第五話 冒険者ギルドと少女
宜しくお願いします。
おっさんに言われた宿を見つけ、そこに泊まる事に。
石造りの二階建て。
食事も出るには出るが、オートミールや干し芋といった感じで、決して美味しいわけではない。
まだ金はあったので街の中央にある露店で食事を済ませていた。
寝泊りするのに大した苦はなく、宿屋を変えず何故か同じ部屋で2、3日程過ごしていた。
というのも、"な、何かあった時一緒にいた方がいいと思うの"という事らしい。
しかしながら、男女が屋根一つというのは少し無理がある。
隣で寝ているのがこの女神なら尚更な。
あれから何度かおっちゃんの店に行ったが、一向に有用な情報は得られなかった。
そこでそろそろ資金の工面についても考え始めていた。
資金がなければ捜し出す前に、こっちがくたばってしまう。
そこで、手っ取り早くまとまった金が得られると言う冒険者になる為に、酒場から大体歩いて一時間の冒険者ギルドに向う事にした。
その道中、疑問に思っていた事をティアに訊くことに。
「なぁ、ティア」
「なに?」
「気づいたんだけど、俺の力って"歴代最強の魔王の力"なんだよな?」
「そうね、それがどうかしたの?」
「歴代というのはこの世界に於いての事なのか?」
「悪いけど、私にも分からないのよ」
「分からない?」
「私が貴方の"残酷な魔法"が欲しいという望みに対して妥当なものを念じて出したものが、たまたま"歴代最強の魔王の力"だったのよ。基本的に特定の何かは出せないの」
残酷な魔法が、歴代最強の魔王の力か……
そうこうしてる内に、到着した。
「ここであってるのか、ティア」
「間違いないわよ」
確かにそれらしき風貌をした者たちが、出入りを繰り返しているし、間違いなさそうだ。
「よし、入るぞ」
「ええ」
扉を開き、中に入る。
内装はさして目新しいものも無ければ
シンプルだ。
大きな掲示板に、受付らしきものが見受けられる。
大方、その掲示板に張り出された依頼書を、受付に持っていくという形になっているのだろう。
ギルド内は、冒険者らしい武装、格好をした人間や亜人で賑わっており、その殆どがグループになって集まっている。
あれだ、パーティという奴だ。
掲示板に向かい、依頼書を眺める。
「ま、読めないよな」
ティアに、出来るだけ報酬の高いもの選んでもらう。
「これとかどうかしら?マサトなら余裕で倒せると思うわ」
「なんて書いてあるんだ?」
「ええっと、魔王軍幹部の討伐依頼。第四位階以上……だって!」
どう見てもヤバそうな依頼。
何を根拠に余裕と言っているのか甚だ疑問だ。
ていうか和平結んだじゃなかったのか?
あと第四位階ってなんだ?
依頼を受ける前に、受付で話を訊いておく事にした。
「あの〜、すみません。ちょっとお尋ねしたい事があるんですけど……」
「はい、なんでしょう」
「この魔王軍幹部の討伐と第四位階について教えて欲しいんですが……」
「冒険者登録証はお持ちですか?」
え?なにそれ、もしかしてライセンス的なものが必要なのか?
「いえ、持っていません」
「そうですね…でしたらそちらの説明は先ず、登録を完了してからで宜しいでしょうか?」
「あ、はい、お願いします」
「それでは少々お待ちください」
なるほど、ただ依頼を受けて金もらうって訳にはいかないのか。
「よい……しょっと、お待たせ致しました」
受付のお姉さんが何やら大きな水晶を手に戻ってきた。
「何ですか、これは?」
「この水晶に触れ、魔力を流す事で貴方の魔力を通して情報を登録、それと共に貴方の適正ランクを測る事が出来る魔導具になります」
へぇ〜、便利な水晶玉だ。
しかしここでランク上位を出して、俺たちの存在が露見するのは危険だ。
だから出来る限り力を抑えて低いランクを出すべきと考慮し、水晶玉に手を当てる。
「少しだけお時間が掛かりますので、先ずはランクの説明を致します」
受付のおねえさんが言うには、ランクには第一位階から第九位階まであると言う。
第一位階がベテラン、第九位階が駆け出しという単純なランクだ。
次に幹部の討伐依頼についての説明をされた。
これは和平を未だ望まない魔物の討伐依頼なんだそうだ。連合側は何故かこれを野放しにしており、耐えかねた平民達と一部の貴族達が資金を募り、依頼したらしい。
「登録が完了致しました、続いて大凡のランクを測らせて頂きます…え?なにこれ……」
水晶の色が立ち待ち漆黒へと変わっていき、少し罅がはいる。
「か、完了いたしました…ランクはええと……第九階ですね」
如何やら上手くいったようだが、少し抑え過ぎたようだ。
第九位階では、受けられる依頼も限られてくるかも知れない。
「パリン!」
手を離していなかったせいか、水晶を割ってしまった。
「す、すみません!」
「いえ、この魔術具は一定の量を注ぎ込むと割れてしまうのです。もう限界だったのでしょうね」
そういうことだったのか。
内心ほっとする。
「それでは次の方どうぞ」
新しい水晶に変え、ティアの番が巡る。
登録までに少し時間が掛かるので、受付の人に再度質問をする。
「第一位階はこの国にどれぐらいいるんですか?」
「第一位階は勇者様を除き、三人しか居ません」
勇者はそれ以上に強いということか。
そこで少し疑問に思う事をティアに訊いてみる。
「なぁティア、勇者や魔王って異世界の人間だと思うか?」
少し唸り、ティアが含みのある言い方をする。
「私もそれ考えてたんだけど多分違う……と思いたい所ね」
「どう言う事なんだ?」
「前にも言った通り、通常同じ異世界には送ってはいけない決まりなの。でも決まりという訳で破れ無い訳では無いのよ」
ティアの話によると決まりを破る事は出来る。
だがその行いは現存する世界に多大な影響を与えかね無い、許されるざるべき行為だと言う。
そんな事をする神は、ティアが知る限りい無いらしい。
俺には関係ない事だが、なら"降臨"とは一体何なのか、謎が深まる。
それから登録が完了し、ティアのランクも決まった。
だがティアは泣いていた。
結果は最低ランクの第九位階。
仮にも女神のティアは、それが悔しかったらしい。
「まぁまぁ、ティアは下界で神の力は使えないんだし、しょうがないんじゃないか?」
「うぅぅぅ、違うのよぉ。女神の力と魔力は別物だから私は純粋に弱いってだけなのぉぉぉぉ!!」
まあ、分かりきっていた事なんだが。
ん?
高そうな装備一式を着ている少女と目があった。
すると徐に近づいて来て一礼し、その可愛らしい口を開く。
「貴方方を強者と見込んで依頼があります」
恐らく貴族なんだろうというのが俺でもわかった。
貴族が冒険者になる事が普通のことなのかはわからない。
しかしその立ち振る舞いや、装いが平民のものとはかなり異なっている気がする。
まだ少女ではあるが、その雰囲気がそうは感じさせない。
どこか大人びているというか、冷め切っている所が見受けられる。
「受けて貰えますか?」
二人して第九位階であった為、受ける依頼に困っていたとこだ。
これは丁度良い機会かも知れない。
「話だけでも聞いてみようか」
ご読了有難う御座いました(泣)