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四竜帝の大陸  作者: 林 ちい
青の大陸編
120/212

第86話

「舅殿がメリルーシェに……いったいあそこで何があったんです?」


 あのお節介おっさんバイロイトが先代の息子。

 確かに驚いたが、俺的にはこのことは全く問題が無い。

 問題無いどころか、関係ない。


 問題は。


 この人(・・・)が行くって事だ。

 セレスティスは、強い。

 竜騎士の凶暴で残忍な本能に流されることなく、冷静な思考のまま全開で戦える数少ない……本当の意味で強い竜騎士だ。

 カイユには無理だし、俺もまだ自分を完璧にコントロールする自信は無い。

 だからこそ俺達『竜騎士』は、竜帝に管理される必要がある……自我を失い、獣にならないためにも。

「残念ながら、まだ何も無いよ」

 まだ、ね。

 しかも……‘残念‘か。

 セレスティスはベットに投げ出してあった刀を左手に持ち、何かを確かめるように鍔を右の人差し指で撫でた。

「あ、クロムウェルも連れて行くから……君ってあいつと仲良しだったよね? 後で会っておいでよ……最後になるかもしれないから」

 ゆっくりと歩み寄り、セレスティスは窓を開けた。

 火の気は一切無いが城内と同じ湯による暖房設備が床下に張り巡らされいた室内に、冷たい外気が一気に流れ込んできた。

 頬に感じる冷気が、今の俺には心地良く……ありがたかった。

 この人を相手にするには、旦那を相手にする以上の冷静さが必要だと思い知ったからな。

「つーことは、対術士戦ってことっすか」 

 星持ちの術士だって簡単に片付けちまうセレスティスが、クロムウェルを連れてくってことは。

 力技だけじゃ、勝算が無い相手ってことか?

「あんたがついていながら、あいつが負けちまうかもしれないほどの術士を討ちに行くんですか?」

 クロムウェルが負けるかもしれない相手。

 あいつは強い。

 人間にしておくのが惜しいほど、強い。

 あの旦那が陛下に「買え」と言ったほどだ。

 そのクロムウェル以上の……この大陸に片手ほどもいないはずだ。

 まさか……!?

「いや、そうじゃなくて僕があいつを守る気が無いだけだよ。だって、あのド変態が嫌いなんだもの」

 は?

「なぁ~に大人気ないこと、堂々と言ってるんすか! 仕事で組むんだから、そこんとこは割り切ってくださいよ。それに、あいつは真性ド変態ですが良い奴ですよ? 無害で有能です」

「無害!? 僕は陛下の父親から、あの子をくれぐれも頼むって言われてるの。あんな変態男、近づけたくなかったのに……だいたいね、君が割り込んだんじゃないか!」

 俺が?

 どこに割り込んだっつーの。

「それ、どういう意味っす?」

「カイユはね、現陛下のつがいになる可能性が高かったんだ。あの子の父親は、僕の顔が好きだったから僕に似たカイユを息子の嫁にして、僕そっくりの孫を手に入れて、僕の顔に囲まれた老後を過ごすっていう夢を持ってたんだ。まあ、死んじゃったから無理なんだけど……君が赤の大陸から来るなんて反則技を使ったんじゃない」

 カイユが陛下の!?

 んなの、冗談じゃねぇ!

