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4 神社へ

 悠平からの連絡はある時を境に途絶えた。最期のメッセージを見て、杏奈は決断する。


「殴り込みだ。今ここにいる中で、戦えるメンバーでな」


 その日、春月支部にいた者たちを前にして杏奈は言った。全員が揃っていなくても、全員がここに来るのを待っている暇はない。


「で、誰にするんだい? 私は能力が今回の仕事には向いていないわけだが」


 そう言ったのはエミーリア。


「そうだな。メンバーなら私とパスカルで決めておいた。見えない相手に対応できる杏助と陽葵。春月に因縁のある晃真。治療ができるキルスティ。それからオリヴィアとパスカル。杏助と陽葵は修羅場を乗り越えてきたから、頼りにしてくれていい」


 特に杏助は一行にとって見覚えのある人物だった。シンラクロスに始まり、春月に来たときは建物の中に案内してくれた。


「よろしく頼むよ。陽葵や姉さんほどじゃないけど、俺も戦える」


 と、杏助は言った。


「準備でき次第、6人は神社に向かってほしい」


 杏奈は言った。ここで作戦会議は終わり、解散した。解散のとき、杏奈はオリヴィアの顔が目に入る。オリヴィアは目を合わせようともしなかった。


「……ああ、そうか」




 そして翌日の早朝。神社生きの決まっていた6人は杏助の運転する車で春月支部を出た。


「ねえ、オリヴィアは神社に行ったことある?」


 そう尋ねたのは陽葵。茶髪とオレンジ色の瞳が特徴的な女性だ。


「ないよ。神社がどんなところかもわからないけど……」


 と、オリヴィアは言葉を止める。

 オリヴィアは記憶があいまいかもしれないという疑いを捨てられずにいた。だからだ、言葉を止めたのは。


「ま、そんなに気負う事ないよ。命をかけることには変わりないけど、皆は乗り越えてきたから!」


 そう言って陽葵はにっと笑う。


 一行は会話を交わすうちに神社にたどり着いた。鳥泣神社。それがこの神社の名だ。それがこの神社の名だ。神社はさびれておらず、手入れも行き届いているようでもあったが、妙な気配が渦巻いている。が、それは手入れされていない神社のものではない。そう感じ取ったのはパスカルだった。


「……間違いない。ここに何者がいることは確かね。それが何か、っていうのは神のみぞ知ると言ったところかな」


 パスカルは言った。妙な気配を分析できたからこそ彼女はそう言えたようだ。


「……そうだね。林麗華やモーゼス・クロル並の気配だけど、何か違う。これは……わたしたちを誘っているの……?」


 オリヴィアもまたその気配の特徴をとらえていた。彼女の言葉が意味することは、これから戦う敵が強敵であるということ。


「……止まってても仕方ないよね。行くよ」


 オリヴィアの言葉合法としたかのように、一行は神社へと足を踏み入れた。


 参道から鳥居をくぐり、神社の敷地内へ。参拝客のいない神社には申請でなおかつ重苦しいものがあった。と、その時だった。オリヴィアたちの前に重苦しい気配の正体が姿を現したのは。


「お待ちしておりました。あなた達は神域に来た。ここから生きて帰れない覚悟はよろしいですね?」


 すっと現れたのは白服の女。彼女は人間離れした雰囲気を纏っている。超自然的なものに慣れていない者ならば、誰だって恐れるはずだ。


「できている」

「じゃないとこんなところに来ないんだからねっ!」


 パスカルが言う途中で飛び出す陽葵。抜刀して白服の女に斬りかかる。女は左腕で受け止めるが、怪力の持ち主である陽葵には押されている。陽葵はこの場では自身の優位を悟り。


「報告書に書きたいから名乗ってよ。私は、霧生陽葵。神隠しの類からは5回くらい生還している」


 押し合う中でそう言った。


「羽黒ゆ……真名を知ろうというのですか。騙されませんよ」


 白服の女――羽黒雪乃は言った。彼女はそれから分身し、二方向から陽葵に襲い掛かる手数で上回る雪乃に対し、陽葵は範囲で上回っていた。刀が雪乃の得物――血に染まった鉈をはじいた。


「先に行って! 私1人で相手できるから!」


 と、陽葵。彼女の言葉にオリヴィアとパスカルは戸惑う様子を見せたが。


「先を急ごう。大丈夫だ、陽葵は強いから」


 そうやって2人を諭したのは陽介。彼の目には確かに陽葵への信頼があった。杏助の言葉と表情に説得され、オリヴィアもパスカルも先を急ぐことにした。


「……よし。これで本気を出せる。皆を巻き込むわけにはいかないからね」


 陽葵は呟いた。これまではイデアを展開すらしていなかった彼女。先へ進む仲間の気配を感じながらイデアを展開していた。


「杏奈さんの部下らしく、効率よくいくよ」


 第二ラウンドだ。陽葵の背には烏のように黒い翼が生え、ほとばしるエネルギーは跳ね上がる。雪乃はそれを警戒して分身を消した。その瞬間に、明らかにこの場の空気が変わる。まるでこの世からあの世へと移動したかのように。


「あれ? 気づきました? できるだけ気づかれないようにやっていたつもりなんですけど」


 雪乃は言った。


「言ったよね。神隠しの類から5回も生還しているって。気づくくらい楽勝だよ」


 陽葵は一瞬で雪乃に詰め寄り、剣を振るう。が、当たったようで手ごたえはない。


「ふふ……ここは私の領域ですよ」


 陽葵の背後で雪乃は言った。



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