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1-21 キノコ採取は古代遺跡で(お前らもっとキノコ採れ)

 森に飲み込まれようとしている石造2階建ての古代遺跡。そこが今日の仕事場だ。実績のあるキノコスポットだという。元は寺院だろうか。いつの時代のものか定かではないが、大掛かりな石組みが今も健在だ。獅子の石像が屹立している。刻まれた文字は読めない。そこかしこに木の根が巻き付き、半ば土に埋もれている。遺跡を貫く形で小川が流れている。

 「ほう」シフは顎を撫でて見渡した。

 一見してたくさんのキノコがある。椎茸、舞茸はもちろん、松茸と思しきものも見える。

 「なんてこった! 松茸まであるじゃないか!」

 スィラージも大興奮「マジかよ! 松茸だと! こいつはまさにファンタジー!」

 「そうだ! ファイナルファンタジーだ!」

 「あーうるさい」ルシールが言った。

 少年は自慢げ「すごいでしょ」

 実績はあるが、今この場所でキノコ採取されていないのは理由がある。

 それは特殊な野獣、四本牙の大きな猪の存在だ。基本、夜行性だが、霧や雨の時も現れる。ここは晴天時のみ安全にキノコを採れる、そういう場所なのだ。昨年は急な雨でも奴が現れ怪我人が出たという。それから立ち入る者は殆どいない。

 「そいつは面白そうだ」ガボルアは警戒役に徹する。槍を振ったり準備体操したりと余念が無い。

 猪か、昔(剣闘士時代に)何度か戦わされたが、あれでけっこう強敵だったな。不用意な攻撃は弾き返す。スクリュードライバーとか貫通力の高い技じゃないと効かないんだよ。

 そういうわけで突き技の練習。捩じりこむように打つべし!

 猟犬のゲレゲレは最初警戒していたようだが、今は穴を掘っている。スィラージに噛み付くのはもう飽きたと見える。

 「これだけたくさんあるなら、狙いを絞るか。おい少年、どのキノコが高いんだ?」シフは少年に尋ねる。

 「やっぱ松茸かな。僕は臭いから好きじゃないんだけど」

 「やれやれ、まだお子様だな。匂いが良いんじゃないか」

 「だがそれが良い!」スィラージが無意味に奇妙なポーズ。

 シフは方針を決める「よし、今日は松茸オンリー松茸祭りだ!」やはり標的は絞った方が良い。それだけで毒キノコと間違える確率がぐっと下がる。

 しかし、改めて見るとあるわあるわ大漁だ。ぽんぽん見つかる。片端から籠に放り込む。確か松茸は赤松に生えるのに、この木はどうみても赤松には見えないような気がするが? まあ気にするな、これは赤松だ!

 


 キノコを採りながらシフはスィラージに話しかける。

 「ところで昨日さ、借りてた『魔法少女 香子ムラサメ』の1巻読み終わったんだけどさ」

 「お、ついに読み終わったのか。また一つ、真の男に近づいたようだな。あとはそれのアニメを見たらパーフェクトゥ♪」

 「あれ、みんな高校生って設定なんだよな?」

 「そうなるな」

 「あの挿絵おかしくないか? みんなどう見ても幼すぎると思うんだが。小学生高学年か、贔屓目に見ても中学生だぜ?」

 「む……そうでもないのでは? ちゃんと高校生らしくイチャイチャしたり、ちゅっちゅキュンキュン(※1)したりしているよ?」

 「あっは、それどっちも同じ意味だよな。ちがう、そういう話じゃないんだよ。体形の話だよ。小さいし、幼すぎるだろ。それが一人二人ならともかく、全員ってどういうこと?」

 「……」

 「まあ、だから買ったんだろう? あの挿絵があるから。やっぱ、あの絵は最高だぜ!」 

 「ぐはあっ!」

 「はあ」やれやれとルシールが周辺を見渡す。

 「いい加減に認めろよ、このカス野郎が! あの絵を見て満足したんだろ? 早く認めて楽になっちまいな、身体は正直だぜ? この金髪ロリコンハゲ野郎が」

 我ながらなんだか今日はとっても攻撃的なシフである。

 スィラージが笑いだす「あっはっはっはっはっはっは、無茶苦茶言うなコイツは。どうしてそこまで言われなきゃならんのか意味が分からん」

 「ひどいねえ、普通の人なら喧嘩になるよ」ルシールは岩陰で休憩。

 シフは肩の力が抜けた。スィラージもルシールも、結局何も変わらない。ルシールはどうかまだ知らないが、スィラージは性格が隠し事に向いていない。すぐ顔に出る正直な男だ。くだらない勘繰りだったか。

