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1ー27 毎度スィラージのケツにアイスランスが刺さる不思議

 早朝、一行は山村ダシルを発ち下山した。ここは草原の分かれ道。まだ午前中。

 「あれ、こっちじゃないの?」

 確かに往路は彼女が示す右の道だった。

 「こっちから行くと綺麗なオアシスがあるらしい。行ってみようぜ。大した回り道でもないし」

 シフが行こうとしているのは明らかに細く寂れた道だ。

 「大丈夫なの?」

 シフが即答「もちのロンくさベイビー♪ 簡単に地図を書いてもらったから大丈夫」

 「こうなったら行くしかないんだよ。基本、この男は同じ道を通りたがらないからな」スィラージは満更でもない顔で奇妙なポーズ。

 「今の俺達なら行けるはず」さらにシフが不穏な発言をする。

 スィラージが尋ねる「何か問題が?」

 「いや、サバンナのオアシスは野生の王国ってだけだぴょん」つまり野生動物が多いのだろう。

 「危ないならやめとこうよ」ルシールは嫌がる。

 「大丈夫大丈夫。先っちょだけだから、ね?」

 「最低」

 「……ところでマーキングしてきても良いかな?」スィラージが便意を宣言する。

 「こいつも最低」いちいち言うな「ホントにどうしてあたしの周りにはロクな男がいないのか。まともな男はガボさんだけね」

 「そうだろう」ガボルアが深く頷く。

 「あっはっは、言うようになったなあ」スィラージが笑う。

 「ダメよダメダメ、あたしには夫と子供が♪」シフはとりあえずノリノリ。

 「はあ、なんだか頭が痛い」ルシールは頭を押さえた。



 およそ1時間後。

 ガボルアが歩速を緩めた「おい、囲まれたぞ」

 「やっぱり?」シフは既に手槍を組み立てている。

 ルシールが嫌そうな顔「やっぱりじゃないんだけど」

 スィラージが問う「ライオン?」

 「多分な。もしくはハイエナ」

 「さすが野生の王国だぜ」スィラージが感心する。

 「ライオンだな」シフは遠目が利く「さっきから遠くにチラチラ見えているが」手槍の穂先で遠くを指して「あれは陽動だな。もっと近くに本命が待ち伏せているはずだ」

 周辺には背の低い灌木が群生している。大地の凹凸も多く、見通しが悪い。

 「ライオンってそんなに賢いのか?」スィラージが剣を抜く。

 「ここらの奴はそれくらいする。手強いぞ。おい婆さんや」シフは伊達メガネがキラリ。

 「なんですかお爺さん、お迎えが来たの?」

 「あっはっは、アイスランスの準備を頼む」

 ルシールが虚空を練る。キイイィィィィ。魔法力場が構成される空間歪曲の音。青白い光。

 「言われるまでもなく、りょーかい」瞳が赤く光る。

 ガボルアが助言する「アサルト(中距離用連弾)が良かろうよ。合図したら弾幕を張るんだ」

 スィラージも一言「今の内に撃ち込んで追っ払った方が良いんじゃないのか?」

 「うん? そうだな、やっとくか。威嚇も有効だ」ガボルアは頓着しない。

 「OK」ルシールは手を伸ばして魔法力場を形成開始「ランス」

 1本の細い氷の槍がくるくる回りつつ延びてきた。

 「へえ、鋭いな。それに長い」シフが感心すると、すぐスィラージとの応酬が始まる。

 「超鋭いな、マジやばい」

 「ちょっとこれは鋭すぎるんじゃないのか?」

 「なら刺してみたら良いんじゃないのか? 君のケツに」

 「その権利はお前に譲る」

 「要らないよ」

 「うるさいなあ」ルシールは集中できない。術式変更。ぐっと拳を握り込む。バリン! ランスが弾けて力場内で氷刃乱舞「準備できたよ……途中で(術式を)変更したから、なんだろう? コレ。バーストボールとでも言うかな。まあ良いか」

 「勿体無い」シフは残念。

 「……よっ」ルシールは少し考えて思い切り投擲する。術式変更で魔力による投射力が失われているので人力で投げるしかない。放物線を描いて魔法力場が飛んでいく。数秒後、それは空中でパキンと弾けた。全方位に氷刃を強烈に撒き散らす。敵味方関係無い。

 ズバ! ズバザンザザザザザ! バシュ! ギン!

