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第四話 黒い感情

ご感想、ご指摘、どしどしお待ちしております。


話を再開させ、あれからかれこれ二時間は経ったと思う。

客の数は数人程度。


よくわからない部分を逐一訊き直したり、補足したり、ジェスチャーを交えてみたりで、おっさんの目は訝しげになる一方だったが、話は無事終わった。


その話を要約するとこうだ。


約三百年前に四つの国が連合を組む事になる。


それが四国連合。


何故組まれたか?


これまた約三百年前、突如魔王が降臨し魔物の数を急増させ、魔王軍を立ち上げた事に起因する。


魔物の増加と凶暴化。


進化により幹部クラスと呼ばれる魔物が生まれ、もはや一国では相手に出来ないレベルまで魔王軍が勢力を高めたのだ。


しかしながら降臨したのは魔王だけでは無かった。


そう、【勇者】の降臨。


魔王と時を同じくして、勇者が人間側に降臨したのだ。

最初は皆、天の使いかと思い込んでいたが、いつしかその呼び名は勇者へと変えていた。

その立ち振る舞いと知識の妙な偏りからして天使ではなく、御伽噺に出て来る勇者ではないかとされた為らしい。


現在、世襲という訳ではないが、魔王は七代目に。

勇者は四代目となっている。


本題はここからで、この四国連合が狂い始めたのは丁度十年前の勇者降臨。


勇者と魔王が突然、和平を結ぶことになった。


表向きは"この終わりの無い戦に終止符を打つ為"とされているが、この真相の裏に何かあるのではないかと、疑うものは少なく無いらしい。


和平が直接的な要因かはハッキリしていないが、王国や帝国は腐っていく結果になったという。





「ま、そんな感じだわな……ぷはぁ!」


そう言って当たり前の様に俺の酒を飲むおっさん。

まあ、これぐらいは情報料の範疇だ。


「なるほど……助かったよ。けど、おっさん結構詳しいのな」


「まぁな、これでも昔は王国騎士団に所属してたもんだからよ、騎士達の間ではそういうのが話の種になるんだわ」


その情報量と図体のデカさはその為か。


「あと一つ聞きたい事がある。多分知らないとは思うんだが、田中悠真という男を知ってるか?」


「タナカユウマ?いや、知らんなぁ」


まあ、知らんだろうな。

こっちの世界に来る前に、まだ女神然としていたティアに居場所を調べてもらうべきだったと、少し後悔。


「なんだぁ、ボウズはそいつ探してんのか?」


「まぁ、ちょっと色々あってな」


「そうか、なら俺の店を今後ともご贔屓にしてくれんなら、俺の知り合いの情報屋とか店の連中に聞いといてやるよ」


おう、それは助かる。


「元騎士団の割には、商売が上手いんじゃないか?」


「言うじゃねぇか、ハッハッハァ!」


声高々に笑うおっさん、どうやら良い人との出会いに恵まれたようだ。


「それじゃ、そろそろ店仕舞いだぁ、今日んとこは帰ってくれぇ」


外を見ると日は既に落ち、闇に包まれていた。


「そこのグースカ鼻息立ててる嬢ちゃんも忘れんなよ!」


そう言われ隣を見ると、


「スピ〜!、スピ〜ヒュ〜〜スピ〜!」


なんだこの可愛い生物は!と思わざるを得ない位の、この寝顔の愛らしさと来たら堪らない。


「ティア〜?ティア?起きろ〜もう行くぞ〜?」


背中を揺さぶりながら声をかける。


「んんん?ママ〜?」


寝ぼけている。

どちらかと言えばパパだ。


「行くぞ、ティア」


「わかって……る〜〜」


ふらふらになりながらも何とか立ってみせるティア。

少し千鳥足となっているが、これは眠いからなのか、それとも酔っぱらってな事なのかはわからないが、一生懸命歩こうとしている。

――と、その時、


「「イッテェ!!」」


まだ残っていた客の二人に、盛大にぶつかってしまった。

しかし、ティアはそれに気付いていない。

何も言わずに立ち去ろうとしている事に腹を立てたのか、ティアに絡み出す。


「おいおい、待てやネェちゃん!」


あ〜、案の定の展開だ。

仕方ない。


「いや〜すみません。俺の連れが、ホントすみません」


「ンダテメェ?俺が話してんのはこのネェちゃんなんだわ、だからオメェの連れとかカンケーねぇんだよ!スッコンでろやぁ!!」


こりゃ完全に血が登ってるわ。

さて、どうしたものか……と考えているところにおっさんが口を挟む。


「お前らウチの店ん中で馬鹿するのはやめてくれよ」


「はいはい。わかってますよ、クルスの旦那」


あ、この人クルスって言うんだ。

あれだけ話してたのに名前を知らなかった。


「それじゃ、ネェちゃん。ちょっと表まで付き合ってもらうか?ちゃんとエスコートするからよぉ」


寝ぼけているティアの腕を引き、外まで連れ出されて行く。


何て言うか、こういうのも有るよなぁ〜異世界は。


「おい、ボウズ。お前の漢、見せてもらおうか?」


如何やら奇妙な展開に巻き込まれたようだ。


「勘弁してくれ」


何故だろうか。

助けたい気持ちはある筈なんだ。

しかし、頭の片隅なのか、心の片隅なのか、定かでは無いその場所で俺はその行為を拒絶している。

そんな気がした。


店の外に出たティア達を追い、俺も店を出た。


「おいおい、なんか言うことあんだろ?」


「うぅぅ、御免なさい〜」


如何やらティアも少しは状況を把握したのか、きちんと頭を下げ謝罪をしている。

だが、


「おいおい、そんなんじゃ許せねぇよなぁー?誠意が足りないよなぁ〜?」


「まず地に頭を付けるぐらいの事はしねぇとな?」


許すつもりはないだろう。

ただ、煽り責め続ける事が狙い。

もう一人の男は愚かしく、酷く侮辱的な行為を求める。

その時、


「うっ!」


"見せてみろよ!お前の誠意ってやつを!"


