1-0 前文/いつも通りの乾いた空だけど何故か心に沁みてくる
占い師が自分を占うもんじゃないとは言うけれど、たしかにアタシはロクな目が出た例が無い。マジで救えない。
かつて先生は言った。
「魔法は万能ではない。大切なのはバランスだ」と。
今ならわかる。骨身にしみるほど痛感させられた。
生きるために名を変え、瞳の色を変え、髪の色を変え、家族から過去から逃げた。
どこで間違えたんだろう。
答えはわかっている。身に余る力を得たせいだ。しかし自分の母親を助けたいと願うのがそんなにダメなことなのか。
後悔は無い。しかしまた同じやり方で母さんを助けるかと問われればわからない。何度でも助けると言うには辛いことが多すぎた。
自分の才能を過信していたのだろうか。
魔法に不可能は無いと傲慢だったのだろうか。
未来からの警鐘には耳を塞ぎ、過去からの悪夢には目を逸らし、とにかく今日という日をやり過ごす。考え始めると人生に絶望する。諦観それから孤独。それがあたしの日常だった。
だから今は……少しだけ楽しいかな。ひたすら歩くのはきついし、くだらないことしか話していないけど。どうかしてるとしか思えない馬鹿な連中だ。
神様に出会いを感謝する? 正直微妙。
代り映えのしない風景の中、延々歩いていると思考が内へこもってくる。
それを遮ってくれるのは緊張感の無い朗らかな声。
見守ってくれるのは落ち着いた眼差し。
苦笑させられるのは子供のように無遠慮で下劣な物言い。
あたしの名はルシール・デュランザルフ。生きるからには歩かなければならない。渇いた風に舞う熱砂。いや熱砂というほどに熱くないかな。




