る。やはりおかしい。夜になったということでスナイパーが銃を撃とうとしなくなることはまだわかる。が、問題は町に潜んだ暗殺者だ。夜闇にまぎれて3人の首筋を掻き切ることは、昼間に比べるとより容易になるはずだ。


「おかしい……暗殺者にとって、こういうところは潜みやすい場所だろう」


 そう言ったのはミリアム。彼女もまた神経を研ぎ澄ましていた。だが、そんな彼女は目の端で暗殺者をとらえる。やっと1人目――フードを被った暗殺者は拳銃をリンジーに向けた。


「危ない!」


 ミリアムはその身を翻し、剣を抜き。その剣で拳銃の銃身を両断する。銃弾は撃たれない。狙われていたことに気づいたリンジーもイデアを展開したが。


「大丈夫だっ!」


 ミリアムの刃は暗殺者の胸を抉り――服も破れ、皮膚から露出した肋骨までも見えている。その様子にミリアムは狂気的な笑みを浮かべ、今度は突き。心臓を一突きにした。からの、一閃。これで確実に暗殺者は絶命した。


「それなりの筋肉……これなら削ぎ甲斐があったものだ。骨も脆そうではない」


 と、ミリアム。


「ミリアム! さすがだよね、本当に一瞬で仕留めるんだから」


 そう言ったのはリンジー。さきほど彼女が展開したイデアはすでに消えている。


「……本当は一撃でいくつもりだったがな。うっかり胴体を狙ってしまった」


 ミリアムは言った。


「あんた、ストイックすぎない? 撃退できたんだからいいでしょ。先に進むよ」


 と、リンジー。

 ミリアムは彼女の圧に押され、3人で目的地へと向かう。


 目的地である立ち入り禁止区域付近に向かうまでの間、一行は同じように暗殺者を撃退した。だが、それでも少ない。一行を襲った暗殺者は4人、スナイパーによる狙撃はなし。命を奪いに来ているのならばこの数は少なすぎる。が、一行はここまで来てしまった。


 立ち入り禁止区域の周辺にはゲートから溢れ出た金色のガスが充満している。このガスはイデア能力覚醒の鍵となるものだ。拘束したクローン兵S-006はおそらくこのガスを吸ったのだろう。


「ガスを吸った人でイデア能力に覚醒できなかったらどうなると思う?」


 金色のガスを見たリンジーは言った。


「簡単だ。死ぬ、だろう?」


「そうだね。でも、どうやって死ぬかどうかは人それぞれ。S-006と一緒にいたクローン兵を殺したって話だったけど……私たちが殺していなくても彼らは死んでるよ」


 ミリアムが答えるとリンジーは言った。


「本来、イデア能力って覚醒しにくいんだよね。あたしたちは薬とか血筋で発現していることもあるからわかりにくいけど……」


「そうか……いや、いいんだ。近くに誰もいないか?」


 と、ミリアム。


「いないね。それじゃ、始めよっか。これからゲートを通ってリュカの空間に入る。準備できた?」


 リンジーはすでにイデアを展開した状態で言った。


「大丈夫だ」

「いつでもいけるよ」


 ミリアムとファビオは同時に言った。

 リンジーはイデアをゲートに向けて伸ばし、その中の空間を探る。あらゆる世界線、異空間――その中から目的の空間を探し出す。


 ――ここだ。ここがリュカ・マルローの空間だ。


「手を握って! 行くよ!」


 と、リンジー。ミリアムとファビオはその手を握った。

 荊は縮み、3人はゲートへと引き寄せられる。荊の先端はすでにゲートから異空間――目的地へとたどり着いている。3人はゲートへと入り込んだ。


 ――揺さぶられるって感じじゃない。なんかもっと、あたしの存在が危うくなるような。アナベルって人も同じ経験をしたのかな。


 全身が揺さぶられる。意識も朦朧とする中、リンジーはイデアの展開だけは怠らなかった。このイデアが消えてしまえば、3人はどこの世界線ともわからない場所に放り出される。そうなった場合、元の場所に戻ることも3人が再会することも絶望的だ。


 揺さぶられる感覚は薄れゆく。と同時に、リンジーの瞳に映る景色も混沌としたものから秩序を持つものへと変わってゆく。

 その空間は、黒と蛍光色が基調となった無機質な空間だった。広さは知れず、不規則な壁が空間を仕切っているかのようだ。


「着いた……」


 リンジーは声を漏らす。以前探ったときと同じものがこの空間から感じられる。感じられるものというのは、イデア使い特有の気配、この空間はイデアによって形作られたものだ。

 目的の空間にたどり着けたのは良いが、3人はまだ立つこともおぼつかない。全身にかかる重力の違いその他により、乗り物酔いにも近い状態となったのだ。


 ――今リュカが現れたら、非常にまずい。この空間についても解らない状態で、どうやって戦うって言うんだ?


 ミリアムはこれからのことを考えながら空間を見渡した。ここからどうやってリュカを倒すのか――?



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