「今のは一体……」


一瞬立ち眩みをすると共に、嫌な記憶が垣間見えた。

それはとても屈辱的で、後悔の念が絶えない経験。


「なんだ……この気持ち……」


自分の心が、黒い何かで満たされて行く感覚。


「ご、御免なさい〜」


気づくとティアは、地に頭を付け謝罪していた。

いや、おかしい。

何故そこまでするのかは疑問だが、流石にこれで許してくれる筈。

だが、奴らはそれでも許そうとはしなかった。


「駄目だよ、駄目だよそんなんじゃあ!それじゃあ伝わって来ないよぉ〜」


「やっぱり体に教えなきゃ駄目なんじゃねぇか?」


「うぅっ!」


"足りないぜ。全く誠意が足りて無いぜ、真人君?"


また、同じ症状が起きる。

如何やら現状況が生前の何かを彷彿とさせている。


「頭痛が……!?」


再び気づいた時には一人の男が、ティアを背後から羽交い締めにし、もう一人は薄汚い手でティアの体を弄り始めていた。

肩から腰へと移し、その手を胸まで近づけようとする。


その一つ一つの動きが俺の中の何かを蠢かす。

まるで連動しているかのように。

俺が俺でなくなるような感覚に近い。

なのにこれが正しいと思えてしまう。

心の器に並々まで黒い感情が注がれているようだ。


「な、なんなんだテメェ!くそっ!」


片割れの男が狼狽えている。

気づけば俺は、体を弄っていた男は蹴り飛ばしていた。

蹴り飛ばした腹からは出血を起こしている。


もう一人はその仲間を顧みず、全力で逃げ出していた。


「逃がさない、悪魔の眼光(ディアディスティウム)!」


決して逃がさない。

ティアが受けた分の屈辱以上の思いを味合わせてやる。


後悔させてやる。

恐怖させてやる。

絶望させてやる。



いい、これで良い。

救おうなんて考えるな。


既に黒い感情は、心の器から溢れ出していた。


「う、動けねぇ!」


「どうした?逃げないのか?」


「ひっひぃ!わ、悪かった!俺が悪かった。少し調子に乗りすぎちまったんだ。頼む!許してくれぇ!」


「悪いがお前達のようなゴミに掛ける慈悲など、持ち合わせてはいない」


そう言って、至近距離で魔法陣を展開させた。

しかし思う存分楽しんで貰い、その後に殺すつもりだったが敢えなく失敗に終わる。


何故なら、


「マサト、駄目よ!」


周りが見えていなかった俺は、いつの間にかティアに背後から抱かれ、阻止されていた。


「その魔法で人は殺さないって約束したでしょ?」


何故止める?


「なら、魔法を使わ無ければ良いわけだ」


「それも駄目よ!」


ティアの抱きしめている力が強くなる。


「何故駄目なんだ?そんな約束はしていないだろう?」


「だったら、今約束しなさい!」


無茶苦茶だ。


「そんな約束はしない……と言ったら?」


「約束するまで離さないわよ!」


本当に無茶苦茶だ。

だが、ティアのお陰で少し冷静さを取り戻せた。

離さないというのも、それはそれで魅力的だがな。


「わかったよ、やめる」


「本当?」


「本当だ」


「神に誓える?」


だから神はアンタだろ。


「誓います」


「よし!良いこ良いこ!」


誓った直後、女神が俺の頭を撫で始めた。


「や、やめろ!」


「良いじゃない、別に」


止めろと言うのに頑なに撫でて来ようとするティア。


俺が知る限り、こういうのって逆なんじゃないか?





それから数分。

幸い出血していた男は、死に至る程では無く、適当な応急処置をしてもう一人の男と去っていった。


それから一息置いて、宿を探すことにした。


「おっさん!この辺に宿はあるのか?」


「こっからなら右に出て真っ直ぐ行けば一つあったな。そこに行ってみると良い」


「恩にきるぜ、おっさん」


「おう、またいつでも来いよ」


店の扉に向かいながら、右手を上げて別れを告げる。


一部始終を見ていたおっさんによると、この力は異質であり余り人目の付く所では使わない方がいいと忠告を受けた。

俺の力の事も黙っといてくれるらしい。

おっさんの言うこと全てを信用出来る訳ではないが、ここは信じて宿に向かう事にした。


「マサト?」


「なんだ?」


「助けてくれて……ありがとうね」


……その一言は俺にとって、言葉の意味以上の何かを感じさせた。

もしかしたら女神の大いなる愛ってやつかも知れない。


「……こちらこそな」


だが俺の心に溜まる黒い感情が消える事はなかった。


ご読了有難う御座います。

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