表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/343

13 放たれていた暗殺者たち

 攻める方法は突き止めた。あとは実行に移すだけだ。

 リンジーたちは疲れを癒し、2日後に再び立ち入り禁止区域へ向かおうとしていた。そんなときに一行の前に現れたのはアナベル。彼女は返り血を浴びており、服や体が汚れている


「……どうした、アナベル。こうやって現れたということは何かあったのか?」


 尋ねたのはミリアム。この中では最もミリアムをよく知っている。


「始末しようとしてきた連中を殺した。いやあ、強かったよ。悲鳴を聞いても興奮はしなかったけどね。パスカルかああいう悲鳴を上げるはずがない」


 顔色を一切変えず、だがつまらなそうな口調でアナベルは言う。彼女の口振りからミリアムは何があったのかを察した。


「なるほど、クローン兵か。私たちも彼らから襲撃を受けたのだが……」


 と、ミリアム。


「待って、ミリアム。あんたがアナベルって言っている人だけどさあ……ノイズまみれで見えないというか……言ってることもわからないし」


 ここでリンジーが口を挟む。


「本気で言っているのかい?」


 と、ファビオ。


「もちろん。いることと話してるってことはわかる。言っていることとアナベルとやらの姿がわかんないわけ」


 リンジーが答えるとファビオは再び口を開き。


「リンジーは君の姿も言葉も認識できない。恐らく君もそうだ。君は平行世界のリンジーじゃないのかい?」


 と、アナベルに告げた。


「よくわかったね。それくらいは4年前から知ってるよ」


「やはりか。リンジー、彼女は平行世界の君らしい。それでいて僕たちの知らないことを知っているかもしれない。取り次いであげるよ」


 と、ファビオ。


「あー、いいけどさ。後でまとめて教えてくれる? 嫌な予感がするから、あたしはここでは傍観者でいるね……」


「だそうだよ。リンジーは特に口を出さないようだ。で、君が言いたいことは?」


 ファビオはリンジーの言いたいことを伝えたうえでそう尋ねた。


「クローン兵に気を付けて。彼ら、私とオリヴィアだけじゃなく君たちも見つけ次第首を狙ってくるだろう。顔や名前が割れていれば命を狙われるのも時間の問題――」


 そう言いながらアナベルは彼女自身の展開していたイデア――彼女が「赤い糸」と呼んでいる糸を引いた。


「手ごたえあり。やはりだね、クローン兵。世代は知らないけれど、命を取りに来ている。張り巡らせた糸にひっかかってくれるのはいいけど、殺しに来るのはねえ。特にオリヴィアを。確かに始末したい人間はこの町に揃っている……」


 と、アナベルは言った。


「お前はどうするんだ?」


「ふりかかる火の粉は払わないと。襲ってくる連中は皆殺しだよ♡」


 ミリアムに尋ねられるとアナベルは答えた。どうやらリンジーたちとアナベルとでは目的が一致している。


「共同戦線だ、アナベル。私たちもいずれクローン兵に狙われる。いや、もう狙われているだろう。立ち入り禁止区域まで、私たちに力を貸してほしい。お前は強いから」


 と、ミリアム。


「ふふ……そっちから協力を持ちかけてくるなんて。いいよ、恋人の頼みだ。断らないわけにはいかないね」


 アナベルは言った。

 こうして彼女はリンジーたちに協力し、4人で立ち入り禁止区域を目指すことになった。それはよかったのだが――


 案の定、一行は暗殺者に狙われる。ゲストハウスから5分ほど歩いたところでまず暗殺者は最も暗殺しやすそうなリンジーの背後に現れる。その爪でリンジーの頸動脈を切り裂かんとしたときだ。リンジーがイデアを展開して攻撃をはじいたのは。


「裏切り者の分際で……」


 帽子をかぶった人物――暗殺者の男は吐き捨てるようにそう言って体勢を立て直し。再び攻撃に移る。今度はリンジーがいつも露出している太腿を狙った。


「あんたはその裏切り者も殺せないの」


 と言って、リンジーは蹴りを放つ。ブーツの靴族が金属製の爪をぐにゃりと曲げた。が、それが暗殺者の行動を押さえるわけもなく――先ほどの攻撃すらもブラフとして攻撃に移る暗殺者。その攻撃は、リンジーが並の人間であれば当てることができただろう。が、リンジーの身体は柔軟性と体幹の強さに恵まれている。だからリンジーは体を反らせて首を狙った攻撃を回避した。

 ばさりと広がった髪から覗く暗殺者の顔はいらだちを隠せないでいるようだった。


「怒ってんの? そうだよね、一撃であたしを仕留められなかったからね! これからも、あんたはあたしを仕留められない。わきまえな、暗殺者」


 と、リンジー。

 挑発だ。これでペースを乱せればリンジーは暗殺者を圧倒しうる。そして、彼女は暗殺者の実力をはかっているようにも見えた。


「一つ勘違いをしているようだ。暗殺の方法は1つではない――」


 暗殺者がそう言っている間にリンジーの蹴りが頭に炸裂し、暗殺者は絶命した。だが――遠くでかすかに動いた気配に気づくアナベル。


「伏せて――」


 とアナベルが言ったときに、銃弾が彼女の鳩尾を貫いた。

 どうやらこの町にはリンジーが殺した暗殺者のような者だけでなく、スナイパーもいるらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