 「うわっ!」ルシールは慌てて伏せる。

 「う! うおおおおおおお!」シフは機敏に手槍で弾く。

 「やれやれ」ガボルアは目にもとまらぬ早業で槍を回転、弾きまくる。自分、それから仲間を守る。風車かざぐるまという技だ。

 スィラージは木の盾で頭を守り、次いで伏せたが「ぐはっ! また! ケツに刺さった! 痛い」中途半端な伏せ方で尻の位置が高かったようだ。盾は山村ダシルで暇潰しに作ったものである。

 シフはルシールを責める「またか! どうしてお前はいつも味方に当てるんだよ、この洗濯板!」

 「うるさい黙れ」だんだん頭にくる「カス野郎」込み上げる思い出し怒り「だから! ネギでも刺しとけば良いんじゃないの!」

 スィラージが痛みに悶える「ああもう痛い畜生! 愛してるぜルシール!」

 「意味がわからないんだけど」

 「へへ、シフ抜いてくれ」スィラージは何故か嬉しそう。

 シフもニヤニヤ「ちょっと待ってろ、うふ、中々格好良いぞ」

 スィラージが叫ぶ「いいから早く抜け! あばらが折れてんだ(謎)!」

 「はいよ」

 「痛くしないでね!」

 「あっはっはっは、だから無茶言うな」ズボ!

 「うぎゃあああああああああ! ルシール! 早くヒールを! 頼むぅ! た、助けてくれー!」

 「あっはっはっはっはっはっはっはっは、だから大袈裟すぎるんだよ。この程度の怪我で」

 大騒ぎである。

 「あーイライラする」ルシールはムカムカする。

 「やれやれ」ガボルアがいつもの感想。

 「コホン、それでライオンたちはどうなったかな」ルシールはガボルアに尋ねる。自分が避けるのに忙しくて見てなかった。

 ガボルアが遠望する「ふむ、逃げてはいないな。遠巻きにこちらの様子を見ているようだが」包囲の輪は大きくなったか。多少は警戒心を呼び起こしたようだ。

 「向こうの数はどれくらいなの?」

 「まだわからん。大きな群れなら40以上。なるべく(魔力を)節約しろよ」

 「りょーかい」

 「ま、接近戦になっても大丈夫だ。最初の攻撃を俺たちがしのぐから、それから反撃してくれれば良い」少し楽しそうな声音と好戦的な横顔「というかあぶれた奴を潰してくれれば良い」

 「あとは俺たちがやる」スィラージが無駄にカッコいい顔をする。

 「りょーかい」ルシールは思う。この男たちは緊張感が足りない、と。

 「ふむ、獅子狩りは久しぶりだ」ガボルアが槍を振る。

 シフが注意を促す「あんたが狩られないように気をつけろよ」

 「ほざいてろ」

 


 ライオンの襲撃を待っていても仕方ないので、一行は警戒を強めて進む。シフが先頭、二番手にスィラージとルシール、最後尾をガボルア。

 ルシールはあまり怖くない。まず自分の実力を信じているからだが、メンバーとの連携と信頼が築けたからでもあると思う。今まで相手にしてきたのは砂鮫と人間と猪で10回ほど。警戒態勢を組んだのはその倍以上。

