出発前の前夜
「よぉ、リア。ここにやっぱここに居たか」
そこは、リアの所属する軍基地とは少し離れた灯台。
そこに友人のアルフットが笑いながら寄ってくる。
「落ち着ける場所がここしかないんでな。ハハッ」
その言葉を聞きながらアルフットはリアの横顔を見て言った。
「ホントお前って笑うの下手だよな。作り笑いってのが丸分かりだぞ。ハッハッハ! 」
元気の良い笑いがうるさいほどに聞こえる。
そして、その言葉にムッとしたリア。
(なんで分かるんだよ)
「お? 今、なんで分かるんだよ。とか思っただろ」
リアの考えている事はピタリと当てられた。
「なんで分かるんだよ」
思わず声に出してしまった。
リアの問いかけにアルフットは得意げに答えた。
「簡単な事だ。俺の能力『ジャック』を使ってお前の頭で思った言葉の情報電子を読んだからさ」
情報電子とは、名前の通り情報を持った電子の事である。
リアたち機械人間は、ほぼ全ての行動に情報電子が用いられている。
それは、歩く、座る、話す、などのごく一般的な動作など、多種多様に使用されている。
「へー、ていうかお前そんな能力持ってたっけ?」
「最近ようやく俺にも能力が発現してな、長かったぜー」
伸びをしながら答える。
「凄いじゃないか、おめでとう」
表情はさほど変わらないが、その言葉からは驚きとわずかながらの喜びの感情が含まれていた。
「おうよ!」
無表情のリアとは裏腹に表情豊かなアルフットは笑顔で返した。
もうしばらく内容の無い話をした後、リアとアルフットは拠点へ戻った。
明日はアルフットと下見遠征だ。
こいつと2人で遠征できるのは何年ぶりだろうか。
そんな事を思いながら帰路をゆっくりと歩いていった。