4~5月の小話 ~ヒュートイル~
チテセの木の下で。
無数の針の集まりのような花の透き間から空を見た。
チテセの花は赤い。
白ばかり集められた此処では目立つ。
だから我は此処にいるのだろうか?
「この木、気に入った? 先月移植させたんだよ」
死体のように寝転がり。
花の色を。
空の色を。
何故。
見続けているのだろうか?
「もう3日間もここに寝転がってるけど。何してるんだい?」
セイフォンの離宮に。
「また無視? 聞こえてるクセに。……ねぇ、化け物」
何故、此処に来たのだろうか?
<処分>するべきモノなど、存在せぬのに。
「化け物は世界で一番の年寄りなんだろう? 皺一つ無いなんて、若作りにもほどがあるよ。動かない……表情が無い、良くできた作り物みたいな顔だよね」
ヒュートイルは我の腹に跨り、両手で頬を撫で回すようにして触れてきた。
「睫毛に触れても瞬きひとつしないなんて。反射神経って言葉が世の中にあるの、知ってる?」
ヒュートイルの右の親指が、我の目元をなぞるように触れた。
「あんたと寝れば、不老不死になれるって本当? ははっ、そんなわけないか! あの女、首切ったら死んだしね。一応、僕の妃の一人だったんだけど……ま、いいや」
ヒュートイルの左の親指が、我の唇に触れた。
「体温、低いんだね」
ヒュートイルの指が2本、咥内に入り我の舌に触れた。
「うわっ、舌まで冷たい。これじゃ、ショコラが溶けないね。まあ、化け物には菓子を味わうなんて高尚な感覚は必要ないか」
ヒュートイルは言った、我の口から出した2本の指を眺めながら。
「あのさ、化け物。僕が思うに……あんた、この中にはいないんじゃないかな?」
人という生き物は。
「さあな。我にも分らん」
時に、我の中の何かに触れる。
それが何か。
「我には分らん」