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27・ガーデナー

「えっ!?」

 素っ頓狂な声を上げたのは、俺だったか、クロスだったか。

 反射的に、腕を引っ込めてしまう。

 残された6本目の腕は、陶磁器のように艶やかだった。

「リュウズ!? なんでお前が!?」

「……はい。ワタシも仲間に入れて頂きたく参りました」

 6人目――リュウズが、しずしずと言った。

 ジャングルを分け入ってきたらしく、ワンピースの裾が緑に汚れていた。

「ア、アンタ、NPCじゃないの? 何で町から出れんのよ?」

 クロスの言うとおり、『ガーデン』のNPCは基本的に町から出ない。

 イベントNPCとしてエリアに配置される者もいるが……少なくともリュウズはそうではない。

 ここにいるはずがないんだ。

「ワタシにも理由はわからないのですが……どうも今のワタシは軽装剣士のようなのです。であれば、みなさまのお手伝いが出来ないか、と……」

「そんなバカな。リュウズのワンピースだと、アクションさせると足が衣装を貫通してしまう。だからアクション自体想定していないんだが……」

 3Dモデルあるあるで、ゲームのキャラにミニスカートが多いのは、単に嗜好だけの問題ではない。

 技術的な問題で、動かした足がスカートのポリゴンを貫通してしまうためだ。

 見た目として、まるで壁抜けする幽霊のように足が飛びだすので、非常に違和感が出てしまう。

 色んなゲームを見て頂くとわかるのだが、3Dモデルを使ったもので、ロングスカートのキャラのアクションはほぼ存在しない。

 全モーションに手付け修正すれば、不可能ではないが、コストがかかりすぎる。

「……え? 貫通などしませんが……」

 そう言って足を持ち上げ、ワンピースの中で動かすリュウズ。

 実際のワンピース同様、布が持ち上がるだけで、足が布を貫通することない。

 当然と言えば当然なのだが、ゲームとしてみれば異常だ。

「ふむ……そういうことか」

 ストリンドベリが顎髭をさすりながら言った。

「貴方には、原因がわかるのか?」

「無敵解除のバグの話をしただろう? あれは、NPCのデータ管理IDを、プレイヤーキャラの管理IDと誤認させるものなのだ。つまり、パラメータシートのチェックをいじるのではなく、IDをずらしてしまうバグなのだが、これは8ビット機の時代によく見られたデータの持ち方をこの時代でもしているためで、現代では稀有な――」

「ちょ、ちょっと待った! 何言ってるか全然わかんねえ!」

「……俺の組んだプログラムに穴があったってだけの話だよ。リュウズは最古のNPCで、俺の素人プログラムが残ってるキャラだからな……」

 穴があったら入りたい……。

「まーまー☆ いーじゃんいーじゃん、リュウズをパーティに入れるなんて、バズるの間違いなしヨ~。うー早く戻って動画にした~い!!」

「で、では、ワタシもパーティに加えて頂けるのですか?」

「意義なし☆ 誰か不満あるヒトいる~?」

 一人だけハイテンションなアキヤマだが、異を唱えるものはいなかった。

「うん、リュウズの加入法案は反対無しの賛成多数で可決されました☆ にゃっは・ふー!」

 リュウズは、おずおずと俺の方を向く。

「よ、よろしいのですね、シグマ様。正直申しまして、反対されるかと……」

「……まぁ、そういう気持ちがなかったわけじゃない。仕様意図としてはバトル用のキャラじゃないからな。だけど、前にも言ったろ。お前はもう俺の想像なんか超えてる。俺の想定通りなら、さっき足がスカートを貫通してただろうさ。お前はもう生きている一個の人格だ。その意志を尊重したいんだ」

「ありがとう……ございますっ!」

「そうかしこまらないでくれ……仲間なんだからさ」

 そう言って、再び拳を突き出す。

「はいっ!」

 リュウズは笑みを浮かべ、拳を突き出す。

 それに呼応するように、他の三人も拳を突き出した。

 今度こそ、六角形が生まれる。

 そこにゲーム的な意味は無い。

 意味は無いが……意味はある。

 俺は、正式に『ガーデナー』の仲間になったのだ。

『ガーデナー』、いい名前だ。

 邦訳すれば庭師。

 ガーデンを管理するもの。

 顎を引き、空を見上げる。

 薄く曇ったそれは、何も映さない。

 だが、その先に何があるかはわかっている。

 だから、睨みつける。

「見てろよ王魔……! 庭をみんなに返してもらうぞ……!」

 絶対に。

 俺たち『ガーデン』で成し遂げてみせる。

 ……と。

 そういえば、仲間になるんだったら、はっきりさせておきたいことがある――

「……そうだ、クロス。一つだけ話がある」

 俺は、クロスに向き直り、その青い瞳を見据えて言う。

「えっ? ……なっ、なに……?」

 急に焦ったように挙動不審になるクロス。

 手をばたつかせて、瞳をきょろきょろさせている。

 ……そうか。お前も俺と同じコミュ障だもんな……急に話しかけれればそうもなるか。

「心配するな。そんな大した話じゃない」

「は?」

「おたんこなすに「び」は要らないと思うぞ」

「……っ!」


 次の瞬間、頬を小気味のいい音と共に衝撃が駆け抜けた。


「このっ、おたんこなすびっ!!」

 ああ、治らないか。

 でも、それも似合ってるし、まぁいいか。

 そう、思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いいねこれ [気になる点] 見たい…ッ!圧倒的続編希望…ッ!
[一言] まさかのここで終わりなんですね。 他にいい終わり方があるかと言われると思いつきませんが、少し現実世界に戻った主人公がどう変わったのかとかが気になる終わり方でした。
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