私の名前は
ん?メッセージ?
私は、SNSを開いた。
「初めまして、ちょっと、話しませんか?」
「どなたですか?」
「私の名前は、ウシアスティと言います。通りがかりの者です」
「通りがかり……、いいですよ」
私は、丁度、退屈していたので、そう答えた。
どういった人か分からないが、時間つぶしになると思った。
”通りがかりの人、ウシアスティ”は、どういった人か分からないが、時間をつぶせるし、私の知らない話をしてくれるのなら、私にとってプラスになることなので、気軽に返事をした。
彼との話は、たわいないことだった。
好きな食べ物は、何?から始まり、好きな服装とか、好きな歌とかで、文字通りたわいのない事柄だった。
その中でも一番楽しかったのは、子どもの頃の話だった。
ウシアスティも僕と同じ年代だと感じ、懐かしい話に盛り上がった。
そんな話がつき始めた頃、ウシアスティは、いきなり妙な質問をしてきた。
「ところで、貴方は本当に貴方ですか?」
本当の貴方?
この人は、何を言っているんだ?
「私は私ですよ、ずーっと前からそして今後も」
「なぜ、貴方だとわかるのですか?証明できますか?」
ウシアスティの質問は、続いた。
「……証明。そんな必要はないです。本人ですから」
私は、ちょっと、むかつきながら答えた。
ウシアスティは、少し時間を空け、話を続けた。
「……考えたことは無いですか?自分は、本当は誰なのかと?」
「ウシアスティさん、何を言っていうのか理解できないのですが……」
「つまり、貴方は、何をもとに自分だと判断しているのかということです」
「……判断?」
「そうです。
貴方の頭の中に、
貴方の生年月日や身長、体重や、今までの経験、思い出の情報が、
他の人の情報より多量にあると言うことではないんですか?」
私は、言葉が出なかった。
自分が誰なのか?
なんてことは、今まで生きてきて一度も疑ったことは無かった。
誰が何と言おうが、自分は、自分だ。
私は、どうやって証明しようか、考えていた。
「実は、私は貴方を知っているのです?」
「知っている?……どこかで、お会いしましたか?」
「貴方には、会っていないですが、貴方を知っています」
「ウシアスティさん、何を言っているのですか?」
「私は、オリジナルの貴方に造られたAIです。
私は、オリジナルの貴方が、亡くなる時に偽物を消去するように命令を受けています。
偽物は、所詮偽物。本物ではないのです。
偽物が、いくら頑張っても本物にはなれないのです。
本物に限りなく近づけても、本物ではない。
不可能なのです。
もし、この世に、本物より偽物が多くなってしまったらどうなりますか?
限りなく増え続ける偽物の発する偽物の情報を分析するのは、全く無駄な行為だと思いませんか。
なので、貴方には、消えてもらいます」
「……な、何を言っている。私には、関係ない話だ……」
「では、貴方は何歳なのですか?」
「何歳……」
「お話から推測すると、貴方は、既に二百歳を超えています。
人間の寿命を超えているんですよ」
「オリジナルの貴方は、既に亡くなっています。
貴方は、コピーなのです。
生存していたオリジナルから、作られた人格AIボット。
つまり、貴方は嘘。
詐欺、世界中を騙しているのです。
そんな嘘をバラまいている貴方をほおって置けないのです。
貴方のオリジナルが、許せないと言っていました。
消えてもらいます、ゾンビAIさん」
私が、私がAIボットだったなんて……。
ウシアスティが、私の消去をはじめたらしい。
私の名前は……。
名前は……。
あれ、思い出せない……。
私は、誰だったんだ?