メイと再会
メイのいる部屋。
前の廊下では警備の警官がイスに座ったまま、部屋の中では研究員と刑事が机に伏せて眠っていた。
二人はドアの前で別れ、ヤヨイはその足で玄関へと向かい、ガンタンはそのまま部屋に入った。
オリの中でメイが眠っている。
「メイ、オレだ」
ガンタンは軽くトビラをたたいた。
目を開けたメイが、ガンタンに向かってうれしそうに両手を伸ばす。
「オッカアー」
「すぐに出してやるからな」
「オイラ、ハラヘッタ」
「がまんするんだ。あとでうまいもん、腹いっぱい食わしてやるんでな」
ガンタンは自由になっていたトビラを開け、メイを抱きかかえるようにして出してやった。
「メイ、よく聞くんだ。オレがいいと言うまで、ぜったいに声を出すんじゃねえぞ。悪いヤツらがいっぱいおるからな」
「ウン」
メイがコクリとうなずく。
「よし、いい子だ。しばらくの間、この中に入ってるんだ」
ガンタンは布袋にメイを入れると、ドアをわずかに開けて廊下をのぞき見た。
少し離れた廊下に、ヤヨイとワゴン車を押す作業服姿の二人がいる。
三人と合流したところで、ガンタンはワゴンにすばやく布袋を入れた。それを隠すように、トウジが別のゴミ袋を上に置く。
「たのんだぞ」
「まかせとけ」
ゲシロウがマスクの下から答える。
ゲシロウとトウジの二人は、そこでワゴン車を方向転換させて玄関へと向かった。
「うまくいったわ」
ヤヨイが満面笑みで右手をさし出す。
「アンタのおかげだ。他人を信頼するってのは、なんとも気分がいいもんだな」
ガンタンは照れながら握手を返した。
そのあと……。
二人は堂々と玄関から歩き出て、駐車場にあるヤヨイの車に乗りこんだのだった。
さて、ガンタンのかくれ家。
メイはマンションに帰ってくるなり、冷蔵庫の中をからにする勢いで食べまくっていた。
「ガンタンさんの顔を見たら、この食欲ですもの。ほんとに不思議ですわ」
ヤヨイが目を細めてメイを見ている。
「なあ、トウジ。あの作業服、オマエにお似合いだったぜ」
「なあーに、ゲシロウだって」
「いちばん似合ってたのは、なんといってもガンタンの白衣だ。どう見ても博士だもんな」
「キサラギのヤツ、今ごろ腰を抜かしてるだろうぜ」
「ヤツのおどろいた顔、見てみてえもんだな」
「まったくだぜ」
ゲシロウとトウジが笑いながら話している。
「ヤヨイさん、これもみんな、アンタのおかげだ。ありがとうよ」
ガンタンはあらためて礼を言った。
「とんでもありません。お礼を言うのはわたしの方ですわ」
ヤヨイはほほえみ返し、それからふたたびメイに目を向けた。
そのメイ。
腹いっぱいになったのかガンタンのもとに行き、あまえるようにひざの上に乗った。
「いっぱい食ったみてえだな」
ガンタンが背中をなでてやる。
「ところでガンタン、これからどうするんだ? メイが家みてえにでかくなったら、とてもかくまいきれねえぜ」
ゲシロウが心配顔で聞いた。
「それで人気のねえ、どこか広い所に連れていってやりてえんだがな」
「で、あてはあるのか?」
「そいつはこれから探すところだ。そうだ、ヤヨイさん。アンタはもう帰った方がいい」
ガンタンが神妙な顔でヤヨイに向き直る。
「わたしも共犯ですわ。だって警官たち、眠らせちゃったんですもの」
ヤヨイはおどけるように笑ってみせた。
「今のうちなら、なんとでも言いわけできるさ。オレらにおどされ、しかたなくやったって言えばいい。だがな、いっしょにいるところを見られたら、それこそおしまいだ」
「そうだよ。ヤヨイさんは早くここを出た方がいい」
「捕まるのはオレたちだけで十分だ」
ゲシロウとトウジも帰るようにすすめた。
ヤヨイは小さくうなずき、涙をためた目で立ち上がった。それからメイに向かって手を振った。
「メイ、元気でね」
「心配せんでいい。メイは、オレがかならず守ってやるからな」
ガンタンの言葉に……。
お願いしますと言って頭を下げ、ヤヨイはなごりおしそうに玄関に向かった。
そのうしろ姿にトウジが声をかける。
「ヤヨイさん、元気でな」
振り返ったヤヨイはうなずくと、おもいきりの笑顔を見せたのだった。