 やっぱ、旦那に感謝だな。

 生ごみ寸前になろうが、カイユと会えたんだから。

「反則って……そもそも俺は来たくて来たんじゃねぇし。文句は旦那に言ってくださいよ! ってか、陛下の親父さん……そこまでいくと重度の変態なんじゃないっすか!?」 

 俺の言葉に、セレスティスは即反論してきた。

「違うよ。カッツェは変態なんかじゃない、単なる顔フェチなだけだ」

「舅殿、それを世間じゃ変態って言うんです」

「え? そっ、そうなのか!? 俺、知らなかった……カッツェが変態の仲間なんて……」

 あ~あ、俺になってるよ、この人。

 本当に知らなかったんだな。

「……納得できないから、街に行って変態に詳しいガルデウッドに確認してくるよ。荷物も作んなきゃだし、忙しいな~……じゃあね、婿殿」

 セレスティスは妙に軽い足取り俺の前を通過して扉に……おい、こら待ちやがれ。

「まだ話が済んでないでしょうがっ!」

「覚えてたんだ」

 銀の髪をさらりとはらい、振り向いた顔には胸焼けしそうな甘い微笑。 

「何気に俺のこと、馬鹿にしてません? ……俺には王子様スマイルは通じねぇぞ」

「ダッ君のいけず」

「ダッ君言うな!」

 ああ、嫌だねぇ~。

 この人相手だと、なんでこう本題からするっと方向転換されちまうんだろう。

 俺もまだまだだな……。

「話、戻しましょうや。俺も団長であるカイユも、メリルーシェの件は一切何も聞いてません。セレスティス、あんたと陛下は俺達……いや、俺達と旦那を蚊帳の外にする気なんですか?」