 シフが言う「なんというか、俺たち、ちょっと良いチームになってきたな」

 ガボルアが同意「……ああ、そうだな」

 「へへ、実は俺、この旅が終わったら結婚するんだ」シフ突然の告白。

 スィラージが応じる「またそうやってすぐ不吉なフラグを立てる」

 「なんのネタ?」ルシールはアニメエリートに尋ねる。

 「アニメ演出概論からの出題だ。君も憶えておけ」

 「……誰と? って聞かないの?」シフは聞いて欲しそう。

 スィラージが論破「だって嘘だからな」

 「ぬう……ところで突然ですがここでクイズですTHE・FAINAL」

 「さすがにそれは後にしようぜ」

 シフはぶつぶつと続ける。

 「長きにわたり皆さまを楽しませてきたあの! 性格診断クイズがついに最後の日を迎えました」段々とノリノリ「あの日、あの時、あの場所で! 皆様の思い出の1ページを彩ってきたウルトラ性格診断クイズがついに今! 栄光のフィナーレを!」

 スィラージが笑う「君の頭がフィナーレだよ」

 「ばぶ?」

 「ばぶーーーー!」

 「あっはっはっはっは、元気だなあ、何か良いことでもあったのかな?」

 「ぺっ! よんじゅん!」



 一度は広がった包囲の輪が再び小さくなってきた。並走して左右にライオンが4,5頭現れた。後方にも3頭。全て雌。まだ増える。こちらの隙を窺っている。執拗で慎重だ。やはり大きい。メスでも大きい個体は180kgに達する。

 「ちょいと多いな」

 シフは言うがちょっとどころではない。

 ガルルルル! グオオオオオオオオオ! 周囲で怒号が湧いた。

 「ありゃあ大人気だな、頼むぜガボルア」

 「こういうのは気合いで負けたら駄目だ」不敵な表情。前傾に整えた構えが張り詰めたものになる。

 シフが叫ぶ「ブリッツンデーゲン!」ノリノリ。

 スィラージも叫ぶ「ブリッツンデーゲン!」まだ恥じらいがある。トンデモ設定のSFロボット戦記アニメの掛け声だが。

 「怯んでくれないなあ」

 「駄目だな、心の力がこもっていないからだ。もっと本気で、心を解き放とうぜ」シフは丁寧に指導する。

 「あっはっはっはっはっは、そこまで恥じらいを捨てられないよ」

 ルシールは掲げた手に魔力を練った。

 「アサルトの準備できたよ」

 



 一方その頃、エルクは港町レグスの『ジプラザ・レグス店』でパチンコを打っていた。隣の台には部下のラゴウが座る。戦場のようなけたたましさ。打つ機種は『仮面舞踏会(※1)』。リーチに入ると少女が踊るロリコン御用達の台である。

 「出ませんね」

 「そうだな」

 「今日は何食べましょうか」

 「……豚の生姜焼き?」いきつけの居酒屋メニューは全て制覇した。

 「良いですね」

 「あとトリカワ」

 「本当に好きですね。じゃあ俺は山芋鉄板」

 そして事件が起きた。一人の男がいきなりハンマーで台を強烈に叩きだしたのだ。

 ガシャン! ガン! ガン! バキ!「クソが!」ドガン!「舐めやがって!」

 割れたガラスが飛散する。他の客は遠巻きに眺める。誰も止めようとしない。

 「……ひどいな」

 「ひゃはっ、パチンコは計画的に、ですねアニキ」

 「こんなのやる奴が馬鹿なんだよ」

 「そうですね」

 やがて強面の黒服が出てくると、暴れていた男は一目散に逃げて行った。

 「意外にも冷静だったな」

 「けっこう足速いですね」

 二人も店を出た。カダ湖南北航路はまだ再開しない。




 【※1 仮面舞踏会】メーカーはストライクイーグル社。大当たり確率365分の1。大当たり時の確変突入50%。16R出玉2000発。演出としては少女しか出て来ない。軍人、魔法少女、踊り子、幽霊、近所のイケてる少女、何故か年下の家庭教師などなど様々な少女が登場する。ロリコン御用達の台として知られる。波の荒さが特徴で、アルティメットモードに入ると確変継続率93%という夢仕様「50連チャン(10万発(帝国金貨4枚、40万円相当))したから会社辞めた」という報告もある。

スィラージ「感想書いたことある?」

シフ「もちのロンくさベイビー♪ 毎日朝昼晩の食後の嗜みだろ?」

スィラージ「嘘をつくなカス野郎」

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