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14 刺客襲来

 アニムスの町は安全地帯などではなくなった。その証拠にミリアムが暗殺者に狙われ、アナベルはたった今撃たれた。

 アナベルはうずくまり、彼女の鳩尾(みぞおち)から血がだらだらと流れ出る。幾多の人を殺し、何人もの殺し屋や敵から逃げ延びた彼女がいとも簡単に命の危機に追い込まれている。


「屋内に入ろう。屋内なら狙われにくいはずだよ」


 判断を下したのはファビオ。アナベルを抱えて近くの雑貨屋に入り、リンジーとミリアムもそれに続いた。屋内ならば安全だという判断だ。だが、そこにも暗殺者はいた。雑貨屋の買い物客を装った女暗殺者が1人。ファビオの背後を突くように襲いかかった。が、女暗殺者の刃がファビオに届くことはなく。


「捕まえた。本当に油断できないんだから」


 荊が女暗殺者の四肢を拘束した。リンジーだ。彼女の後ろには剣を抜こうとしていたミリアムも控えている。


「離せ! このままでは銃殺されてしまう!」


 一瞬にして己が劣勢に追い込まれた女暗殺者は言う。


「離せと言われて従うようなヘタレじゃないんでね。いや……そうだね。リュカ・マルローの居場所を教えてくれる? そうしたら解放してあげるから」


 と、リンジー。これはリュカの居場所がばれることが何につながるのか分かって言ったこと。リンジーは不敵な表情を崩さない。


「……知らない。リュカ・マルローって誰だ?」


 と、女暗殺者は言った。

 ここでリンジーはリュカが何者として通っていたのかを思い出す。が、次に口を開いたのはミリアムだった。


「パメラ・ド・ブロイ。彼女はかなりのロマンチストだと聞くが」


「それは合理主義の賜物にすぎないね。パメラ様は……ハッ!」


 女暗殺者の顔色が変わる。ミリアムが女暗殺者をはめたのだ。が、女暗殺者もそれだけで引くことはなく。


「情報は提供した。だから解放しろ」


 女暗殺者はそう言った。


「足りない。パメラの居場所を教えてくれなきゃ。あんた、どこから来た? あんたの指揮官もそこにいるんでしょ?」


「それを知ったところで? パメラ様の拠点なんてないから。決まった拠点を持たずにレムリアを放浪するのがパメラ・ド・ブロイ様。居場所の特定なんてできふわけないから!」


 と、女暗殺者。

 彼女の物言いに苛立ちを覚えたミリアムはリンジーの前に出るとイデアを展開して女暗殺者を縦に両断した。


「フフ……量産型の兵士も背骨は綺麗だな……もっと削いでいいか?」


 明らかにこれまでと違う様子のミリアム。どちらかというとかつてのクロル家次男といわれていたミラン・クロルの顔をしている。そこには気高さと残虐さといくらかの狂気があったが――

 直後、ミリアムは表情を変える。転がった遺体と被った血から何が起きたのかを察した。


「すまない、リンジー。うっかり殺してしまった」


 と、ミリアム。今の彼女に先ほどのようなナイフのような狂気はない。


「ミリアム……あんた」


「私がしたことだ。責任は私が取らなくてはならない」


 ミリアムは言った。


「そういうことはいーから。問題はどうやって立ち入り禁止区域に行くか。あれであたしたちが狙われてるってこと、わかったよね?」


 と、リンジー。

 彼女は気にしていたとしても、それよりこれからの行動が大切なように見えた。


「それでも生かそうとした人間を殺したことは同じ。私は……」


「気にしないで。これからのことを考えるのが先でしょ。誰が暗殺者かもわからない中、あたしたちはどうすんの?」


「それは……」


 返答に困るミリアム。

 とはいえ、暗殺者はミリアムとリンジーの倒せる相手であることは確認できた。スナイパーさえいなければ強行突破も可能。


 と、ここに新たなる来客があった。来客は夏であるというのに黒いパーカーを着てフードも被っていた。当然ながらその人の顔は見えない。だが、身長は180センチをこえているだろう。さらにそのシルエットから新たな客は恐らく男。彼は音を立てることなくミリアムに接近して耳打ちした。


「……本当なのか?」

「小声で話せ」


 冷たく、だが優しさも含んだ男の声だ。


「嘘をつけば殺されるんだ。それなら信じるか?」


 フードの男は言った。


「素性の知れん人間からの情報は特に精査しなくてはならん。例えお前が正しい情報を持ってきたとしてもな」


 と、ミリアムは小声で言った。


「そうか。疑われることには慣れている」


 フードの男はその言葉と氷の破片を残して店を後にした。

 ミリアムがその氷に触れても氷は解けもせず、彼女に凍傷を負わせることもない。氷はただ存在するだけで――何かを伝えているるようでもあった。


 ――まさか、あのフードの男は昨日殺し損ねたクローン兵か……?


 ミリアムはしばらく立ちつくしていたが、リンジーの一言で我に返る。


「あんた、どうしたの? 変な男に声かけられてから様子がおかしかったけど」


 と、リンジー。


「少々気になることがあってな。私達に有用な情報だが、正しいのかもわからない。素性の知れん相手に言われたのだぞ?」


 ミリアムは言った。


「あー、とにかく言ってみなよ」


「この町にいる暗殺者はスナイパーを含めて50人いる」


 と、ミリアム。これが、ミリアムがフードの男に告げられたことだった。



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