 セレスティスはともかく、陛下まで俺達に一言も無いなんてなぁ。

 うん、これはけっこうショックだぜ。

「あ、やっぱ君は流されてくれないね。……気分悪くしちゃった? ごめんね、婿殿」

「いえ。流されかかった俺が未熟なんです」

 もともとよそ者の俺はいいが、カイユは……。

「君とカイユを蚊帳の外とか……そういうわけじゃないよ? 君たちは今、四竜帝にとって非常に扱いが難しい立場であり存在なんだ。理由は、分るでしょう?」

「あぁ……なるほどねぇ」

 姫さんか。

 異界の娘。

 <監視者>の伴侶つがい

「つまり、四竜帝は俺等の所有権を旦那に……ってことですかね?」

 カイユはあの子の母親になった。

 驚いたことに、あの旦那がそう希望したんだ。


 ーーーカイユをりこの『母親』にする。


 はっきり言わせてもらうと、無茶苦茶だ。

 だが、四竜帝は是と言うしかない。

「うん。君達……君・カイユ・ジリギエを‘貰う‘って、あの人は陛下に言ったんだ。四竜帝全員、了承している」

 俺の息子・ジリギエは、四竜帝以外を<主>をする初めての竜騎士になる。

 実際、ジリギエは<青の竜帝>に頭を下げなかった。

 あいつはカイユの希望で竜帝より前に<ヴェルヴァイド>と、そのつがいである姫さんに会った。

 ジリはあの時、寝ていたんじゃない。

 感じて(・・・)いたんだ。

 ジリは卵からかえった雛のすり込みのように、竜帝より強い存在を……<ヴェルヴァイド>がこの世で唯一膝を折り、頭を下げる異界の娘を<主>にした。

「陛下が君とカイユに言わなかったのは、この件には係わらないって<監視者>に言われたからなんだ。陛下が何度頼んでも駄目だった」

 いろいろ整理して考ると、俺達に言わなかったのは……確かに、良い判断だったかもしれない。

 カイユが聞けば、自分も行くと言い張っただろう。

 セレスティスとクロムウェルが組んで相手をしなきゃなんねぇほどの術士なら、珠狩りの情報も持っている可能性が高い。

 カイユは母親を殺した術士を、ずっと探してきたのだから……命すら惜しまない。

 だが、旦那はそれをよしとしないだろう。

 カイユは旦那にとって現時点で最高の‘部品‘なのだから。

「旦那、この件に全く興味無いみたいです。竜族の危機より、嫁に食わせる献立のほうがよっぽど気になるみたいでしたからねぇ」

「あの人、僕達以上の嫁狂いみたいだったからね。冗談に聞こえないよ、それ」

「これ、マジっす」

「……はぁ。陛下に同情しちゃうよ」

 セレスティスの水色の眼が、天井に向けられた。







「さっきもちょっと言ったけどね。青の竜族は先代の散財のせいで、国庫がすっからかんだったんだ」

 散財……国庫が空になるほど、先代は金を使ったわけだ。

 先代は雌だったが、紅さえ注さない……華美を好まない性格だったと母さんに聞いたことがある。

 まともなことに(・・・・・・・)使ったんじゃねぇな。

 もしかして。

 金が無くなったのは……。

「ちょっと賢い猿みたいな人間を空から見下ろして、竜体で気ままに暮らせてた時代じゃないんだ。竜族が人間と平和的に共存していくのに必要なものは、近代種の特徴である穏やかな性質なんかじゃない」

 セレスティスは手に持っていた刀を腰に差し、柄を指先で数回弾いた。

「金だよ、金」

 水色の瞳には確かに俺がいるのに、セレスティスが見ているのは俺じゃなくて……違う何かなのかもしれない。

「手っ取り早く稼ぎ頭だった貿易事業を強化して、販路の拡大を計った。人間の商人を達出し抜くために、各国の権力者を取り込んだ……父親に似て、あの子は稀有な容姿を持って生まれた。僕等はそれも最大限に利用した」


 目の前にいる俺を見ながら。


「あの子の手にたった一度口付けるためだけに、民から吸い上げた富を丸ごと差し出すような馬鹿も多かった。あの子を一目見るために、数分の謁見に莫大な金が動いた」


 もっと遠くを。

 戻らない時間を。


「あの子に堕ちぬ輩は、僕等竜騎士が排除した。竜騎士が暗躍し、都合の良い者を各国の要職につけるようにして……奇麗事だけじゃやってけなかったから、人間のやり方を真似たのさ」


 失ったものを。


「あの頃の『裏』を知って生き残ってるのは陛下と僕、ニングブックとプロンシェン。そしてバイロイトだ」


 俺にはけっして見ることの出来ない何かを。

 この人はずっと見て……見続けて生きてきた。

 時々、俺は思うんだ。

 この人は地上に残った幻のような存在で、本物(・・)はミルミラの側にいるんじゃないかって。

「現陛下がセイフォン王家を特別扱いする理由は、ここのところにあるんだけどね。もう皆、死んじゃったんだから気にしなきゃいいのに、陛下はいつまでもいろいろいじいじじめじめ気にしすぎなんだよ……同じような顔でもカッコンツェルは、もっとからっとしてたんだけどな」

 カッツェ……カッコンツェル。

 陛下の父親。

 父親もあんな顔だったのか、美女顔遺伝子って強いんだな。

「珠狩りなんて過去に類の無い邪術の存在を四竜帝が知ったのは、ちょうどその頃だった」

 珠狩り。

 最初の被害が起こったのは、確か黒の大陸だったはずだ。

「邪術を練成した特定の術士が、竜の長寿や強化能力を得るために珠狩りしているのだろうと考えられていた。けどね……ずっと被害は数十年に数件だったのに、最近は全大陸で多くの被害者が出ている」

 それが今では全大陸に広まった。

 その点が、おかしいんだ。

 人間は海を越えて他大陸に移動できない。

 大陸間移動が可能なのは、渡り鳥などの野生動物と竜族だけだ。

 なのに何故、手の付けられない疫病のように珠狩りが世界中に広まったんだろうか?

「多分、奴は今までは自分の延命のために、単独で珠狩りをしていたんだと思う」

 カイユの母親・ミルミラを殺し竜珠を奪ったのはセイフォンの元王宮術士だ。

「世界中で珠狩りの被害が急激に増えたのは、ミルミラが殺された後だ。導師は邪術を伝授することに成功したのを確認し、次々と珠狩りのすべ信者でし共に授け竜珠を集めだした」

 珠狩りが可能な術士は、導師だけじゃないってことだ。

「今までは陛下だって、<監視者>の力を借りずに竜族だけで解決しようと努力してきた。でも、正直ここまで被害が拡大したら僕達竜騎士だけでは、対処できる限界をとっくに越えている」

