第四章 その2 野山乃花 『リューリのいない日常』
女子の部室に行くと新部長と三年生のかつての部室、そして数名の女子がいた。
なんだか緊張するな。
伝統的に女子が多いカーリング部は女子の部室の方が、男子の部室より大きい。
そして女子の部室長屋は男子のソレより新しい。
八畳程の部屋に折りたたみテーブルと椅子が設置されている。
男子の部室は畳で四畳半くらいだったから…。
あからさまに女子は優遇措置されていた。
「野山さん、ありがとうね。まぁ緊張せずにホラ、座って座って」
三年生のかつての部長に言われ、私はスチール製の椅子に腰掛ける。
この部長とは昨年、長門先輩達のコーチを頼まれたりしたので一応、知っている仲ではある。
「折り入って話と言うのはね、練習メニューについて経験者の意見を聞きたいのよ」
二年生の新部長が代わりに話す。
両部長の私への視線は友好的なものだが、二年生や三年生の中には露骨に敵対心剥き出しの視線も感じる。
まぁ、二ヶ月前には中学生だった若輩者に、両部長が信頼を寄せてたらこうなるか。
私はそっとため息をつく。
さてどうしたものか。
私は配られた練習メニューを読みながら、考えを巡らせる。
ここではっきりと意見を述べると後々、いやこの場が面倒な事になりそうだし。
普段なら多少嫌な事があっても、相手が男子なら今日の小説のネタにしてやるのだが。
女子ではなぁ。
そう言えば中学生の時には、練習メニュー作りをリューリと行っていたっけ。
…こんな時、リューリなら。
リューリがいてくれたら…な。
なんて言うかな。
『実力の無いものの戯言など』
ハッとした。
『聞く必要、無いわ』
頭の中にリューリの声が聞こえたような。
いや、アイツなら嫉妬など気にせずにカーリングの実力で完膚なきまでに叩きのめすだろう。
『ハナ、あなたの正 義はそんなモノ?がっかりだわ』
私の想像の中ですら。
うるさいよ。
リューリ。
私はフッと笑う。
心に余裕が出来た。
感謝は、しないけどな。
「むふ〜っ」
気合を入れる。
眼鏡が曇る。




