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星の降る空  作者: 瞳
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二重の星

ー姿ー

「生まれた時から」私が生きている中で最も多く言われる言葉。

生まれた時から、頭がいい。

生まれた時から、可愛い。

生まれた時から、女の子らしい。

生まれた時から、優しい。

生まれた時から、愛されてる。

こんな言葉を毎日言われて、育てられて来た。

私世間から言えば財閥のお嬢様のようにして生まれて来た。欲しいものは、欲しいだけ与えられた。

父は、世界を股にかけるIT企業をはじめとして幅広い分野のトップにトップにいる人間。優しくて、大きな心の持ち主であり、一ミリたりとも妥協は許さない、強い人でもある。

でも、父だからこそ、今の会社があると思う。だから、私は父を心から尊敬している。

母は、理想が高くて完璧を求める、父と同じように、母だからこそ、父のそばにいられるんだと、私は思う。


そんな家庭の1人娘として生まれた私。星野蓮華ほしの れんか

1人娘である私を父と母は余る程の「歪んだ」愛情を私に余る程与えた。

父と母も私が完璧に育って行けば行く程私を愛してくれた。

反対に言えば勉強もスポーツも見た目も完璧な私じゃなければ、愛してなどくれなかった。

それに、気づいたのは私がまだ幼くて、物心付いたころには、それが私の中の常識になっていた。

だから、私は父と母の気持ちに答えたくて必死に「出来る子」を自分の中で作り上げ、それを演じ続けた。

母の言う事は、素直に笑顔で受け答えして、父の話はどんなに長くても熱心に聞く…フリをする。

勉強は、いつも学年一位だったし、スポーツも人並み以上には出来た。

そして、見た目も母の望むような可愛くて華奢で、女の子らしい姿。礼儀も作法も人並み以上に努力して、父と母の望むような「出来る子」を演じ続けた。

友達にも父や母にすら言いたいことの半分も口にせずただ心の中で叫んで、笑顔で受け入れる。


こうして、私は偽りの自分を作り上げてその姿で高校一年の春を迎えて居た。


「蓮華」

名前を呼ばれて、後ろを振り返る。

「美月ちゃん」

ニコッこりと、蓮華スマイルを向ける。

「蓮華は、高校の制服でも可愛いーね。私が男だったら惚れるわっ」

この子は、中等部の時からの仲のいい相澤美月。私達の通う学校は小等部から高等部まである、いわゆるエスカレーター式の私立学校である。

だから、高校生と言っても、校舎が変わるだけで学校自体はあまり変わらない。

有名私立校と言う事もあり、高等部になった途端人数が一気に増える。

しかし、高等部と言っても特進クラスと普通科に別れていて、元からこの学校にいる人が特進クラスになっているような物で、高等部から特進クラスになる人は少ない。

「そんなことないわよ。美月ちゃんも十分似合ってる」

お世辞混じりに蓮華スマイルを向ける。

「ありがとう。蓮華って、生まれた時からの気品に溢れてる」

私の綺麗に厚く巻かれた明るめの茶色の髪を眺めながら、美月が言う。

ー生まれながら⁉当たり前。あんたとは、育ちが違うもの。

なんて、心で思いながらも

「そんなの無いわよ。気品だなんて、私には全然ないわ」

軽く笑いながら、厚く巻かれた髪をくるくると手でいじる。

「まぁ、蓮華は元からそうだからきっと気づいてないんだよ」

「ありがとう」

別に嬉しくもないし、ありがたくも無い言葉だったけど、私の演じる蓮華はお礼を言わなければいけない。

「じゃあ、私行くね」

笑顔で美月を見送り、頭上の桜の木を眺める。私の大好きなピンク色に染まっている花びら。風が吹くたびに、ひらひらと舞い落ちる。

「蓮華!」

声のする方に体を向けると、やっぱり彼が居た。

「秀…」

「蓮華、同じクラスだったよ!つか、まぁーだいたい予想出来たけど。」

軽く笑いながらいう。

「そーなんだぁ。まぁー、特進クラスは一クラスしかないし、当たり前じゃない⁉」

蓮井秀はすい しゅう

秀とは、家族ぐるみで小さい頃から仲良くしている。

秀の父親は、この私達が通う学園の理事長をしている。

そして…

この蓮井秀だけは、本当の私を知っている。

完璧じゃない私を知っている。

小さい頃から一緒にいるせいで、秀の前だけだけは、創り上げた私を見せてもすぐに、バレてしまう。

でも…それでも…

秀だけは、完璧じゃない私を知っていても誰にも言わない。

それどころか、何もないかのように普通に接してくる。

「蓮華、今日うち来ない?母さんが家に蓮華の家も呼んで入学結いしようって、言ってんだけど」

秀の家と私の家は、近いこともあって、よく家族ぐるみで食事なんかもする。

「うん。あとで、お母さんに言っておく。」

「じゃあ、よろしく。俺放課後バスケ部見に行くけど、蓮華も行く?」

「秀、部活高等部入るの?」

「ああ。バスケやりたいし。それに…俺にはそれしかない気するから。…蓮華みたいに頭よく無いし!」

「そっか」

「ああ。蓮華だって、運動神経いいんだから何かやれば⁉」

「…まぁー、考えておく。でも、今日は、パス。来週実力テストあるし」

「…そっか」

この学校は毎月一回実力テストがあり、高等部からある一定の点数をとれなけれは、特進クラスには、いられなくなると言う過酷な試練がある。

高等部に入って始めてのテストと言うこともあり、テスト勉強をしないと不安になる。

秀の成績がどの程度なのかは、知らないが、私動揺特進クラスから落ちた事は一度もない。

ー部活で忙しいのに、特進クラスから落ちないなんて凄いな。

ほんの少しで関心しながら、

「じゃあ、また後で。」

笑顔で手を振り、教室に向かった。






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