1話 何もないので取り合えずしりとりでもしよう
「目を覚ましたら、そこは異世界だった。」
という展開に、憧れを持ったことがある人はいるだろうか。僕はある。というか、常日頃から思っている。
現実の不甲斐ない自分でも異世界へ行く事が出来れば、何か変われるかもしれないという想いから、常に非日常がやって来ることを望んでしまっている。
他人任せで自分から変わろうと思っていない、と思われるかもしれないが、その通りだ。新しいことをしようにも理性が「やめろ」と止めてくる。本能は理性より弱く、行動ができない。そして「欲」だけが残る。想像し、妄想し、空想し、夢や憧れが増えるごとに、現実の不甲斐なさに痛感させられる。
だけども、「変わりたい」と思っているときには、なにかきっかけが来るのをただ待ってしまう。自分からは、なかなかにいけない。こうゆう時、何も考えず行動できる、ある意味馬鹿な人達のことがすごいと思える。
だが、僕にはなれないことを知っているから、全裸で叫ぼう
「くそぉぉぉぉぁぉ!!!!!!!!!!!!、!!!!!」
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全裸で叫んでも僕は捕まらない。それは、家の中だからというわけではなく、僕は誰もいない、多分異世界なるところにいるからだ。
展開が急過ぎて追い付いていない人がいると思うのだが、僕の方が追い付いていない。
異世界へ行きたいと思っていたら、いつの間にか僕は異世界へいたらしい。……こんなことラノベの世界だけのものだと思っていたからな。
今僕が見ている景色を説明すると、ただ何もなく、人もなく、色もなくただ白い世界。……………オモッテタノトチガウ。
異世界というと、「森には魔物が蔓延り、討伐し換金することによって報酬を得る事ができる」という世界観の物というのが、ライトノベルや漫画なのでは定番である。それが、僕が今見る限りでは、何もない。今、立っているのが地面なのかもわからないほど白い。
歩いても歩いても、果てはなく、果てどころか何もない。何もないとやることもない。「異世界行ったらやってみたいことランキング」で堂々1位の【チート能力で何らかしら目立ちたい】、というフワフワした夢が叶わないというのが悲しすぎて泣きそうになる。
だが、今問題なのは本っっっっっっ当に暇ということだ。周りの音も無いこの空間の体感時間はえげつなく、1分が1時間程に感じる。もう、暇死にしそうである。
まあ、あれだ…しりとりでもするか。
1話 何もないので取り合えずしりとりでもしよう
「しりとり」
「りんご」
「ごま」
「マーズ(火星)」
「図工」
「渦」
「ずんだ餅」
「チーズ」
「図解」
「伊豆」
……いや、「ず」攻め!!!!!!!
「ず」から始まる言葉は少ない。しりとりにおいて「ず」を制するものは神に匹敵するとまで言われている。
<言われていない>
こいつ、しりとりを解っていやがる。
<注 一人でしりとりをしています。>
お前が「ず」で来るならこっちにだって手はあるんだ
「頭蓋骨」
「つ」だと、、、、!!「つ」から始まる言葉で「ず」で返せない!
いったん「ず」を諦めるしかない、、、。
「爪」
「馬頭」
、、、、。やられた。
相手は俺の事を知り尽くしている。
<注 相手は自分です>
しりとりをやり続けていたらいつのまにか、自分の目の前にはじぶんがいた。
「もう一人の僕」
某カードゲーム漫画の設定よろしくリアクションをしてみたがもうひとりの僕の反応はなくしりとりが続行された。
「ずら(かつらの略称)」
「ライス」
「鈴」
「ず」で攻め「ず」で攻められる。自分が相手ということは、戦略も自ずと同じになる。いままで「ず」攻めで勝ってきたが、その戦績は相手も同じである。
変わるしかないんだ!今ここで、このしりとりを制するために新たな戦略を思いつかなければ勝てない。
僕は探した。僕に勝てる作戦を。「ず」に頼りきっていた僕の人生に終止符をうつために。
<ただのしりとりです>
なにか、なにかないか!「ず」に変わる攻めの手は。
探しても、探しても見つからない。「ず」以外を探すということは「ず」が最強だと信じていた僕の青春を否定することになってしまう。
<彼が学生時代にしりとりを行った数は5回です。>
あの頃の青春を無駄にしないためにも
<彼は高校を5日で退学しています。>
そんなことを考えていると僕の頭の中に雷が落ち、アイディアがひらめいた。最強にして、勝てる一手を。
僕はこのしりとりに勝利し、神になる。
このなにもない空間で勝利を納める事、それすなわち「神」と同義。
さあ、僕の最高の一手をおみまいしてやろう。
「図」
「ZOO(動物園)」
うん、もうやめようかな。。。。