お宝展示室(8) バレンタイン小話も一緒に置かせていただきました。
やえ様にいただきました!
バレンタインなハクとりこです。
ハクのきらきらお目々が眩しいです!
甘くてほのぼのな、とっても可愛いイラストです♪
やえ様、素敵なイラストをありがとうございました!
「……(ばれんたいん、なのだ!)」
「え? ハクちゃん、なに?」
「……(今日はばれんたいん、なのだろう!?)」
「ハ、ハクちゃん(うわっ! その顔、まぶしいです!)」
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☆以下、やえ様のイラストから妄想したバレンタイン小話です。(本編とはつながっていません)
「ハクちゃん、ハッピーバレンタイン!」
“はっぴぃばれんたいん”という、まるで呪文のような言葉と共に。
りこは我に小箱をくれた。
身をかがめ、差し出した我の両手に乗せられた小箱。
そう。
今日は“ばれんたいん”なのだ!
「……りこ」
我は食物を食わぬが。
食えぬわけではないのだ。
味覚が無い我だが、やはり“ばれんたいん”のチョコレートは欲しい。
正確には、チョコレートが欲しいのではなく。
欲しいのは。
我が欲しいのは。
りこの。
りこの、我への想いなのだ。
「ありがとうなのだ、りこ」
「ふふっ……どういたしまして!」
赤いリボンをほどき、箱を開けると。
そこには、見慣れぬ物体が5個。
「……ん?」
チョコレートが入っているとばかり思っていた我は、首を傾げてしまった。
……りこは以前、ばれんたいんの定番はチョコレートだと言っておったのに……これは何なのだ?
黒ではなく、茶。
しかも、粉だらけで……団子状?
これはなんなのだ?
我の知っているチョコレートはもっと黒く、艶があって……はて?
「……りこ。これはな」
何なのだと言いかけたが、我は止めた。
嬉しそうに微笑むりこの顔を見たからだ。
「ふふっ……良い出来でしょ?」
良い出来なのかっ!?
この泥団子物体が!?
「カイユと作ったのよ!」
「…………カ、カイユと作ったのか?」
料理上手のダルフェではなく。
父親が菓子職人だったランズゲルグでもなく。
ダルフェいわく、料理の才を母胎に置いてきたカイユと、りこは作ったのか……そうか、カイユと……そうだったのか……。
たとえ粉を吹いた泥団子だろうとりこが作ってくれたものならば、我は食うのだ!
泥団子だろうが毒物だろうが、死なぬ我には大差無い。
なんの問題も無いのだ!
「トリュフにしたの。これもね、チョコレートのお菓子なのよ?」
「……(泥団子ではないのか!?)ト、トリュフ? 我は初めて見た物体なのだ」
「初めて? そうよね、ハクちゃんは普段は何も食べないものね。……ハクちゃんは食感と香りは感じることができるでしょう? だから、トリュフにしてみたの。味は感じられなくても、これならハクちゃんが舌触りとお酒の香りが楽しめるかな~って思ったんだけど……」
りこは我の手の中にある小箱から一粒つまみ、我の口元へとそれを寄せた。
「ハクちゃん、あ~ん」
いつもと逆に、我が“あ~ん”されるという状況に。
「……ッ!?」
心臓、大きく上下に跳ねた。
それは揶揄ではなく、実際に体内で起こった事で……我の心だけでなく臓器すら易く動かすとは、さすが我のりこなのだ!
「では。いただきます、なのだ」
「はい、どうぞ」
ころりと、咥内で転がるトリュフは。
未知の食感と酒の香りを、我に与えてくれた。
「どう?」
「……うむ。これは初めての食感だ。あぁ、確かに酒の香りが………おもしろい、のだ」
我を見上げるりこの瞳が。
我の言葉を聞くと、細められた。
味が分らぬ我のために、りこはこれを作ってくれたのだ……。
「おもしろい? 良かった~!」
美味いと言えぬ我を、りこは責めず。
嬉しそうに、笑む……。
「…………りこっ!」
笑むりこの愛らしさに、我の臓器全てが歓喜に震え。
熱を帯びた脳には、りこが以前教えてくれた情報が浮上した。
「……ん?」
りこの生まれた地域では、女から男に贈るのだが。
国によっては、男から女へも贈るのだと言っていたのだ。
だから、我もりこに贈ってもよいはずなのだ。
「……うむ、これにしよう」
我は小箱の中からひとつを選んで取り出し、自ら口に入れ。
「ハクちゃん、おかわり? 気に入ってくっ……んんっ!?」
唇を重ね。
りこの咥内へと、トリュフを入れた。
仕上げとばかりに、その唇をひと舐めしてから。
我は定番の文句を口にした。
「“はっぴぃばれんたいん”なのだ、りこ。さあ、まだ3粒あるぞ?」
「…………えっ!?」
愛しい貴女がいてくれれば。
いつでも我は、“はっぴぃ”なのだ。