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突然のトリップ

「うおお…うおぉぉぉぉぉ!!!」


今俺は全力を出している。


どれくらいの全力かと言えば、自分が今現在叫んでいると言う事実に気がつかない程に熱中し、集中しているのだ…


無理もない。


それは何故か。


俺は今スマホに表示された五色のドロップを、ただひとつの親指に全神経を注ぎ込み、コンボを作り出そうとしているのだ!!!


俺の姿だけを見た人は

「名にいい年食ったオッサンがスマホゲームに叫び声上げてプレイしてんの?キモいんだけど」


と辛辣な言葉しか思い付かないだろう。


しかし、俺の目の前の現実を少しでも垣間見るとこができるならば、そんなことは言わないと断言できる。


何故なら…


「っ、マスター!何水ドロップばかりコンボしてんですか!!今は炎パなんですから火ドロップ中心にしてください!!」


「マスター!!こっちはもエキドゥナちゃんのライフがヤバイ!!早く回復ドロップ消して!!」


「おいバカマスター!!消せば良いってもんじゃねえぞ!!!3コンボじゃあ、たいしたダメージ与えらんねえじゃあねえか!!さっさと10コンボくらい決めてワンパンしてみろや!!」


「だぁぁぁあ!!お前らのうるせえ!!死にたくなかったら目の前のドラゴンに集中しやがれ!!!」


「グゥルルルルル…ギャァァァァァス!!!!」


俺は目の前の化物を倒すため、化物と共に戦っているのだから…!!!








話は数日前に遡る。


俺は斎藤友治(ともはる)。25歳の冴えないフリーターである。


一度ブラック企業に入社してストレスによる円形脱毛症にかかり、「若ハゲじゃあ将来結婚もできやしねえ!!」と退職。


退職したはいいものの、円形脱毛症は治らずやりたいことも分からず。


やることといったら、スマホゲームのパズルアンドバケモノ。


通称、パズ☆バケである。


このゲーム、至って簡単な仕組みで、五色のドロップを三つ以上繋げると、攻撃ができるシンプルなゲームである。


しかしながら、シンプルながらもやり込み要素は絶大であり、人それぞれのパズ☆バケの遊び方やパーティーの組み方などそれこそ千差万別である。


他人のパズ☆バケのモンスターを見たり、パーティーの組み方を見るだけでも新たな発見があったりするので、なかなかに面白い。


パズ☆バケを作った会社、「ガンゾー」は株価はうなぎ登りでダウンロード数も一億を軽く越えたらしい。


そんなパズ☆バケにある程度課金しながら、日々テキトーに仕事をして、ちょっとだけ勉強をしたりしなかったりのテキトーライフを満喫している若ハゲ男…それが斎藤である。



「さーて、バイトも終わったし、スタミナも回復したからパズ☆バケやるかぁ!おっ、ゲリラダンジョンやっとる!」


今日も一日ファーストフードでのアルバイトを終えた斉藤は家に帰ってさっそくパズ☆バケを始める。


パズ☆バケは「スタミナ」という数値を消費することで「ダンジョン」に挑戦し、モンスターを倒すことでコインやモンスターの卵をゲットできる。


5分毎に1のスタミナが回復する。


ダンジョンにも種類があり、スタミナ消費が2の場合もあれば、99の場合もある。


「魔石」という課金アイテムを使用すればスタミナを一気に回復できるが、斉藤は微課金プレイヤーである。


スタミナを回復するために魔石を使うことはめったにない。


「魔石」は「レアガチャ」を引くために使用するものだと斉藤は考えている。

 

このレアガチャは一回300円程の課金で引くことができる、夢と希望と欲望の渦巻く、廃課金プレイヤーを生み出す悪魔であr…おっとそれ以上は言えねえな。


無課金でも運営から大体一日一個のペースで魔石を貰えるので、それをコツコツ貯めて一気にガチャ!というのが斎藤のスタイルである。


それはさておき。


斎藤はどのダンジョンに挑戦しようか思案していた。


「うーん、ゲリラダンジョンやっとるけど、特にそそられるダンジョンじゃねえな…でもスタミナ満タンだから何かには挑戦しないと勿体ないし」


そこで、見慣れぬ文字を斎藤は発見する。


「ん?!何だコレ?バグか?」


ダンジョン一覧に、文字バケしていて全く読むことのできない、謎のダンジョンを発見したのである。


「コレヤバくね?公式のホームページにも書いてないし…ヤバいバクだったらモンスター消えるとかあり得そうだな…」


と、斎藤は一瞬冷静になったが、頭の片隅で邪な考えが芽生える。


「もしかしたら、フツーは手に入れられないモンスターがバクで出てきて!ゲットできて!!ウハウハってのもあり得んじゃね?!いや、これはチャンスだ!!やるっきゃねえな!!!」


斎藤、ホジティブである。


「じゃあ、ぽちっとなっと、さて、どうなるのかn」


そこで俺の意識はプツリと途絶えたのである。



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