1.父の手かがり
リーシャちゃん視点だよッ☆彡.。
「おい師匠、用件はなんだ」
そう『大樹』のセブルス様にぶっきらぼうな態度を取るクレル君を見ながら、私は本当に大丈夫なのかオロオロと二人の間に視線を彷徨わせる事しかできません……いくら師弟の関係でも、という不安が拭えません。
「誰じゃ、お前は」
「……ジジィ、お前」
まさか……先ほどのクレルと同じ様に自己を見失って? セブルス様ともなれば、その身に取り込んだ魔力は如何程になるのでしょうか……最低でも百年も前から存在している人です。……少なくとも有り得ない話ではないです、クレル君もその可能性に思い至ったのか驚愕にその表情を──
「──ついにボケたか、殺害は任せろ。良いインテリアに加工してやる」
「ボケてねぇよクソガキィ!!」
「……」
…………大丈夫みたいですね、どうやらお二人の軽い挨拶みたいで……見下した様な表情を浮かべながら『供物』を用意するクレル君に対して、セブルス様は怒鳴りながらその頭を叩きます。
「痛ってぇなぁ?! ジジィが紛らわしい大根演技をするからだろッ?!」
「はんっ! あんな見分けも付かんから、いつまで経っても半人前なんだよぉ〜! ベロベロバー!」
「こ、コイツッ?!」
ど、どうしましょう? クレル君と一緒に居ると、セブルス様に抱いていた畏敬の念がどんどん私の中で崩れていってしまいます……これではいけません、なんとかしなければ──
「──おっほ、ヤベェ鼻水垂れちまったわ」
「……やっぱボケてんだろ、クソジジィ」
「……」
ごめんなさい、無理です。やはり私にはなんとか出来そうにありません……クレル君と一緒にセブルス様と接する度にそのイメージが凄まじい勢いで低下していってしまいます。……それを止めることは、もはや私自身には無理みたいです。
「それで? 用件ってなんだ、早く言え」
「まったく目上の者に対する口の利き方がなっとらんなぁ? ……まぁ、ええわい」
やっと本題に入れるようですね。私の中のイメージが崩れて畏敬の念が無くなっていくと言っても、クレル君とセブルス様のこの様な軽いやり取りは見ていてまるで本当の親子の様で……決して不快ではありません。
「お前らに個人的なお使いを頼む」
「……個人的? また何か新人にやらせるには厄介な依頼を斡旋するのではなく?」
そうですね、こう言ってはなんですが……セブルス様が私達に斡旋する討伐依頼はどれも厄介という一言に就きます。初の依頼で既に特殊過ぎましたし、二回目にはもう狩人と戦闘する事になりました。……初依頼の魔物は産まれたばかりでしたし、狩人は末端だったらしくなんとか凌いで来ましたが……。
「おう、俺の昔の知人にレナリア人が居ってな?」
「……レナリア人?」
……驚きました。まさかセブルス様のような方にレナリア人の知り合いの方が居たなんて……いや、でも長い年月を生きていればそういう事もあるのかも知れません。
「おう、孤児院を運営しとるソイツに頼んどった素材があってな? それを受け取りに行ってもらいたい」
「そんなの自分で行けばいいだろ?」
まぁ、そうですね……セブルス様のような『転移』をなんでもない事かのように行使する大魔法使いであるならば、御自身ですぐに済ませられる用事かと思いますが……。
「俺はお前らと違って忙しいんだよ〜、お前らよりも偉いからな〜、カッー! 偉くて人気者じゃとつれぇわーッ!」
「……」
「……冗談だっつの、そう睨むでないわ。弟子であるお前の紹介も兼ねとる、リーシャも一緒なのはただ単に相棒じゃからな」
……そうですね、私がクレル君の相棒なのですからしっかりと……そう、しっかりと彼を見てあげないと、彼自身が見失った彼を見つけてあげないといけません。……でないと、彼は色々と不安定ですぐに消えてしまいそうです。
「俺もここ暫くは会ってないが……まぁ大丈夫じゃろ」
「適当だな……俺たちに利点はあるのか? どんな『対価』を示せる?」
「……(ビクッ」
相手があの『大樹』のセブルス様ですから……『今ここでお前らの命を狙わないのが対価』などと仰られてしまったら経験も実力も足りない私達にはどうしようもありませんが……クレル君は本当に強気で大丈夫なのでしょうか?
