母さんの事情
父さんからのメッセージが来たことに心のどこかで違和感を感じつつ、父さんの指定した待ち合わせ場所へ向かった。
ほどなくして、待ち合わせのカフェに着く。
「いらっしゃいませー何名でのご利用でしょうか。」
「先に一人来ていますので探します。」
店員さんにそういって、父さんの姿を探す。一度店内を見まわしたがそれらしき姿が見えない。もう少し注意深く見てみると、そこには、目を腫らし肩を落としながらコーヒーをすすりながら溜息をついている、いままで見たことのない父親の姿を見つけた。
俺は、父さんにいるテーブルの席に着き、恐る恐る声をかける。
「父さん、お疲れ様、でも、どうしたの?明らかに普通じゃないよね。」
「・・・・・なあ、まこと。俺たちはあとどれくらい一緒に過ごせるのかな。」
「どうしたの、急に。そうだね。まあ平均寿命ぐらいまで生きるとして年2回会いに帰ってくるとしてあと15回くらいで1回あたり5日として75日くらいかな。ってことは一緒にいられる時間って、2か月半くらいかな。そう考えると意外とすくないね。」
「そうだよな・・・父さんもそれぐらいだと思ってたよ。」
「なになになに?ごめん、話が見えないんだけど。」
「ごめん・・・そうだよな。あのな、今日、母さんの精密検査の結果を聞いたんだよ。」
父さんは、すごくよわよわしく話をつづけた。
「母さんの身体な、癌が進んでてあと3年生きていられる確率が40%に届かないくらいなんだと。母さん、健康診断の結果あまりよくなくて、精密検査受けたんだけどその結果がもう、とっくに出てるはずなのに、なぜかはぐらかされたんだよ。
母さん、あんな性格だろ、多分父さんに身体のこと言いたくなかったんだと思う。というよりは時期を見て話すつもりなんだったと思う。
最近、なんか生き急いでる感じはしていただよ。今までは、まことの結婚は本人が決めるものだからって言ってたんだけど急にお見合い相手決めてきたりな・・・」
「・・・・」
俺は想像だにしなかった父さんの話に言葉を失っていた。話しは耳を通して脳に伝わっていたが理解するのを拒んでいるようだ
父さんはさらに言葉続ける。
「それとな、母さん阿久津さんとこのお嬢さんとまことが学生時代に付き合ってたの知ってたんだぞ。」
「ええええっ!」
今日、一番の大きな声がカフェ内にこだまする。
「阿久津さんとこあの当時いろいろ大変だったろ、あの時母さんな「表情が少し明るくなったからよかったわ」なんて言って楽しんでいたみたいなんだ。知ってたけどただ、母さんはまことが紹介してくれるのずっと待ってたけどな。別れた時のことも後でなんでまこと達が分かれたことも噂で聞いたみたいだった。その時も、もったいないわぁ。あと5年もしたらまことにもピッタリで飛び切りいい女性になるなんていってたな。」
「母さん、俺にはそんな一言もいってなかったよ。」
「子どもの恋愛に口出す親なんてのは過保護がすぎるからな。でも俺が黙って見守っておけって言わなかったら、話してたと思うけどな」
「そうなんだ。でもなんで今更お見合いなんてしたんだ。」
「・・・ああそれはな。」