「悔しいことですがね、後手後手にならざる得ないですよ」

 竜族は個体数が少ないうえ、術士と互角以上で戦える『竜騎士』は年々数が減っている。

 全体の出生数自体が下降の一途なのだから、当然の結果だ。

「けどね、君達がセイフォンに行っている間に事情が変わってね。陛下も他の四竜帝も、<監視者>……<ヴェルヴァイド>をこの件に関わらせようとしたんだ」

 普通の竜族は人間よりは強いが、術士には敵わない。

 このペースで狩られていけば、人間の乱獲により絶滅させられた他の生物と同じ末路だ。 

「そりゃ、旦那の力を借りれれば助かりますがね……旦那が竜族にこれ以上‘近く‘なったら、人間共は危機感を強めて、竜族を……だから、今までだって……」

「だから、それは事情が……状況が変化したからさ。僕達が追っている導師が真に欲しているのは、<監視者>……<ヴェルヴァイド>だと分ったからだ」




 ヴェルヴァイド?




「なっ……」

 <ヴェルヴァイド>……旦那を!?

「導師にとって僕等竜族は素材・・であり、実験・・としての役割もあったんじゃないかと四竜帝達は考え始めている」

 旦那が人間に……どんなに優れた術士だろうと、負けるはずが無い。

 竜族だけじゃなく、人間だって嫌ってほど分っているだろうに。

「正直言って、メリルーシェの契約術士が使える可能性は低かった。あいつが導師とつながってるか、半信半疑だったんだけど……やっと、動き始めたんだ」

 竜騎士じゃないバイロイトに、術士は抑えきれない。

 契約術士は契約中は雇い主と結んだ『ことわり』によって、雇い主を殺害することはできないが……。

「それって、いつぐらいからです?」

「<監視者>がペルドリヌの教主をミンチにした後」

 ずいぶん時間が経ってるな。

 それだけ慎重に、陛下は機を探ってたってことか。

「あの人、贈物だって言って教主の頭部を陛下にくれたんだって。なんで喜ばないのかって、おかんむりだったらしいよ? 面白い人だよね」

「……陛下は血を喜ばない。逆にそんな旦那を見て、辛い思いをしたんじゃないんですか?」

 陛下にとって‘ヴェル‘という存在は、特別だ。

 陛下だけじゃない。

 俺の母親も……四竜帝にとって<ヴェルヴァイド>は特別な存在だ。

 だから、か。

 だから。

 陛下は、旦那を守りたかったんだ。

 負けるはずがないことを知っていても、不安だったのかもしれない。

 特別な、大切な人だから。

「ペルドリヌ……あれは予想外だったね。怒り狂って、ついでに人間全部処分しちゃうの期待してたんだけど。上手くいかないもんだね」

 予想外……。

 予想!?

「まさか、あんた……」

 なんてこった。 

 勘弁してくれよ!

「ふふっ。僕は君達が首尾よくおちびちゃんを連れて城に戻って来る前から、カイユに頼まれて帝都のお掃除の準備をしてたんだ。……おちびちゃんに手をあげたあの術士は、わざと城に入れてあげたんだよ」

 ちったぁ、手加減してくれよ。

「あ、陛下は関係ないからね。この件に関しては僕だけ……<監視者>の怒りが僕個人にくるのも大歓迎だったし、どう転んでも損は無かったんだ」

 ああハニー、君の親父はとんでもねぇにもほどがあり過ぎだ! 