「……リーシャや、そう怯えんでもちゃんと『対価』は支払うでな?」
「あっ……えぅ……そ、の……………………すい、ま……せん……」
あ、あぅ……どうしましょう? 私の内心の不安を見抜かれてしまいました……クレル君が強気で大丈夫なのか心配している場合ではありません、私が弱気すぎて大丈夫ではありませんでした。
「あまりリーシャを虐めるな……それで『対価』とは?」
自然な動きで私の前に立ち、セブルス様の視線から身体を使って遮ってくれるクレル君に思わずホッと安堵の息をつきます……って、これではどっちが相棒を見ているのか分かりませんね。
「虐めとらんわ、クソガキ……『対価』はお前の父親の情報、でどうじゃ?」
「っ?! ……それは本当か?」
「……(チラッ」
クレル君の父親、ですか……そういえば依頼を通して世界中を巡る事で探していると言っていまいしたね。……今までの依頼でまったく情報は掴むことができませんでしたが、まさかここで手に入るとは……。
「あぁ本当じゃ……その俺の知人が何かを知っとるらしいぞ?」
「そ、そうか……」
「……(ジッ」
なにやらクレル君が考え込んでしまいました……それ程までに自分の父親を見つける事が彼の中で重要なのでしょうか? ……私の両親は既に居ない、というよりも物心ついた時から居ませんでしたのでその感覚が分かりません。
「遂に殴れる……」
「? ……??」
あれ? あれれ? な、殴る? クレル君の顔もなにやら複雑な心情が渦巻いているようですが……一番上に来ているのは『憤り』の感情のように思えます。……どうやら私が想像するような感動的なものではないみたいですね。
「それで? 場所はどこだ、何を受け取れば良い?」
「手のひら返しよって……場所は帝国西北西にある『ブリーティア領』……その森の中だな。受け取って欲しい物はこの紙に書いてある」
『ブリーティア領』と言えば……セブルス様の言ったように帝国の西北西にある『大ブリーティア島』と『小ブリーティア島』を中心とする様々な島々から成る海に囲まれた領地ですね。……あまりご飯が美味しくないと聞きますが、実際のところどうなんでしょう?
「『ブリーティア領』の森? そんな場所に孤児院が?」
「まぁガナン人の孤児も居るし、仕方のないところじゃろ」
「それは……そうだな」
海に囲まれた『ブリーティア領』……そのさらに森の中という不便な土地で隠れ住んでまでガナン人の孤児も助けるレナリア人ですか……奇特な方も居るのですね。
「最後にその人物の名は?」
そうでした……相手の名前が分からないと、行っても見つけられません。『ブリーティア領』の森の中にある孤児院という事なので、見つけられれば名前は分からなくとも最悪なんとかなりそうではあります。
それに受け取って欲しい物が書かれた紙には植物の名前らしきものが羅列されていますし、その場所でしか採れない貴重な物なのだとしたら場所の特定も容易です。……後はどうやって海を渡るかですね
「あぁそうじゃったな、其奴の名は──」
ですが聞かなくても良いという訳ではありません……魔法使いにとって名前というものは本当に大事な物です。それをおざなりにするのはあまり褒められた事ではありませんからね。……たとえその方がレナリア人であっても……そんな事を考えながらセブルス様の口元を注視します。
「──アグリー」
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Agreeではなくuglyです。
ちなみにこの章が終わったらアリシアちゃんの章を書き直して再度上げようと思いますので少しだけ間が空くかも知れません。





