プロローグ
多くの人は幼少期にヒーローに憧れていると思う。
何に興味を惹かれているのかは千差万別、十人十色。
理由は様々だと思う。
だがきっと、正義が悪を制する姿に心を躍らされているのではないかと思う。
かくいう俺も憧れていた。
英雄に憧れていたのだ。
誰かを守るその姿に胸を打たれた。
しかし憧れる、それだけで済ましとくべきだったのだ。
それは高校生という大人への常識と知識を身につけ、ヒーローなど馬鹿らしい子供のお遊びと思えてくる年齢に起きた悲劇だった。
俺は未だ英雄とやらに憧憬の眼差しを向け、余りにも稚拙で、独り善がりで浅はかな演劇を繰り広げていた。
力も知恵も無く、無責任で安易な考えで人を救おうなど烏滸がましいにも程があったんだ。
だがその当時の俺がそんな事を理解している筈もなく、正義という名の幼稚な剣を振りかざし、人を救う事に手を出してしまった。
その結果は如何だ?
そう、悲劇しか起こらなかった。
悲しく、辛く、哀れな結末を迎える事になった。
取り返しも付かない。
謝罪も許されない。
直接的だろうと、間接的だろうと、俺が殺したも同然だというのに!
俺程度の人間が英雄を目指した事自体が間違い!
俺に英雄なんか相応しくない!
俺は愚かで、臆病で、欺瞞だらけの人間。
もっと早く気づくべきだった。
きっと英雄ではなく、
――魔王の方がお似合いだった。
そして学校から家に帰る途中の事。
暴走した車に轢かれ、
「し……らさ……」
その一言を最後に、俺のちっぽけな人生は呆気なく幕を閉じた。