「……ねぇ婿殿。君が先日、四竜帝に提案した方法は最終手段だ。ぎりぎりまで、待て……待ってくれ」

 セレスティスの顔から、笑顔が消えた。

 四竜帝への提案。

「っ……」

 その事をこの人が知っていると思っていなかった俺は、答えに窮した。

 あのなぁ陛下、カイユの父親であるセレスティスには、俺としちゃぁ知られたくはなかったんだけどねぇ。

「陛下は……あんたにゃ何でも、ぺらぺら喋っちまうんですねぇ……」

 俺は電鏡の間で四竜帝に集まってもらい、ある提案をした。

「……他に方法があるって、あんたも言うんですか? 不死どころか個体強化にも失敗したって、旦那は言ってんですよ!? 人間の寿命は短い。のんびり構えてちゃ、手遅れになる」


 <監視者>のつがいをこの世に留めおくために、導師の‘やり方‘を使えないかと。

 俺は四竜帝に、そう提案した。


「俺の中にあるこの竜珠を姫さんに使ってくれって言ったら、<青>と<赤>が黙りこくっちまって……採決までには至りませんでした」

 俺はどの道、長くないから。

 この命を。

 あの子が、1日でも長く生きるように。

「竜珠が延命に使えるのは、竜のつがいになった人間が長寿になることからも……導師が数百年も生きてるらしいってことでも証明されている」

 カイユとジリギエに。

 遺したいんだ。

「舅殿」

 この世界を。

 君達に。

「クロムウェルを生きて……今後も使える(・・・・・・)状態で帝都に帰してください。あいつが……陛下の為ならなんでもする‘高品質‘の術士が必要なんです」

 竜族は術式が使えない。

 一説では竜族独自の特殊な能力……竜体と人型を持つせいらしい。

 その変化に莫大な力が必要なために、術式を使うための力を溜めておくことが出来ないからだといわれているが……。

「おちびちゃんは異界人だ。こっちの人間と全く同じ結果になるかは分らない」

 もし、うまくいけば。 

 そうすれば、姫さんは死なない。

 死なせない。 

「だから、俺で試して欲しいんですよ」 

 姫さんは死ねなくなる。

 あの子は捧げられた命を、投げ出すことなど出来ないだろう。

 俺は。

 俺の愛しい人のために、大切な存在のために。

 姫さん、あんたを。

 あんたには。

 生贄の命を喰らって生かされる地獄せかいを……。

「……わかったよ、婿殿。クロムウェルは必ず‘使える状態‘で戻す」


 あんたには。

 地獄を。


「ダルフェ。<監視者>……<ヴェルヴァイド>の存在を快く思わない者は過去にも、そして現在にも多く存在する。あの人は常に怖れられ疎まれ、憎まれてきた。昔から人間の勇者だか英雄だかか何度も倒そうと、封じようとしたが誰も成功しなかった」

「……導師は旦那を殺して‘世界を救いたい‘んですかね? どんだけ阿呆なんだ。くだらねぇ」


 ごめん。

 ごめんな。


「導師が世界を救う? ははっ、まさか! 僕、さっき言ったでしょう? 導師は<監視者>を……<古の白(ヴェルヴァイド)>を手に入れたいんだよ」

「っ……導師って奴は狂ってる」


 旦那は、ヴェルヴァイドは。

 <ハク>はあんたが側にいなきゃ、駄目なんだ。


「狂ってる……そうかな? その尽きぬ欲望が、人間の進化の原動力なのさ。それを狂気といい、畏れを感じてしまうから……竜族は滅び、この世界には人間が残るんだよ」


 この世界には。

 姫さんが。


「ダルフェ。僕はもう二度と間違わない、失敗しない。僕の生きる理由は、君と同じだ」

「セレスティス……」


 カイユ。

 この世界には。


「君の望みは……願いはなんだい?」


 <りこ>っていう贄が、必要なんだ。


「言葉にすれば、もう引き返せない。それでも、君は……カイユに愛を誓ったその口で言えるかい?」


 アリーリア。

 こんな俺を、君は軽蔑するか?


「俺は……愛しい者達が生きるこの世界を、遺す」

 

 君が、愛しいから。

 一緒に死んでくれるとまで言ってくれた、君を。


 俺は君を、裏切る。

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