表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで、Yes。ノヤマノハナ  作者: 上之下 皐月
45/78

第四章 その6 機屋リューリ 『私の隙間。』

練習が終わり、カーリングホール二階のラウンジで一休みする。

外に目を向けると、山の中で桜が咲き始めていた。

都会では三月に咲くと聞くけど。

軽井沢(ここ)ではゴールデンウィークくらいね。

しかも都会のようにまとまっていないから山の中にポツポツと見える程度だ。

しかしその姿は淡く…どこまでも白に近いピンク色で。

とても慎ましく見えた。


一方室内。

ガラス越しの一階に目を向けると、カーラー達がストーンを投げている。

気が付いたらカーリングをしていた自分にとって(アイス)の上を滑ったり、ストーンを投げたりする行為は至極当たり前だった。

毎日毎日、ストーンが当たったの当たらなかったの。

そんな事で一喜一憂したり、機嫌良くなったり悪くなったり…。

こんな狭い空間で。

考えてみればバカバカしいわ。

辞めてしまっても良いのだ。

そうすれば…。

そうすれば、このモヤモヤした感覚からも解放されるだろうか。


パパが倒れてしまったとき。

パパがもう二度とカーリング出来ないと知ったとき。

私の心の中は手足が痺れるほどの寒風が吹き荒び(ふきすさび)…。

それは今も止まない。


『欲しい…欲しい…』


うるさいわ。


『焦れる…』


黙りなさい。


私の身体の奥。

心の奥底から聞こえる声。


『私の隙間を埋めてくれるのはパパだけ』


分かっているわ。


私のパパに対する愛情は異常。


小さい頃は…否、身体が育てば育つ程に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

パパが倒れ、()()()()()すら出来ない身体になったのは、果たして不幸だったのか、幸運だったのか…。


…私には春なんか来ないのではないかと憂鬱になり、憂鬱になっている自分にイライラする。


悪循環。

隙間を、埋めてくれるモノ。

いつからか充実に満ち足りていたカーリングですらも、その役割は果たしてくれない。


今日はパパに会いに施設まで行こう。

そう、心に決める。 


…パパの淹れてくれたコーヒーが飲みたい…。

また同じ事を考えてしまう。


コトン、と音がして振り向く。


私の言葉が漏れていた訳ではないだろうが、何故か私の前に缶コーヒーが差し出される。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