 「すまん、言い過ぎたな。お詫びにこれをやろう」スィラージの手に、見えないようにプレゼントを握らせる。

 「ん、何これ?」

 「今そこで拾ったドングリだ」

 「ぺっぺっ、カス野郎!」シフに投げつける。シフは機敏な動きで躱す。

 「あっはっはっはっはっは」シフは笑う。もしも仮に疑惑が真実だったとしても、こちらの気持ちにはまだ名前さえ無い。単に祝福するだけじゃないか。心の中にすとんと落ちた。

 「よし、気合い入れてくぞ、今日はキノコ祭りだ!」

 「なら誰が一番大きな松茸採るか勝負しようぜ」スィラージが提案する。

 「乗った。勝ったらこの女に好きなことをする権利がもらえるってことで」シフは親指を立てる。

 「はあ?」ルシールが睨む。

 「、」シフは一瞬言葉に詰まってから「ちーんジャラジャラ、ちーんジャラジャラ」何故かパチンコの玉が出る音を真似る。さらに意味不明なことにフラダンスのように両手をゆらゆらさせる仕草。

 「ふざけるな! このカス野郎ッ!」バキイッ! ルシール渾身の右ストレートが炸裂! 伊達メガネが飛ぶ!

 「ぐはあっ!」シフはひっくり返る「良いパンチしてやがるぜ、女のくせに」がくり。

 「まったくこいつは! まったく!」赤い顔してぷんすか。手の早い女である。

 「あっはっはっは、君は何がやりたいんだよ、何が」スィラージが眼鏡を拾う。

 少年はしゃがみこんで「さっきから何遊んでんの?」

 「お前ら、キノコ採れよ」ガボルアがひとこと。

 「わかってる、さあ採るぞ」シフは鼻血が出たので布を詰める。メガネのフレームが少し変形したので曲げて直した。

 ゲレゲレはまだ穴を掘っている。

 「お前はいい加減にしろよ」少年がゲレゲレを捕まえて穴掘りを中断させる。

 「わう?」可愛い子ぶっても駄目。

 「お前もなかなか困ったちゃんね」ルシールが撫でてやると尻尾を振って嬉しそう。



 高原の天気は変わりやすい。急激に曇り霧が立ち込め始めた。風に乗って蠢動が見えるほど霧が深くなる、て変化があまりに急激すぎる。

 少年が警告する「ガボルアさん、気を付けて。出そうな感じだよ」

 「おう」

 全員黙る。ゲレゲレが鼻を使う。

 「ホントに出るのか?」スィラージが言った。

 遺跡を貫く小川がさらさらと流れている。

 ガサガサと藪を掻き分けて、四本牙の猪が現れた。これは大きい。子象ほどもあるか。堂々として威厳がある。敵意に満ちた表情で侵入者を睨み付ける。前足で地を掻いている。

 ゲレゲレが唸りながら後退するが、気を取り直したのか前進「ワン! ワンワン! ワンワンワン!」猛烈に吠えたてる。

 「これは立派だな」ガボルアが瞠目する。これほどの大物は滅多にいない。

 「おい、アレ。あいつの背中にもキノコが生えてるぞ」

 その背に小振りなキノコが10本ほど生えている。

 「ギルドのキノコ担当として確認する必要があるな」シフは言いながらも撤退を考えている。あの大きさ、威圧。狩りというには危険が過ぎる「おい、ここらではあんなのが普通なのか?」

 少年が首を振る「あんなでかいの見たこと無いよ」怯えている。



 ガボルアが前に出て槍を構える。どうする? と視線で問う。

 仲間たちも戦闘準備。

 ルシールは最初からアイスランスの手袋を嵌めている。

 「キノコが生えた猪だから、キノシシと呼ぼう」どうでもいいことを決めるシフ。

 そしてキノシシが突撃敢行する!

 思い切り良すぎるだろコイツ! 標的はルシールか。

 スィラージが思いきり「はっ! っっっくしょーーん!」盛大なくしゃみ。シフたちは何事かと注目。

 キノシシもびくりとしたが突撃は止まらない。もしかして相手の動揺を誘う技なのか?

 「な! なに? なんなの?」少年が激しく動揺した。

 シフは「まったく」

 ルシールは「もう」

 ガボルアは「やれやれ」

 ゲレゲレは「ワン(何やってんだカス野郎)!」

 ルシールが虚空を手繰って魔力を練る。

 「おいそんなの後にしろ!」シフは珍しく慌てた。




 【※1ちゅっちゅキュンキュン】男女が仲良くしている様子。性的な意味を多分に含む。奇才スィラージ・コルテストゥーンによる造語。

シフ「いいこと教えてやる」

スィラージ「まったく期待してないけど、暇だしどうぞ」

シフ「小説だから分からんと思うが、実はルシールってノーパンなんだぜ?だから感想書いてみようぜ」

ルシール「死ね!死んでしまえ!アイスランス・フルバースト!」


自宅の机でパソコンに向かうとあまり進まないけど、現場で仕事の待ち時間に書くと捗るなあ。

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