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 お久しぶりです。長らくお待たせしてしまって、すみません。

 かなり中途半端な所で終わってしまっています。

 「主人公~」が行き詰ったら、こちらの更新をしようかなぁと思います。

 日本のとある町。

 入り組んだせまい路地を抜けるとそこには、英国と見紛うばかりの街並みが広がる。

 そんな場所に、一風変わったアンティークショップがあった。

 Missing。

 〝欠けた〟の名を冠するその店には。

 今日もまた迷えし客人が訪れる――。



 ―――チリン


「いらっしゃいませ、お客様」


 わたくしは鈴の音と一緒に突然聞こえてきた男の声に驚いて、声のした方を見たのですわ。


「ここはどこですの!?」


 先ほどまで家の前におりましたのよ? それなのに、いつの間にか室内に。

 これは夢ですわよね!?

 男の方はどうやら外国の方のようですわね。日本語が流暢だったものですから、てっきり日本人だと思い込んでしまっていましたわ……。

 少し白みのある長い金の髪に、灰紫(アッシュモーヴ)の瞳。神様に形作られたような、人離れした美貌の男性。

 ただそれは状況も相まって、現実感を薄れさせてしまうものでしたの。

 しかもわたくしはその男を不躾に見ているのに、男の顔にはずっと笑顔が張りついていて。


 ――怖い。


 それがわたくしの、その男に対する第一印象。

 この男、得体が知れない存在ですわね。


 ――それにしても、ここはどこなのかしら?


 周囲を見渡すと、モダンでシックな内装と、たくさんの質の良い棚が置いてあることは見ただけで分かりますの。

 その棚の上には、美術館にでもありそうなくらい、高くて価値のあるものばかり。

 オルゴール、ビスクドール、レコード、家具といった普通のアンティークショップでも取り扱っていそうなもの。あとはキッチン用品、服、本といったものもありますわね。あるいは剣、槍、鎚、矛、矢、弓矢、拳銃、鎧、盾といったものまで、ありとあらゆるものが揃っているようです。


 素敵なものばかりでクラクラしてきましたの!

 ここは十中八九、アンティークショップでしょう。

 そんなことを考えていたわたくしでしたが……。


 ガタガタガタッ! ゴコーン!


「なっ……一体何事ですの!」


 突然の物音にパニックに陥りかけたわたくしでしたが、物音の正体を知ってそっと胸をなでおろせましたわ。


「痛たたたたっ」


 どうやら男は何もない所で転んでしまったようでした。

 男は困ったような顔で頭を掻きながら立ち上がろうとしますが、なぜか立ち上がれない様子ですの。


「はぁぁ、腰が抜けてしまったようですね。そこにいるお嬢さん、申し訳ないのですが、私の手を引っ張って頂けないでしょうか?」


 男はへにゃり、と笑いながらわたくしに話しかけてきましたの。

 その表情は、わたくしが最初に抱いた男の印象を、大きく変えてしまいました。むしろ抜けていて、人が良さそうな人物にも見えるのですわ。


 ――よく分からない男ね。油断は禁物、ですわ。


 わたくしは男を警戒しつつも、仕方なしに男に近づいて手を握り、引っ張り上げましたわ。


「お、重いですわ……」


 男の体は細いなりにもちゃんと男で、わたくしの力だけでは全く持ちあげることが叶わないのです。

 けれど男はわたくしの力を借りながら、ゆっくりとその場で立ち上がりました。男はその場で体についた汚れを手で払い落してから、わたくしの前にひざまずいて、右手を取って口づけを落としました。


「ありがとうございます。心優しきお穣さん、いえ、御門(ミカド) 汐織(シオリ)さん?」


 わたくしは目を大きく見張りましたの!


「!? なぜわたくしの名前を……」


 男の手を振り払いつつそう言ってしまってから、わたくしは自分の口を押さえたのです。

 こういう場合は、自分で認めてはいけなかったのではなくて!?

 男は立ち上がりながら続きを話し始めます。


「〝モノ〟が教えてくれたのですよ」


 この男、頭は大丈夫なのかしら?

 もしかして不思議ちゃんと呼ばれる類なのかしら。それなら恐れる必要は全くなかったようですわね。

 男はいぶかしんでいるわたくしを見つめながら、こう言ってきたのですわ。


「あなたの心は大切な何かが〝欠けて〟います」

「!」


 わたくしの心が欠けている、ですって? |容姿も良く頭もいい完全無欠(オールパーフェクト)貴婦人である、このわたくしの心が?

 負け惜しみは、ほどほどにしていただけませんこと?


「申し遅れましたが、私はレオンと申します」

「……」


 わたくしはおもわずそっぽを向きましたの。


「お穣さん、あなたは全く私の話を信じていませんね」


 男――レオンは服の下に隠しながら首にかけていた、細い鎖を通した古びた銀の(かぎ)をわたくしの前に差し出しましたわ。

 ――チリーン


 ここに来た時と同じように、鈴の音が聞こえてきましたわ。そして――


「なっ」


 その銀の鍵は、(まばゆ)い光を放ち始めたのです。


 銀の鍵はふわふわと宙に浮かび、そこから夢のように美しい女性の声が頭の中に直接、聞こえてきましたの。


〈御門 賢悟(ケンゴ)と御門 緋織(ヒオリ)の娘、御門 汐織。(なんじ)は正当なる〝時空の鍵〟の継承者なり〉


 ――はぁぁぁっ!? 一体どういうことですの――!


2013/07/07 若干加筆修正

2013/08/04 改行

2013/08/18 誤字訂正

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