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プロローグ とある世界管理者の憂鬱

ファンタジー世界に転移したい皆さんにぜひとも読んで欲しいです。

 転移者が召喚されるお馴染みの真っ白空間とはまた別の真っ白空間で、世界管理者は現状を嘆いていた。ここは世界管理者のプライベートな空間であり、だだっ広い空間に真っ白なベッドや机がゆったりとした間隔で配置されている。真っ白な机の上のノートパソコン型情報端末に表示される管理対象となっている世界の状態はあまり良いとは言いがたい。世界管理者達の価値観ではまだ若い世界管理者は、傍らに立つ三毛猫妖精のメイドさんに現状をぼやいていた。


「今月もまた人口減少だよ、ミケ子さん」


「現状では乳幼児死亡率は四割を超えています。これでは人口が増えるわけがありません」


 中世欧州でも似たような数字であるからして、中世的社会で幼児死亡率四割強は極端に悪い数字ではない。世界管理者にとってあまり望ましい数字ではないが。


「技術レベルが中世な社会じゃ生まれてくる子供の半分弱が六歳までに死んじゃうんだから、ファンタジー世界へ転生する奴はギャンブラーだよね」


 この手の問題は乳児が成人男性並みの思考をするための栄養素や酸素をどうやって供給されているのかという問題と同じく、大部分の転生者に世界管理者による有形無形の支援があるのだろう。


「神様は世界が抱える問題を何とかしようとは思わないんですか? 大体、自分の子供の半分弱が六歳までに死ぬとか女性に対する差別以外の何物でもないです」


「だから現在は女性を転移させてないよ。それに世界の人口が増加した結果、国家総力戦が発生して子供が全員戦死するよりはマシだと思うけどね。まあ、とりあえずメイン・プレーンから転移者を増やそうか」


 世界管理者、神様は人の子に対して薄情なのではない。

 神様の手厚い支援によって古代魔法帝国は繁栄を極めた。だが資源の枯渇によって古代魔法帝国は持てる者と持たざる者に分裂し、分裂した国家群の総力戦で人と世界は共に滅びかけた。

 その結果、神様は人に対しては放任主義を取るようになった。


「またメイン・プレーンから転移者を引っ張ってくるんですか?」


「うん」


「メイン・プレーンもしばらくは混乱期が続くでしょうから問題はないでしょうが、いつまでも転移者で人口を補填できるとは思えません」


「早め大規模転移の許可証をもらって、転移者を確保しておくかな」


 若い世界管理者は投げ遣りにつぶやき、三毛猫妖精はわずかに顔をしかめる。


「もう少し転移者に力を与えてみてはいかがでしょうか?」


「転移者にだけ特別な力を与える事は本来の住民に不誠実じゃないかな? それに化け物を殺せる奴は化け物だよ。僕は人と化け物と一緒に暮らせるとは思えないな」


「対症療法を繰り返していても問題は解決しません」


「僕達は、少なくとも僕は勇者や英雄による世界の救済は望んではいない。人の子らが神や勇者に頼らず、一人一人が己の意思と力で世界を救う決意をした時こそ、彼らの幼年期が終わる時だからね」


「そのためにはまず人の子が生き残って、子孫を残していく必要があります」


「転移者支援システムを少しいじってみようか」


 若き世界管理者はノートパソコン型情報端末に向かって作業を始める。

 三毛猫妖精のメイドさんは黙って若き世界管理者を見守っていた。


お疲れ様でした。

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